表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀月の魔女は闇と歩く  作者: 桜色藤
1章 砂漠の旅路
20/58

17話 襲撃 2

 気付いたら総合評価が100ptを越えてました。

お気に入り登録してくれた方もたくさんいて、もう感謝感激です!!

 セリスの言葉通り、しばらくして盗賊達が襲撃してきた。


 砂漠の彼方から忽然と現れた彼らは躊躇いもせずに、休憩をしている獲物に襲いかかろうとした。

しかし、挨拶代わりに打ち込んだ矢は突然吹いた風に流されて届かず、ならばと近づけば見えない空気の壁によって一定以上近づけない。

 勝手の違う様子に戸惑った瞬間、突然突風が吹きつけ、彼らは落馬した。

それを予測していたかのように、傭兵達が攻撃してきた。その先頭は黒髪をなびかせて走る青年だ。



 傭兵たちもそれ程余裕があった訳ではない。なにせ相手はこちらの2倍近くいるのだ。

だが、あらかじめ襲撃を知っていた事、それに備えて休憩を装い態勢を整えて待ち伏せていた事が心理的余裕となっていた。





 そして何より

Aランク傭兵《闇夜》の存在が、その戦いぶりが傭兵達を鼓舞していた。



「ハッ!!!」


 剣を振るう度に苦鳴が起こる。

 横合いから切りつけてくる剣を受け止め、腹を蹴り飛ばす。背後から突き出される槍の穂先を切り飛ばし、返す刃で袈裟がけに切り裂く。

 繰り出される威力と速さのある、しかし、けして力任せではない斬撃。計算された体捌(たいさば)き。その動きのすべてに無駄がなく、周囲を敵に囲まれていながら突出しすぎた味方をフォローする余裕すらある。


 まさに、一流。



 傭兵達の憧憬の視線にも、盗賊達の畏怖の視線にも、ジークはなんの反応も示さない。

ただ容赦なく敵を倒していく。

相手はこれまでに幾度も旅人から命綱ともいえる荷物を奪ってきた盗賊であり、情をかける必要はない。ましてや、後ろには何よりも大切な存在がいるのだ。




辺りには血の匂いが漂い始めていた。








  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 戦闘の空気は守られている者達の元へも届いていた。

隊商には護衛だけでなく、旅人も加わっている。非戦闘員はいくつかの馬車の中にいた。

守られているとはいえ、すぐ傍で行われている戦いに不安を抱かない者などいない。


 そんな緊迫した空気が漂う空間で、1人だけ異質な存在(しょうじょ)がいた。









(凄い・・・・・・・・・・・)


 思わず胸の中で呟いてしまう。

きっとここにいる誰も気づいていないだろう。そこに佇む少女が隊商全体を囲む結界を、一人で維持していることに。

彼女こそが結界の、ひいては隊商の防御の“要”であることに。


 未熟とはいえ、まがりなりにも治癒士(ヒーラー)の卵であるトゥーリ(じぶん)には感じられたのだ。

彼女を取り巻く膨大な魔力が。そして突如現れた強固な風の結界が。




 治癒士(ヒーラー)とは治癒術を専門とする者たちを指す。

治癒といっても傷を治すだけではない。霊病(れいびょう)はもちろん、熟練した者は魔法障害や呪詛の解呪なども手がけるのだ。よって治癒士には治癒術の素質だけでなく、感知能力の高さも重要となる。




 まだまだ半人前なトゥーリだが、感知能力については先生からも太鼓判を押されているのだ。


 それでも信じきれず、もう一度確認する。その年頃に不釣り合いな技量、その外見に不釣り合いな力量。けれど、どれも現実だ。


 何かと話題になっている少女だった。なにせ彼女の相棒は、『英雄』とまで呼ばれる存在なのだから。


 今でも覚えている。世界が彼を賞賛した時のことを。



 全ての人間が彼に(あこが)れた

 全ての傭兵が彼と共に戦うことを夢見た

 全ての女性が彼の傍らに寄り添い立つことを願った



 誰もが望み、けれど叶わなかった場所。

今、そこに立つ少女に注目しない訳がないのだ。

 だが、彼女の相棒のガードが固すぎて誰も接触に成功できていない。会話から名前だけがかろうじて知られているだけだ。

 そのせいか、お飾りだとすら言われていた。








 守られるしかない無力な少女?


 とんでもない。彼女は今、誰よりも大きな力をもってこの隊商全体を護っているのだ。


 いったい何者なのだろう。


 トゥーリはじっとセリスを観察していた。















 セリスもその視線に気づかなかった訳ではない。

結界を維持するため、風霊を使役―――――――セリスに言わせれば同調―――――――しているのだ。今の自分にとって風は目であり、耳であり、手でもある。周囲の様子など手に取るように分かっている。



 だが今、彼女はその感覚のほとんどを外へ向けていた。

最も戦闘が激しい箇所――――――――さらに言うならジークへ。

彼のいる場所には最も血の匂いが濃くたちこめている。大気の情報が直接伝わる状況で、それでも風を操り、衝撃波を放ち、敵を阻み続ける。


『セリス、無理はするな。』


 風を通して、ジークが自分を案じる声が届く。

 自身の力を制限している今の状態では、結界の維持に専念することが最善であることはセリスも理解している。

 それでもセリスは援護を止めない。



 既に一度後悔しているのだ。同じことを繰り返したりしない。

過敏になりすぎている自覚はある。それでも譲れないことがある。


 






 もう、大切なものを失いたくないから















  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 傭兵達の活躍により、見る間に敵の数は減っていった。

盗賊の頭が僅かな仲間を連れて逃走し、戦闘は終わった。


 最初から有利な立場だったとはいえ2倍近い戦力差に被害は少なくはなかったが、それもセリスと治癒見習いだという少年によって事なきを得た。



そして隊商は何事も無かったかのように移動を再開する。











――――――周囲の評価が変化したことは、当人(セリス)だけが気付いていなかった



突発的に新キャラを出してしまいました(汗)

彼はジークのライバルと成りうるのか?お楽しみに。


ところで、実は初めて感想をいただきました!!

もうすっごく嬉しいです!!

感想をくださった方には、ちょっとしたお礼を企画しています。

詳しくは 5/18 の活動報告をご覧ください。

感想待ってます!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