勇者はジャンクフードが好き
ハンバーガーにはピクルス。ポテトは四角くて長いやつ。ケチャップ?OK。バーベキューソース?いいとも。飲み物は炭酸。コーラ最高〜。お菓子も大好き。ビバ!B級。
「だから無理」
「そんなことを言わないで、そこをなんとか〜っ!!」
女神様は俺の膝にすがりついて懇願してきた。しらんがな。
小一時間ほど前に突然やってきた彼女は、なんかヒラヒラした薄手の羽衣っぽいものを着たなかなかチープな神様だ。ちょっと童顔で、背は低め。でも出るところはでている女神様は、高度物質文明が誇る矯正下着はつけていないみたいである。ゆるい八百万信仰の民である俺にとっては、さして崇める気にもならないが、ないがしろにする気もないから、そういうかっこでそういうことしないでくれる?
「ね?ちょっとだけ。ちょっとだけでいいんです。どうかお情けを」
うーん。
事情は聞いたんで、そちらがどうしてもっていうのも、わからなくもないんだけど。勇者として、うちの世界に来て龍退治してくれって言われてもなぁ。俺、一般人よ?
「ひ弱な現代っ子だから、衣食住が現代日本準拠じゃないと生きていけない」
「そこは……できるだけ快適にお過ごしいただけるようサポートします!」
「つっても、そっちの世界でジャンクフード食べたいって言われても無理でしょ」
「なんとかします!」
「なんとかって……」
「私、神様なので!」
うーん。なんだろう?この、全身から匂い立つようなポンコツさ。
とりあえず、そういうのも嫌いじゃなかったので、俺は女神様に協力するために、異世界に来た。
§§§
森の中を彷徨うこと1時間。
「目的の村にぐらい、ぱぱっと着けよ!」
「すみません。迷っちゃいました〜」
「おい、神!」
「勇者様のサポートのために神通力全部使っちゃってるんですよう。あ、笛ラムネ食べます?」
「優先順位!本末転倒も甚だしいだろ、お前」
「ぽぴ〜」
「笛ラムネ、口に入れて返事すな!」
とりあえず、メントスで許した。
そこからさらに森の中を彷徨うこと2時間。もうヤダ。
「あっ、川です!川がありましたよ」
「川だな」
「このどっち側かに村があります」
上流か下流かぐらい特定しろ。
俺は飛び越えられそうな幅しかない小川の端にしゃがんで水に手を浸けた。
パシャパシャ……冷たい。
この水温を、普段着でトレッキングはしたくないな。かと言って、川沿いに薮漕ぎもだるい、などと思っていたら、川上から先割れスプーンが流れてきた。スプーンの先端がちょっとフォークみたいになったあれだ。一応、木製。
いやいや、こういうときはU字箸じゃないの?
お前の世界、どういう文化圏?という疑問を込めて女神様をジト目で見たが、能天気に小首を傾げられた。
「上流に人が住んでいる」
「わかるんですか!?流石、勇者様」
もはや突っ込む気力がない。
それでも、なんとか日が沈む前には村に着けた。
§§§
村で教えられた話は至ってオーソドックスかつ古典的だった。荒ぶる怪物に生贄に捧げられることになっている集落の長の末娘。怪物は山のような巨体の多頭龍。
……治水の隠喩とかじゃなくて、ガチでドラゴンタイプが出てくるんだ。へー。人の力でどうこうできるの?
それこそ神様が直接なんとかしろって、女神様に言いたい気もするが、あいつは人里に入る前に姿を消した。それに彼女は作物の豊穣と食物の女神なのだそうで、武力や武器は守備範囲外なんだそうだ。それでなんで龍退治の担当やらされてるの?
