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目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです  作者: MIRICO


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38② ー思惑ー

 地下に作られた研究所のような場所で、特徴のある魔獣を合わせて、新種を作っていた。それは魔獣同士の戦いに出すためのもので、珍しさを売りにするために交配を続けていたのである。


 その魔獣たちが逃げ出し、人々を襲ったり家畜を襲ったりしていた。

 それらを作るための場所を提供していたのが子爵家で、指示を出していたのが、


「あの父親なんですね」

「ショックでしょうが」


 セレスティーヌはショックだろう。自分が襲われるのではないかと危惧していたくらいだ。一匹二匹を売買していたのではなく、新種を作って売りに出していたのだから、


「あなたに罰が及ばないようにします。それだけは約束しますから。もちろん、アロイスにも」


 実の親が犯罪を犯したのならば、その子や孫にも影響があるだろう。だが、クラウディオはそれだけは避けられるようにすると、約束してくれる。


「二人はなんの関わりもありません。それに、あなたは、私の妻なのですから、なんの問題もありません!」

「ありがとうございます。アロイスも、姉の家は関わっていないのでしょうか?」

「それはまだ、調査がありますが」


 だが、アロイスになにか起きるようなことはさせないと、力強く言ってくれる。

 アロイスは自分の名前が出たのでクラウディオを見上げたが、きょとんとしていた。

 セレスティーヌの姉やその夫がどんな人なのか分からないが、もしなにかあってもクラウディオはきっとアロイスを守ってくれるだろう。


「父親についてですが、どこまで証拠があるのでしょう? 罪を問えますか?」

「現状は、証言だけです。場所も子爵家の土地ですし、訪問があったとはいえ、それが証拠にはなりません。帳簿なども子爵は持っておらず、魔獣の捕獲も子爵家が行なっていました。金の受け渡しについても、証拠はまだ出ていません」


 徹底した方法で足が付かないようにしているそうだ。それについての証拠はこれから上げる必要がある。


「私に少し考えが。旦那様にも協力いただきたいんですが」

「協力ですか?」


 フィオナは頷く。一人で行うつもりだったが、クラウディオが来てくれればありがたい。


「あと、別件で、少し気になることがあったんですが。サルヴェール公爵のことで」

「葬式だったそうですね。私も後で行くつもりで」

「眠ったまま亡くなったそうですが、気になることがあったのでお伝えしておきます」


 フィオナはサルヴェール公爵の爪の話をした。もちろんなにかを掻いて爪の中にゴミが溜まっていたのかもしれないが、皮や血の塊であれば、おかしいと思うだろう。

 エルネストは、父親は眠ったまま死んでいた。と自ら説明していたのだから。


 フィオナは他に気になっていたことをクラウディオに確認し、留守にしていた間の話をした。


「それくらい、ですかね。あとはモーリスに確認していただければ」

「分かりました。では、私は一度王宮に行きますので」

「これからですか!?」

「直接こちらに来てしまったので。知らせは出しましたが、直接行かねばなりません」


 王の命令なのだから、報告義務がある。疲労があるだろうに心配になるが、すぐに戻ってくると言ってクラウディオは部屋を出て行った。

 アロイスも話を聞いていて眠くなったのか、うとうとしていたので、乳母に部屋に連れて行ってもらう。


「はあー、なんだかどっと疲れが」

「色々と、お疲れ様です」


 本当に色々だ。だが、まだなにも終わっていない。

 サルヴェール公爵についてはクラウディオが判断するだろう。分かっていることは伝えた。


「セレスティーヌに渡した毒と合わせて、罪に問えるかどうか」

「同じ毒ではないんですよね?」

「毒の種類は違うと思います。セレスティーヌが飲んだ薬は仮死状態にするもので、眠ったまま首を引っ掻く真似はしてません。サルヴェール公爵の毒は苦しみながら殺す毒です。もし同じならば、セレスティーヌの体にも苦しんだ痕が残ったことでしょう」

「フィオナ様が起きた時に、首に引っ掻き傷はありませんでしたしね」


 同じであれば、フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取れなかっただろう。その辺りは考えて薬を渡したに違いない。生贄にも依代にもできる、意識を失う薬をセレスティーヌに与えた。


「フィオナ様、刺繍はされますか? こちらにしまっておきましたが。今日はお疲れですし……」

「大丈夫です。さっさと仕上げたいですからね」


 リディは刺繍の用意をしてくれる。フィオナは広げた布を眺めながら、刺繍糸が足りるか算段した。


「足りなそうですね。すぐに取り寄せます!」

「すみません。ありがとうございます」


 リディが急いで部屋から出ようとすると、きゃっ、と悲鳴が上がった。何事かとそちらを見遣ると、扉の向こうに立っている人がいた。


「だ、旦那様」


 扉の前にいたのはクラウディオで、フィオナはサッと血の気が引くのを感じた。


(話を聞いていた!? いつからそこにいたの!?)


「セレスティーヌ、礼を言うのを忘れていました」

「え? お礼、ですか?」

「いただいたお守りが、皆と離れた時に使えました。菓子と薬草も」

「そ、そうですか。それは良かった……、薬草を使うことがあったんですか??」

「私ではないですよ。部下の熱冷ましに使わせてもらいました。傷が膿んで、薬草が必要になったので。ありがとうございます」


 その礼にフィオナはホッとする。クラウディオが使うことがなかったことにも、今の話を聞かれていなかったことにも。


 クラウディオは実用的なお守りに大変助かった、その知識はとても素晴らしいもので、討伐に行く者たちにも常備させようかと考えている、と褒めるように礼を言ってくれ、これから王宮へ出発すると、再び部屋を出て行った。


「————び、びっくりしたあ」

「驚きました。目の前にいらっしゃったので」


 足音が遠退いてリディが扉の向こうにクラウディオがいないことを確認して、二人で脱力する。クラウディオはいつも通り緩やかに微笑んでいたので、聞かれていないだろう。

 それにしても、心臓に悪い。


 リディは刺繍糸を頼んでくると、部屋を出ていく。その後ろ姿を見送って、フィオナはソファーでだらしなく伸びをした。


(まだ、気付かれてはいけないわよ。フィオナ)


 セレスティーヌと夢で約束した。体は返すからと。セレスティーヌは泣きそうな顔をして、ヴァルラムを通してフィオナの言葉を聞いていた。


(大丈夫。私はやれるわ)


 まだ自分にはやることがある。それをすべて終えて、フィオナはセレスティーヌに体を返すのだ。

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