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銀月の魔女は闇と歩く  作者: 桜色藤
1章 砂漠の旅路
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3話 異なる「黒」

 ジークの行動に怪訝な顔をしていた店主は、現れたセリスの顔を見て驚き、次いでその美しさによって納得した。

 なにせ双黒は目立つ。

 また、ジークの相棒が女性ということも驚きだった。その色から一瞬ジークの妹かと思ったが、すぐに考えなおす。

 ジークの持つ『黒』はまさに吸い込まれるような漆黒という表現がふさわしいものだ。二つ名になるほどには印象深い。


 対して目の前の少女の持つ『黒』はさらに変わっている。肩を越える長さの髪は、影の部分は間違いなく黒だが、光が当たる部分は銀の光沢を帯びている。瞳も、よく見れば紫がかっているようだ。その美しさもあいまって、神がかった、神秘的な印象さえ感じられる。


 顔立ちも、どちらも整っているが共通点はなく、血がつながっているようには見えない。また、彼には親の顔を知らず、彼を拾った養い親がザリアスと知り合いだったことからジークと知り合い、剣の才能を認めて弟子にしたのだと聞いたことがある。

 


 だがそれ以上に店主が兄妹という関係だと思えない理由は、二人の対等な雰囲気と、ジークの彼女を見る眼差しだ。

 ジークのことは《剣聖》ザリアスと共に旅をしていた頃から知っているが、女性にこのような優しげな、愛おしげな眼差しを向ける彼は初めて見る。


何もせずともジークは女に困ったことはない。向こうから寄ってくるからだ。長身で引き締まった細身の体。端正だが消して女性的ではない精悍な顔立ち。その彫刻のような顔立ちを、鋭く、不敵ささえ感じさせる眼光が生気あるものにしている。それに加えて誰もが認める剣の腕前と名声を持つとなれば、女性達が目をつけないはずがない。

 実際、店主はジークが目の前で誘いをかけられる場面を何度も見たことがあるし、彼がそれに応じることも多々あった。しかし、誰もが『一夜の関係』で終わっているのだ。

 そんな彼が愛しげに見る少女。しかも、今までの行動から見てかなり大切にしているようだ。


 



そんなことを考えながらまじまじと(半ば見惚れながら)見ていると、「・・・もういいだろ。」というジークの不機嫌そうな声とともに再び少女の顔がフードで隠された。そんな突然の行動に驚き抗議する少女の声を聞きながら、店主は「何が出来るんだ?」と尋ねた。

 外套の上から見ても明らかに少女の体は華奢で、武器を取って戦うようには見えない。とすればおそらく――――――――――――――

 

 「魔法を。属性は一通り、中級程度まで使えます。得意なのは風と水の系統、これらは上級まで大丈夫です。後は結界と治癒。魔法以外では体術を少々。まあ、護身術程度ですが。あと・・・・・医術です。」

 

 セリスの答えはほぼ店主の予想通りだった。魔法を使うことはどう見ても戦士向きではない体格からして確実。体術はジークが仕込んでいるのだろう。ただ、最後のひとつが引っかかった。


「治癒が出来るのなら、医術は必要ないんじゃないか?」


 治癒とは魔法を使っての治療。医術は魔力を使わず、薬草などを使う治療。これが一般的な認識だ。

治癒と医術の両方を修める必要はない。


「あ、それは間違った考え方です。まず第一に、治癒は切り傷や打ち身、火傷など、肉体の怪我には大きな効果がありますが、特殊なものを除いて病気にはあまり効きません。逆に医術は基本的に自己治癒能力に任せるので特に大怪我には手の打ちようがないですけど、病気には体の内側から治していけるので、治癒をかけるよりよっぽど確実なんです。第二に、大きな怪我なんかは一から治すのにとても魔力を使うんです。でも、医術を利用して症状を緩和させれば魔力の無駄遣いが減ります。これはとっても大きいです。最後に、薬草をはじめとする医術の知識って、治療以外でもとっても(‘‘‘‘)役に立つんですよ。」


ふふふ、と黒い微笑とともに付け加えられた最後の部分に店主は思わず冷や汗をかいた。

不定期と言いながら、連続更新です。

なかなか先に進まないんですよねぇ…。

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