年神の寄り合いの担当決めであみだくじ負けたのだろうか。なんかそんな雰囲気だ。
とにかく、巨大不明生物相手に普通の槍や刀で一般人が正面から立ち向かっても勝てるわけがない。
ここは、アレしかないだろう。
「ヤシオリ作戦を提唱する」
却下された。
いいんだ。ちょっと言ってみたかっただけだから。……グスン。
なんでも、酒を飲ませて隙をつく作戦はすでに試したことがあるらしい。ところが、頭の数だけ酒の瓶は用意したのに、頭によって飲むやつと飲まないやつがいて、特に中央の頭だけはずっと周囲を見張っていたために、隙もなかったそうだ。
いるよな。真面目なやつ。
「頭は複数でも身体は一つなんだろ?飲まない頭も酔いは回るんじゃないのか?」
「ウワバミのたぐいでして」
あー、まー、そうね。そりゃダメだ。
そもそも、今年は凶作で食うのもやっとな状態だから、そんなに大量の酒を醸す余裕が、材料的にも時間的にもないそうだ。
たしかに集落の者たちは一様に元気がない。ちゃんと食えてないのか。そりゃ、生贄を捧げて邪龍神に祈りたくもなるわ。
だとしたら、今、俺の前に置かれている、なんかボソボソしたシリアルの粗食って、ひょっとして精一杯の歓迎の気持ちの一椀っだったりするのかな?
う、うーん。いろんな意味で食いづらい。
「とりあえず、みんなで考えよっか」
翌朝、集落の人達に集まってもらった。各々、仕事もあるだろうに皆さん来てくださった。ありがたい。
「おはようございます!」
村長に紹介され、ご縁あってこちらにお邪魔することになりましたと挨拶。
胡散臭いものを見る感じの死んだような目が並ぶ。そりゃぁね。
「お忙しいところ朝早くからお集まりいただいて申し訳ない。こちらで軽食を用意しました。食べながら話を聴いてください」
ご用意させていただきました!ホットドックとオニオンコンソメスープ。
女神様のご加護で、今の俺は自分が明確にイメージできる飲食物は調達できるのだ。
皆の目の色が変わった。
大丈夫、欲張って争わなくても、家にいるお子さんの分もちゃんと用意するよ。なんなら連れてきな。俺の好きな味だからインスタント系の味だけど、スープは温かいほうが美味しいから。
ほら、そこ。ホットドックの早食い競争みたいな食い方をするな。もっとちゃんと味わって美味しく感じられる食い方で食え。身体に無理させるほど食いすぎるのは、よろしくないぞ。そして俺が与える食い物のことで争うな。(女神様由来だから)罰が当たるぞ。
そんなことを注意した矢先に、一人が慌てて食いすぎて喉をつまらせたもんだから、皆さん、神罰を恐れて一気に行儀が良くなった。神様が実在するだけあって、信心深い人が多いようだ。
俺は座が落ち着くのを見計らって、龍退治の相談を持ちかけた。
頭に血の気と栄養がまわった人々の議論は白熱し、アイディアは百出したが、どうにもこれという案は出なかった。というか、わりとここの人、すでにいろいろ試した後だったらしい。
用意した酒に毒を混ぜたり、腐敗させたものを飲ませようとしたときは、龍が怒り狂って被害が洒落にならなかったという。龍の気持ちを考えると、そりゃそうだわな。
でも、集落の人口がこの規模になってしまったのは、試行錯誤の失敗によるものだと聞くと、言葉が出ない。
人知を超えた存在に望みを託すべく、龍に対抗できるだけの別の怪物を用意して、土地の守り神として祀ってもみたという。
「どんなの?用意なんてできるの?」
「はい。巨大な虫を卵から育てました」
まさかの昆虫。流石に巨大ったって限度があるのでは?と思ったので聞いてみると、村の巫女が祈祷し、村人みんなで日々お祈りすることで、徹底的にバフをかけて強化しまくったらしい。
「そういたしましたら、たいそう大きく強くなったのですが……」
「おお」
「繭の糸も強力になりすぎてしまって、破って羽化できなくなりました」
