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銀月の魔女は闇と歩く  作者: 桜色藤
1章 砂漠の旅路
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11話 波乱の出発 7

 沈黙から一番最初に回復したのは、やはり一番付き合いの長いジークだった。

 セリスについてよく理解しており、彼女の事情も知っているからこそ、セリスの精神が外見の幼さに反して長い時を過ごしていること、常人とはかけ離れていることを承知していた。



 ――――――――それでもしばらく固まったのはその発言内容ゆえだが。




 「女遊びに目を瞑るって・・・『見て』無かったんだろう?」


 動揺のあまりに、余計なことを口走るジーク。だがセリスは知らずジークに追加の爆弾を落とす。


 「確かに『見る』ことはなかったけれど、オウルがよく教えてくれたわよ?」

 「はぁっ?」

 「あの子も仕事で忙しいから直接会うことは少なかったけれど、連絡は取れるようにしていたから・・・。ジークのことを心配してるだろうからって良く教えてくれたの。」

 「あの野郎・・・・。」


 唸るジークに思わず口に手を当てて笑みをこぼすセリス。と、ここではっとして再びビシリと指を突きつける。


 「と、とにかく!!!ジークはアンジェリカさんに、今の発言についてきちんと謝るべきですよ!!!」


 とたんに心底嫌そうな顔をしたジークは、おもむろに騒ぐセリスを抱え上げるとルースの背に乗せた。

 驚いたセリスは思わず口をつぐむ。

 それを逃さずジークもルースの背にまたがった。


 「ちょ、ジーク!!?」


 それに慌てたのはエイギルだ。


 「なんだ。」

 「何だって・・・・セリスを乗せて行くつもりなのか?ルースに負担がかかるし、いざという時危ないだろ。」


 砂漠の旅において騎馬の体力を極力消費させないようにするというのは常識だ。

 さらに、ただでさえ狭い馬の背に二人乗ると身動きがとりにくく、戦闘が起こったときに不利になる。ジークは最前線で戦うことが多いため、セリスだけでなくジークにも危険が及ぶ可能性がある。

 常識的に考えてメリットは無いのだ。


 「ルースの体力の尋常の無さはお前も知ってるだろうが。それに、セリスは馬車に押し込めるより、外に出ていたほうが役に立つ。」

 「ルースには申し訳ないけれど、私にとってもこの方がなにかと都合がいいの。」


 ルースまでもが気にするなと言わんばかりに鼻を鳴らす。思わずエイギルは頭を抱えた。隣で蒼白になり、唇を震わせるアンジェリカを横目で見やる。

 ルースが大人しく乗せているというはセリスはルースにそれだけの人物だと認めさせたことになる。自分が認めた者以外けして乗せることは無かった誇り高い馬。そのルースがジーク以外の者を乗せることは滅多に無い。だからこそセリスがルースの背に乗ることを許されたということの意味は大きい。




    ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 いきなりルースの背に乗せることで、ジークに誤魔化されたことに気づいたセリスが抗議しようとしたそのとき、出立の笛の音が響いた。

 その合図にエイギルもアンジェリカも慌てて自分の配置に向かう。

 それを見送り、ジークも馬首をかえした。

 突然の動きに、不安定な体勢でいたセリスは体をふらつかせた。



 普段はジークの後ろに座っているが、今は彼の前に座っているので咄嗟に掴まる物が無く、大きく揺れたセリスの上半身はジークの広い胸に受け止められた。

 そのまま見上げると彼の顔が見え、今の自分とジークの身長差を思い知らされた。



 そして、気づいたことがもう一つ。



 「ジーク。」


 名を呼ぶと視線だけが落とされる。


 「さっきは色々言いましたけど」


 覗きこめば何もかも見透かされそうな漆黒の目をまっすぐに見つめ、微笑いかける(わらいかける)


 「貴方(あなた)がとっても優しいことは、良く分かっていますから。そう、例えば―――――――――

今の、気遣いとか。」


 ジークの影にいるために、セリスには砂漠の強烈な日差しは届かない。それだけでも体への負担はかなり減る。セリスを前に乗せたのはそのため。



 それだけ言ってセリスは口をつぐむ。再び前を見るジークは何も答えない。静かだが、気詰まりでない空気が漂う。



 しばらく二人は寄り添ったまま、その心地よい沈黙に浸っていた。











 「二人の世界を作っちゃって、まあ。」


 呆れたようなエイギルの視線と






 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 暗さと危うさを秘めた視線が向けられていることに気づかぬままに。















 火種を抱えたまま、今、旅ははじまったばかり――――――――――――――――――









やっと終わった!!!

ずいぶんグダグダになってしまった気がします。

でも、どうしても書きたいところばっかりだったんですよ!

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