20① ー両親ー
女性は金髪を後ろでまとめた細身の女性で、隣にいるのは灰色の髪をした背の高い男性だ。間違いなく両親だ。セレスティーヌに似ている。
(特に、顔の造形とか、目のあたりとか。お父さん似すぎだわ)
しかし、雰囲気はまったく似ていない。両親とも眉が吊り上がっており性格がきつそうな顔をしていた。父親に至っては腹に一物抱えていそうな胡散臭い雰囲気がある。口上の髭がカーブを描いて上向きで、口角が下向きだからだろうか。
二人とも確かに綺麗な人たちだが、若づくりなのか派手な装いだ。
母親は目に付く大きな宝石のあるネックレスをし、細い指に親指の爪くらいの宝石が付いた指輪をしている。ネックレスとお揃いにしているが、大きすぎて悪目立ちをしている。ドレスは白に金刺繍で細かく装飾されており、キラキラとまばゆく美しいが、年齢的に浮いているような気もする。
父親も指輪をしており、そちらもぎらりと光る大きな宝石付きだ。ブローチももちろん同じく宝石がまばゆく、どこでそんな宝石を掘り出したのか気になるサイズである。
全体的に成金というべきか、お金があることがよく分かる。
(借金苦を助けただけの財力があるってことよね。趣味がいいとは思わないけれど)
この親にしてこの子ありか。セレスティーヌも衣装は派手めで宝飾に力を入れていた。
「公爵はどうした」
「……王とお話ししております」
父親に問われてフィオナははっとする。変には思われていないか、父親は鼻息をついて周囲を見回した。辺りに人がいないか確認したようだ。
「お前が公爵に嫁ぎたいと言ってから何日経ったか。まだ子供はできんのか。お前が望んで行ったのだから、無理にでも子をつくるように仕向けたらどうだ」
「そうよ、セレスティーヌ。私はとても楽しみにしているの。公爵様の子となれば、次の王位に関わるかもしれないのだし?」
母親はにんまりと笑んでくる。フィオナは眉を顰めそうになった。
嫁いでから何日経っているのか知らないが、会って話がすぐそれとは。それに、妙なことを言った。
(なんでクラウディオとの子ができたら王位になるわけ??)
「子をつくることは妻の務めでもあるだろう」
「契約に含んでおけば良かったとあれほど言ったのに、あなたがそこだけは無理強いできないとこだわったせいよ」
そんなことまで契約書に書く気だったのか。呆れてものが言えない。
(でも、セレスティーヌは、そこは断ったのね。そんなこと書いたら、結婚してもらえそうにないからかもしれないけど)
「公爵様は、あまりお子が好きではないようなので」
「それがどうした。王には子ができぬと言われているのだから、お前が公爵の子を産めば王位の可能性があるのだぞ!?」
声が大きくなって、廊下を歩く人たちがこちらを向いた。父親はコホンと咳払いをするが、母親はフィオナの両手を取って、よく考えて、と同じことを復唱する。
王に子ができぬから、クラウディオとセレスティーヌの子供が王位を授かる。そうすれば祖父母として権威を持てるということか。
セレスティーヌは純粋にクラウディオと結婚したかったが、両親にはそんな思惑があったようだ。
(他にも公爵家はあるのに、クラウディオとの子供が継承権に関わるって、クラウディオの血筋どうなってるんだろ)
どちらにしても、壮大な夢を見ているものだ。クラウディオが子供をつくる気がないのはこのせいもあるだろう。
どこの親も同じか。フィオナですらうんざりする。
(でも、王の話と合わせると、もしかしたら王もその気ということ?)
「セレスティーヌ。お待たせしました」
「まあ、公爵。お久し振りですこと」
運悪くクラウディオが来てしまった。気にせず無視して広間に戻ればいいものを、両親の姿は見えていただろうに。
「丁度、あなたの話をしていたところですよ。未だ良い話を耳にせず、気になっていると」
「良い話、ですか……」
クラウディオ相手にも同じことを言うのか。あまり勘の良くないクラウディオの声が若干低くなる。
話の内容を理解しているところを見ると、セレスティーヌの両親に同じことを何度も言われているようだ。人に子供が好きかと聞きながらその発想にはたどり着かない割に、セレスティーヌの両親に言われるとすぐに気付くのなら、相当だろう。
「揃いの衣装を着ていると思わなかったわ。これは、期待して良いのかしら?」
「なんの話をしているか分かりませんが、セレスティーヌを呼びに来ただけですので、失礼させていただきます」
すげなく答えて広間へ戻ろうとしたが、クラウディオが促す前に母親がセレスティーヌの腕を引っ張った。フィオナも戻ろうとしたのにいきなり腕を引かれて仰け反りそうになる。
「久し振りにお会いしたのに、公爵はいつもつれないですわね。娘にもほとんど会えないのですから、お話しさせていただいてもよろしいでしょうに」
そんなことを言えばクラウディオはセレスティーヌを置いていくと思うが。
そう思ったが、クラウディオは引き止められて足を止めた。なぜかセレスティーヌに伺うようにこちらを見つめる。
気に掛けることなどないのだから、遠慮せずに行けば良いのに、セレスティーヌを気にして行くのをやめるとは。
クラウディオの表情からは、セレスティーヌをここから離れさせたいように見えた。