「限度!!」
お蚕さんの品種改良じゃないんだから!(蚕はそうらしい)
村の奥になんか不自然な白いドーム屋根があるなと思っていたら、そのデビューできない土地神様の繭だったらしい。努力の方向性が頭悪い結果になっていて悲しすぎる。
土地神様は今はお眠りになっていらっしゃるようで、巫女が呼びかけても動きはないそうだ。対多頭龍戦での活躍は期待できない。
それでも何かしら役に立つ情報はないかと詳細を聞くために巫女さんとやらに会いに行くと、なんと村長の娘だった。
「双子?」
「はい。でもユーミと私は二人で一人前の力しかない巫女なんです」
そう語ってくれたのは、エーミちゃんというお姉さんの方なのだが、顔は二人共そっくりだ。正直、どっちがどっちか見分けがつかないレベル。
心無い人は、そっくりの双子なんだから、一人はスペアみたいなもんで、生贄になっても平気だなんて、口さがなく言ったりするらしい。
そういうもんじゃないだろう。
二人で一人前なので、一人が生贄になると、今後、土地神様に祈りを捧げることも難しいという。彼女らの祈りが絶えると、羽化できぬまま休眠に入ってしまった土地神様はそのまま儚くなってしまう可能性が高いそうだ。
土地や人と結びついてしまった土地神様がそのように滅びると、土地や人にどのような災いがあるかわからないので恐ろしい。そう言って双子はさめざめと泣いた。
双子の姉妹の片方が不条理に死ぬことではなく、そのような結論を出した人々が守れぬと言って泣くのか、君達は。
俺はいろんなことに腹が立ったが、自分の怒りが何に対する怒りなのかを言語化する前に、それをコーラで胃の腑に流し込んだ。黒い炭酸が喉を焼く。俺は、糖分とカフェインとコーラ味を形成する何かを脳にぶち込んで、解決策を考えた。
「よし。俺に任せておけ」
§§§
俺はその夜、集落の人々が寝静まった頃合いを見計らって、村はずれのあまり人が来ないところにこっそり出かけた。土地神様の繭のある祠の裏手だ。
「おい、女神様」
「はい。お呼びですか、勇者様」
案の定、人目のないところなら、彼女を呼び出せた。
「お前の力で呼び出せる飲食物って、量に限度はある?」
「ああ、それでしたらご心配なく。他の方に飲み食いさせるために出す分には、今日のように沢山出されても大丈夫ですよ」
ただし、飲食以外の目的で出したり、明らかに食べ残しが発生するほど過剰に出しすぎるのは良くないという。
お残しはゆるしまへんで、というやつだ。
「ご用はそれだけですか?」
「いや、もう一つ。飲食物以外に、なんか天馬とか天浮舟的なものって用意できないか?」
巨大な敵を相手取るのに、地上からというのはつらい。
「天馬のご用意もできなくもないですが……乗馬お得意ですか?馬具ないですけど」
裸馬にまたがってフライングする勇気ねーわ。
「あとは、勇者様の世界の乗り物も武器でなければ出せなくもないとは思います」
「ああ、そうか。武神じゃないから武器厳禁なんだっけ」
だったら、農耕にまつわるものならいけるかな?ものは試しだ。やってみよう。
「レッツ、コンバイン!!」
出た!
燃える男の赤い複合農作業用乗用機器が俺の眼の前に…………あ、輪郭が薄れて消えた。
「勇者様がしっかり細部までイメージできないものは無理みたいです」
「そっかー。俺、自転車ぐらいしか乗ったことないからなぁ」
「その自転車というのは飛ばないんですか?」
「ん?…………飛ぶよ。飛ぶ、飛ぶ」
ようは飛んでいるところを映像でイメージできればいいのだろう。それなら観たことがあるから楽勝だ。
俺は、マイ自転車を召喚した。よっしゃ、これなら乗り慣れている。BMXとは言わないが、手放し運転ぐらいは軽くできる。あとはこれで本当に空を飛べるか試運転を……。
「勇者様!大変です!!」
「なんだ」
「祟り龍が来ました」
なに!?
