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目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです  作者: MIRICO


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17② ーブルイエ家ー

 石碑の話は、祖父から何度も聞いた。


「フィオナ、よく覚えておきなさい。この石碑は我がブルイエ家が守り、封印し続けなければならない場所だ。お金がなくともこの地を売ることは決してしてはいけないよ」


 そう祖父は口が酸っぱくなるほど言って心配していたが、祖父の死後早速父親が森を売ろうとした。しかし、誰の買い手もなく諦めたことがある。

 森には人を襲う害獣も魔物である危険な獣も住んでいない。小動物がいるくらいの開拓に向いた平地なのに、石碑のある森だけは売ろうとしても誰も買わないのだ。


 父親は信じていなかったが、ブルイエ家の持つ森の中の石碑について、あの場所は曰く付きで、石碑を壊すと大変なことが起きる。と皆が信じ、敬遠していたのだ。


 だから領主ですら、あの森は売るなと口にしていた。もしくはフィオナが領主の息子に嫁いでも、フィオナが管理すれば良いと言っていたくらいだ。ブルイエ家には家を継ぐ者がいなかったので、領主預かりにするつもりだったのだろう。


 どうしてそこまであの森を開拓しようとしないのか。それは、子供の頃から誰もが物語を耳にしているからである。


『その昔、人々に悪さをして混乱に陥れた悪いモノが、魔法使いによってこの場所で倒され封じられた。


 魔法使いにも完全に殺せるほどの力は強くなく、封じるしかできなかったため、命を掛けてその封印を行った。 

 しかし封印は完全ではなく、王は、その悪いモノを瀕死にまで追い込め封じるために協力した一人の男に、その場所を託した。


 男は王に命じられた通りその場所を守ることを誓い、命尽きるまでその場所を守ったという』


 その場所がこの石碑のある場所であり、男の死後その血とその地を受け継いだブルイエ家の人々は、代々この場所を封じるための儀式を行なってきた。


 年に一度、行われる儀式。


 石碑の周りの石畳に魔法陣が刻まれている。今では浅くなり薄くなっているが、ブルイエ家の者が魔力を流すと淡く光り、その模様が浮かび上がる。

 すると、この石碑に封じられているモノの封印が強まるのだ。


 そんな話を聞いて、近所の子供たちは、一度はその場所を見たいと集まる。しかし、屋敷の裏手の森はなぜかとても薄暗く不気味で、石碑の側に近付こうとすると気分が悪くなったり、変な幻を見たりし、たどり着くのがとても難しく、たどり着いても気分の悪さに気を失いそうになるらしい。


 らしい、というのは、ブルイエ家の人間が石碑に近付いても何も起きないからだ。そうでなければ年に一度の儀式もお供物もできない。

 だから父親は信じていなかった。けれど、皆はその伝説を信じていたのだ。


 フィオナも石碑に近付いてもなにも起きない。森の中が薄暗く不気味だと思ったことはないし、気分が悪くなることもない。

 そして、フィオナも年に一度の儀式に携わったことがある。


 祖父からその儀式の方法を教えてもらったが、初めて行った時に魔力を失いすぎて倒れてしまった。

 フィオナにとって命に関わるほどの量を奪われるので、封印は間違いなくあるのだろう。だが、フィオナには祖父のような儀式は行えない。誰かと結婚してその儀式の方法を教えてほしいと言われたが、その予定はない。


 祖父は儀式を行うよう両親を何度も説得していたが、儀式を続けようとはしなかった。妹のジネットも儀式を古臭い因習と考え、一度たりと儀式を学ぼうとしなかった。

 ブルイエ家の役目はフィオナが誰かに繋ぐ前に終わるだろう。祖父は諦めの境地だった。


 その祖父が亡くなってからずっと、儀式は行われていない。


(お祖父様が亡くなってもうすぐ一年。儀式を行わずに一年を過ぎる。このまま儀式を行わなかったら、どうなるんだろう)


 一体いつからあの場所に石碑が置いてあるのか知らないが、このまま儀式を行わず放置しておけば、封印は解かれ、なにかが起きるのかもしれない。


 森の中はうっそうとしていたが、石碑までは人が歩けるくらいの道があり、特に迷うことなく石碑までたどり着ける。体調が良ければフィオナもその道を歩き、石碑まで歩いた。


「今日はクッキーを焼いたの。子供たちには好評だったのよ。少し失敗したものがあるけれど、味は問題ないと思うわ」


 誰に話すでもなく言葉を口にして、フィオナは石碑を見上げる。


 ここに来て気分が悪くなることはなかった。むしろ石碑の後ろは断崖絶壁で風通しがよく、空気が良いように思えるほどだ。


 崖の向こうは森が続き、遠目には山が見えた。そこまでずっとブルイエ家の土地で、他の誰もが侵入することはない。そちらの方も昔の戦いの跡があるらしく、ブルイエ家が守る土地でもあり、ブルイエ家以外の者が近寄ることもなかった。


 祖父は山近くまで行ったことがあるそうだが、そちらには行ってはいけないと言われた。戦いでたくさんの人が死に、その魂が残っているからだという。


 こんな夢を見るのは、絵本の内容を聞いたからだろうか。

 まるでその新緑を揺らす風さえ感じるほどの鮮明な夢だ。


 フィオナはこの日、両親と妹を見送った後、石碑に行き、そして夕方体調を崩し、早めに眠りについたのだ。

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