19② ー謁見ー
どこかクラウディオに雰囲気が似ているような気がするが、短い金髪で深い藍色の瞳をしている。クラウディオに初めて会った時に感じた、蔑みの視線を向けられて、そう感じるのかもしれない。
王はこちらを一瞥した程度で、クラウディオと話し始めた。セレスティーヌは無視だ。話に入れるつもりもないと、体の向きですら背けられている。
(これは、他の人に軽んじられて当然の態度だわ。ここまで王に嫌われているならば、擁護する必要がないもの)
絶対的権力者に楯突く理由などない。それが公爵家に金を払って嫁いでくるような女ならば、なおさら。
セレスティーヌの立場は女性たちの恨みによって確立されているわけではなく、王によっても疎外される立ち位置なのだ。
周囲もそれが分かっていると、セレスティーヌへの視線に嘲笑が混じっていた。針のむしろといっても過言ではない。
これでダンスの相手をクラウディオにしてもらえなかったとなれば、セレスティーヌが落胆するわけだ。
「女性たちが騒がしいと思ったら、珍しい雰囲気で驚いたぞ。皆の視線を手に入れることが容易いはずなのに、力を入れる理由でもあったのか」
衣装の話になり、王が言いながらちろっとこちらに視線を向けた。いかにも、お前がそんな派手な衣装着せたんだろう。の目だ。
(私じゃないですよ。クラウディオが決めたわけでもないと思うけれど)
「良い布ができたと連絡を受けて、こちらを作らせました」
「そうなのか? 確かに品は良さそうだな」
予想外の答えで王は少しだけ逡巡した。フィオナもついクラウディオの顔を見上げてしまう。
(作らせた? 招待状が来てから作らせたってこと? いや、まさかね。そんな余裕ないだろうし、そうでなければ針子さんたちは寝ずに作ることになっちゃうわ)
王の嫌味をかわすために嘘を言ったのだろうか。きっと、これ以上面倒を被りたくないのだ。
「領地の開拓が進み、道が開けたおかげか? これで少しは領土も潤うな。安心したぞ」
クラウディオは公爵領に力を入れているようだ。山間にある領土に商人が通りやすくなる道でも作ったのか、王は目尻を下げる。これで借金に苦しまないとでも言いたいようだ。
セレスティーヌは一切何も関わっていないので、フィオナは領土の話も聞いたことがない。
公爵家のことも分からないので当然か。公爵家でもセレスティーヌに関わる者はリディや身の回りのことを行うメイドたち、シェフのポールと執事のモーリスくらい。
元の体に戻ることしか考えていないので、公爵家や領土についてなどは、セレスティーヌではないと気付かれない程度しか学んでいない。
(お屋敷でほとんど会わないから知らないけど、クラウディオもきっと色々やってるのよね)
借金をしたのは不運が重なったせいでもあるようだし、しっかりと管理していれば借金をすることもなかったのだろう。
「都に近くともあの土地はあまりに過酷な場所だ。先祖を悪く言う気はないが、あの土地のせいで要らぬ苦労をすることになったのだから、私は心を痛めているのだ」
近くても住みにくい場所。そんな場所を古き王は公爵に与えたようだ。そんな土地を継承したクラウディオは、その割を食っているのである。
(だからって、こっち見て言うの、やめてくれないかしら)
王はどうしてもセレスティーヌを邪険にしたいらしい。嫌味を言う時は必ずセレスティーヌに視線を向ける。
フィオナはにこやかな笑顔を湛えたままクラウディオと王の話を聞いているが、クラウディオまでこちらをちらちら見てくる。フィオナは当事者ではないので痛む胸はないが、さすがにいい気持ちはしない。
「古い時代は弟をはるか遠くに追いやった王もいると言う。私は能力のある者をそのようにぞんざいに扱うつもりはないのだ。魔法継承できる者も少なくなっている。優秀な血筋を絶やしてもらいたくはない」
王の言い分はよく分かった。つまり、クラウディオの優秀な魔法を使える力を、子供に継承しないのはもったいないと言いたいのだ。ついでに言えば、優秀なクラウディオが子供をつくらないことを知っている。
(望まない結婚だものね。子供ができるわけないのだし、王の心配ももっともだわ)
ブルイエ家も同じような話をしているので、理解はできる。公爵という高い身分を持っているのだし、次の世代を考えるのは当然だ。
クラウディオからは離婚もできないので、セレスティーヌとの子をもうける気がなければ、拒否を続けるしかない。王にとってそれはとても歯がゆいのだろう。だったらセレスティーヌから離婚を口にすればいいのだと、態度で脅してくる。
セレスティーヌとの結婚は借金を作ったことによる契約結婚なのだから、王でも口出しできないわけだ。
それでもこちらを見ないでほしいものである。