慌てて女神様が指す方角を見ると、たしかに金色に光るなにかが高速でこちらに飛来しつつある。
え?飛来?相手、飛ぶの?聞いてないよ。
「いかん!村に降りられたらまずい。迎撃する」
俺は自転車にまたがった。
「轟天号、発進!」
飛ぶと信じてペダルを踏み込む。
なんとちゃんと飛んだ。信じる心と特撮の刷り込みすごい。絶対に飛べない形状でも、異邦人の特殊能力があればワンチャン物理無視して飛べるというのが具体的に強固にイメージできる俺の脳、ありがとう。
月が明るい夜空を自転車で駆け上る。
目標は敵、巨大不明生物。
「でかい」
金色に輝くソレは、アホみたいにでかかった。まさに怪獣サイズ。
うん。ヤマタノオロチっていうより、完全にあっちだ。多頭龍って言われてたけど、頭の数三つじゃん。
金色の三頭龍は俺を見つけたらしい。
飛翔速度を緩めてホバリングに入った。中央の首がこちらに向かって口を開く。……夜の闇に慣れた目が、口の中で青白い光が生まれるのを捉えた。
や・ば・い
とっさに躱したすぐ脇を、光条が貫く。背後の土地神の祠方向で爆発音が轟いた。クソッ、女神様は無事か!?
自転車が落下しないから女神様は無事だと信じて、必死にペダルを漕ぐ。飛行時の推進力との関係性は不明だが、自転車は漕げば速くなるという俺の思いが轟天号を駆る。
これまた言い訳程度の翼をあまり空力とは無関係にゆっくりと羽ばたかせながら、垂直降下した三頭龍は、森の中に着地した。
よし。村まではまだ距離がある。
さっきの光線兵器を使われたら、この程度の距離は意味がないが、少なくとも、人や家屋が踏み潰されることはない。ここで勝負だ。
俺はペダルから足を離して、上空から三頭龍の右の首に向かって、一気に降下した。右の頭がこちらを向く。
俺を自転車ごと一飲みにできるサイズの口が開く。今だ!
虚空から現れた黒い奔流が、開いた龍の口に向かって流れ込む。
コーラのスペシャルサイズ入りました!
俺はハンドルを引き上げて、ぐるりと龍の背中側を回り込みながら上昇に転じる。もう一丁追加で。
俺を追って口を開けた左の首に向かって、先ほどと同じように大量のコーラをぶち込んでやる。
龍が口を閉じると、コーラの滝が消える。"飲める分だけ"か。わかったよ。
高く上昇した俺に向かってもう一度噛みつきに来た口に向かって、またコーラを注いでやる。ドリンクバーでお代わり自由だ。かかってこい。
最初は戸惑っていた三頭龍だが、コーラの味が気に入ったのか、そのうち左右順番に口を開けるようになった。
いいぜ、コーラ最高だろう?
だが、真ん中の首は全然口を開けようとしなかった。こいつか、真面目くんは。何度か誘いをかけて、口の前にコーラを出してみたが、ずっと口を閉じていて、けして飲もうとしなかった。無理強いを繰り返すとコーラ自体が出なくなりそうで怖い。
腹が膨れたのか、左右の首も飲みが悪くなったところで、おもむろに中央の首が俺に狙いを定めてきた。
来る。レーザーブレスだ。
俺はジグザグに回避行動を取りながら上昇した。
大きく伸び上がった中央の奴は、口を開き…………盛大にゲップをした。
ウハハハハ。左右のやつが飲んでも胃は一つのようだな!
俺は大きく口を開けて笑ってやった。憎々しげにこちらを睨む巨大な目と目があった。奴の口が再び開く。
俺は、龍に向かって一気に距離を詰めた。ブレスはタイミング的に今からはない。そら、噛みつく以外にないぞ。
ここで投入!行っけぇーっ!!!
俺がヤツの口に放り込んだのは、大量の錠剤。そう。メントスだ。
中央の龍の喉を通り抜けた小さな錠剤は、コーラでタプタプになったその腹に到達した。メントスの多孔質の表面で炭酸が急激に気化し、増大した圧力によって泡が一気に吹き上がる。
壮観だった。
三つの口からメントスガイザーを拭き上げて、三頭龍がのたうつ。
わぁー、えっぐいスプリンクラー。
こうして邪神は滅びた。
§§§
「夜勤明けの牛丼ってうまいよな」
「本当にありがとうございました」
深々と頭を下げて礼を言う村長にも、一杯出してあげる。ネギいれる?
豚汁付けようか?
