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いざダンジョンへ

 明くる日、宿を発った俺は町の中心部に位置するギルドへやってきた。厳密にはギルドの数多くある支部の内の1つである。


 赤いレンガ造りの立派な建物の入り口を通ると正面の受付に向かった。


 「すみません、冒険者になりたいんですけど」


 ギルドに登録して活動する者のことを冒険者と言う。大多数はダンジョンの攻略に勤しむが中には隊列キャラバンの護衛をする者もいるらしい。


 受付の女性はにこやかに俺に応対すると登録に必要な書類を出して記入するよう求めた。記入内容はさほど多くない。名前や親や親族への連絡先、職歴、以前冒険者や似たような事に従事していたか等。


 俺が書けることはさしてない。ちゃっちゃと書き上げて提出すると受付の女性が不思議そうに尋ねてきた。


 「あの、ところで武器は?」


 「武器?」


 「ええ、皆さん剣や槍、弓なんかを持たれているんですけど……」


 あ、なるほど。当然この世界に銃はないし、登場してもstg44のような見た目になるには100年単位の時間が掛かる。たしかに受付の女性には俺が手ぶらで登録に来たように見えるのだろう。……別に登録するだけならそういうこともあるのでは?


 ともかく、俺は胸の前のstg44を軽く叩きながらこいつです、と胸高らかに応えた。


 「は、はあ……」


 何それ?という女性の目だが深くは追求してこなかった。大方変わった鈍器を扱う奇人変人の類いだと思われてるんだろう。


 「ええと、記入欄は大丈夫ですね。では登録して参りますので少々お待ち下さい」


 奥に引っ込んだ女性を待つかたわら、俺はそばにあった『冒険者の心得』なる冊子を読んでみた。内容としては冒険者として必要な知識を教えるまのだ。魔物の種類や強さ、生息域、弱点、性格に始まり、各種応急処置まで記載されている。


 先日俺が倒した猪みたいな奴はフューリアスボアという名前らしく、角を用いた突進攻撃に注意するよう書いてあった。あと角が売れるらしい。


 しばらく読んで待っていると女性が戻ってきて一枚の紙を渡してきた。こらが冒険者としての身分証らしい。


 「それでこれからどの様な活動を?」


 「そうですね、ダンジョンに挑もうと思っているのですが」


 俺は昨晩死神に聞いたダンジョンの名前を告げた。アールマルという町にあるアールマルダンジョン。


 「挑戦するダンジョンはお決まりですか?」


 「ええ、アールマルダンジョンへ挑みたいんですけど」


 「ああ、アールマルですね。ならここら馬車で1日の距離ですよ。近くの広場に馬車乗り場があるから使うといいですよ」

 

 へぇ、馬車。こっちの世界ではスタンダードなんだろうけど俺は初めて乗る。ウキウキしながら早速乗り場へ行こうとした俺だけどふと俺は気付いた。


 「あの、アールマルへの馬車で護衛を必要としてるのってありませんか」


 冒険者の仕事にキャラバンの護衛があるのは先刻言った通りだ。そこで俺の考えはこう。俺は護衛として馬車なりキャラバンなりに乗り報酬をもらった上でアールマルへ辿り着く。うん、中々完璧なプランだ。


 良い考えに悦に浸りながら尋ねる俺に受付の女性はあまりに無慈悲にピシャッと言った。


 「ないです」


 「……え」


 やれやれ、と無知な俺を諭すように説明してくれる。


 「まずここを中継地とする馬車にはもう護衛がいます。ここを始発とする馬車もありますがこの町には冒険者も沢山います。なのでわざわざ何の実績も無い新米を雇う必要なんかないんです」


 何の実績も無い。ズビシっと指を差されながら言われた言葉は結構俺に刺さった。た、確かにそんなやつ俺も雇わない……。しかも周りに沢山の冒険者がいるなら余計にそうだ。


 ほんとに何も知らないんですね、と呆れながら受付の女性は大人しく金を払って馬車に乗ることを勧めてきた。俺もそれに大人しく従いギルドの支部を去った。

 

 馬車乗り場に向かいながら俺はまだ何とかタダでアールマルへ向かえないか考えていた。ケチくさいが未だこの世界で収入減を確保していない俺は割とマジだ。


 いっそ歩こうか?うーん、それも掛かる日数や食料のことを考えるとやっぱり馬車の方が安価だろう。


 結局馬車乗り場についた俺は大人しく馬車に乗った。

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