序話 2人の旅人
「鬱陶しいな。どうにかならないのか。」
独り言に近い呟きに、しかし、鈴の音のような可憐な声が返ってきた。
「仕方ないでしょう?それともこいつらに強力な一発をお見舞いする?」
まあその場合、こいつらだけでなくあたりも一緒に吹っ飛ぶだろうけど。
「・・・・いや、やるなよ?冗談にならないから。つーか、お前も相当キてるだろ。」
可憐な、しかし据わった声音とその内容に、つぶやいた青年はは頬をひきつらせながら様子をうかがう。
「当然でしょう!?さっきから何匹倒したと思ってるの!しかもまだ増えてるし!
あーもう、報酬につられて受けるんじゃなかったこんな仕事!
雑魚だから簡単だと思ったのに!!!」
内心その少女の声に同意しつつ、青年は目の前の相手を見すえる。
目の前――――いや、周囲にいるのは三つ目狼。素早い上に、一般的に群れで行動するため、それなりに厄介な怪物だ。
数十匹はいるそいつらに対し、こちらは二人。
どちらも旅人用の白っぽい外套を着ているため、黒い群れの中でかなり目立つ。
背後の爆音を聞きながら、赤い目をぎらつかせて跳びかかってくる一匹を避け、その勢いを利用して腹部を切り裂く。剣を止めずに襲いかかるもう一匹に切りつける。
一般よりも一回りは大きい剣を操りながら、その動きは滑らかで、速く、舞のようにすら見える。
4、5匹を倒すと後退し、、再び少女と背中合わせに立つ。
「平気か?」
「もちろん」
間髪入れずに返ってきた言葉に心配はいらないと知りながらも少しだけ安堵する青年に、見透かしたようなクスクス笑いとともに声がかけられる。
「この程度で私がどうにかなる訳ないでしょう?昔から心配症なんだから。」
そのからかうような、少しだけ『彼女』が見える声音に嬉しさを感じていると、
「ところで何匹倒した?」
と、真剣な声が掛けられる。
会話の間も続く三つ目狼の攻撃を剣で受けながら、
「二、三十匹というところだろうな。お前は?」
「固まってる所に攻撃魔法をぶつけてるだけだから正確じゃないけど…ま、同じくらいでしょうね。」
「少なくても40匹以上か…で、それがどうした?」
その問いに、少女は不穏な笑みを浮かべて言った。
「吹っ飛ばさないから『強力な一発』やっていい?」
・・・しばらくして、数十匹の三つ目狼の氷漬けの像と、町に向かう二人の姿があった。
はじめまして。こんにちは。桜色藤と申します。
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遅筆なので、更新は遅くなるでしょうが、気長に待っていただけると嬉しいです。