こんなに美味いものは食べたことがないと泣きながら食べる村長に、深く頷く。夜明けの牛丼って達成感があってうまいんだよ。
「わしらは結局、何もできなかったから」と恐縮する人々に、これはお祝いの振る舞いものだからと言って、菓子撒きをする。
はーい、まずは子供からな。
俺はこれで帰ればいいけど、君らはまだまだここで頑張らなきゃいけないんだ。神饌食って力つけとけ。
「それから二度と人間を生贄に捧げるなんて手段で物事を解決しようとするなよ」
「はい。御神託は子々孫々まで必ず伝えさせていただきます」
んー、俺は神じゃないけど……まいっか。
ついでにピザとか餃子とか肉まんとか焼きそばパンとかポテチとか適当につまみやすそうなもの出してあげて、お祝いの宴会に突入したその場から中座する。
土地神の祠に来ると、巫女の双子は思ったとおりここにいた。明け方、村長といっしょに泣きながら礼を言ってくれた後、ずっとここに来ていたんだろう。
「どう?」
「勇者様……」
三頭龍の光線が直撃した祠はすっかり壊れていた。炎上したのかあちこち焼け焦げている。美しかった繭も無惨な状態だった。
「祈っても応えてくださいません」
「もしかするともう……」
涙ぐむ正統派美少女二人の頭を撫でる。
大丈夫、大丈夫。心配するなって。
「歌ってごらん」
黙って跪いていても寝ている相手は起きないよ。せっかくだからここは様式美でいこう。俺はこういうときにぴったりな歌を教えてあげた。
双子の歌声が澄み渡った青空に響く。
日本よりも少し濃い緑の森が風にざわめく。
黒焦げになった繭がもぞりと動いた。
出でよ!巨蛾の女王!!
パリパリと焦げた繭を割いて、巨大な土地神が姿を表した。
ゆっくりとその大きな羽が開いていく。ああ、美しいな。蝶じゃなくて蛾だけど。だが、それがいい。
俺は深い満足感にニンマリした。
双子の歌が途切れる。
二人とも大きく目を見開いて土地神様の姿を見上げていた。
「さあ、お願いするといいよ。彼女は君たちの神様だ」
立ち尽くしていた二人はハッとして、その場に平伏した。そりゃそうか。
「行こうか。あとちょっとやり残したことがあるんだ。手伝って欲しい」
俺は土地神様の大きな背に乗った。
毛の生えた背中はもっとチクチクするかと思ったが、意外にふわふわだった。俺は笛ラムネを一つ口に含んだ。
ぽぴ〜。
間抜けな音を合図に巨大な蛾が飛び立つ。
蛾はぐるりと集落の上を飛んだあと、昨夜、三頭龍の倒れたところに向かった。
「ここ、すっかり汚しちゃったんだけど、なんとかできる?」
土地神様は返事の代わりにブルリと身を震わせた。
巨大な羽から美しい鱗粉が光の粉となって荒れた森に降り注ぐ。さすがこの土地に縁を結ばれた豊穣の神。龍の蹂躙とメントスコーラで散々に荒れた土地に緑が蘇って行く。
「ありがとう」
『こちらこそありがとうございました。本当にお世話になりました』
聞き覚えのある声が頭の中に響く。
ちゃんと土地神として生まれることができて良かったな、女神様。
§§§
「でさ、一件落着じゃなかったのか」
俺は自分のアパートのキッチンで湯を沸かしながら、文句を言った。
「なんで、また俺んとこ来てるの。お前、土地神だろ?」
「いいじゃないですか。遊びに来るぐらい」
「遊びにじゃなくて、お前はメシを食いに来ているだけだろう」
「そ、そんなことないですよ……」
俺は目が泳いでいる女神様の前の丼にラーメンを入れた。
「はい。袋麺だからすぐ食え」
「わーい」
彼女は先割れスプーンもどきを取り出して、ラーメンを食べだした。
それ、お前用のか!?
「デザートはフルーチェ希望です」
「甘えんな。このB級女神」
まぁ、甘えてもいいけどな。
俺はジャンクなB級大好きだから。
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え?なんでこの主人公のところに女神様がやってきたかって?
それは彼があっちの世界の怪獣王が日本に転生した転生者だからです。
本人は記憶全然ありませんがw
ぽぴ〜