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目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです  作者: MIRICO


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14 ー招待ー

 屋敷に戻ると、なぜかクラウディオが待っていた。つい身構えそうになるが、今の所悪いことはしていない。


 すでにぐっすり眠ってしまっているアロイスを部屋に連れていくよう伝えて、フィオナは向き直った。するとクラウディオは少しばかりおののくような雰囲気を見せるのだが、初めて見た時の偉そうな雰囲気はどこにいったのだろうか。


(なんだか、怯えているみたいね)


「なにか、ご用でしょうか」

「王よりパーティの招待がありましたので、お知らせに。ドレスなどの買い物を済まされたのですか?」


 そう言いながら、リディとなぜかポールを連れていたのと、購入した荷物が見当たらないのを見て、クラウディオは不思議そうな顔をした。買い物になど行ってはいないが、街に行ったらセレスティーヌは買い物と決まっていたのだろう。


「ただの散歩です。ドレスはあるのでは? 私は必要ありません。それより、王からの招待とはどういうことでしょう」

「いつもの催しです。年に一度の王族主催のパーティで、昨年も参加しました」

「そちらに、サルヴェール公爵子息もいらっしゃる予定でしょうか?」

「それはなんとも言えません。前回サルヴェール公爵はいましたが。お会いしたい理由でも?」

「前に声を掛けていただいたので、お会いしても驚かず挨拶しようと思っているだけです」


 適当な返答にクラウディオは表情を少しだけ曇らせる。印象が悪いのは間違いなさそうだ。


(エルネストも来るなら助かるんだけれど)


「ドレスは、本当に必要ないのでしょうか?」

「あるもので足りるのであれば、それで構いません。無いようなら、リディと相談します」

「そうですか……」

「他に、なにか?」


 少々気落ちしているような表情が気になるが、セレスティーヌがドレスに気を向けないため不思議に思っているのだろう。


 ドレスを購入する店などセレスティーヌが懇意にしていたに違いない。親しくなくともセレスティーヌを知っている人と会うのは避けたいだけなのだ。フィオナはドレスの良し悪しが分からないので、パーティとなればリディに相談しなければならない。


 話がないのならば疲れたので部屋に戻りたい。そんな視線を向けたのだが、クラウディオはまだ話があると目の前に立ちはだかる。


「ダンスがあります」

「は?」

「王のパーティですので、ダンスを踊らなければなりません。練習が必要でしょう」


 まさかのダンス練習で、フィオナは口が開きっぱなしになった。

 ダンスの練習は何度かしたことがある。ただ、パーティで踊ったことは一度しかない。領主の息子に頼まれて相手をしたが、それだけで疲労困憊だった。

 セレスティーヌの体力なら問題なさそうだが、フィオナがしっかり踊れるかは不安がある。


「足を怪我する予定ですので、ダンスは踊れません」

「————なっ、なぜ、そうなるのですか!?」


 むしろなぜ怒った風に驚くのか。クラウディオはセレスティーヌに関わりたくないはずだ。足を怪我すれば事なきを得るだろうに。クラウディオはダンスを踊る必要性を説いた。


「王の前ですから、私たちがダンスを踊るのは当然ですし、あなたのご両親もいらっしゃるでしょう」

「では、欠席しましょう!」

「え、な、なにを言って」


 セレスティーヌの両親のことなど頭から抜けていた。


 クラウディオならばそこまで接点を持たずに過ごせるが、両親となれば話が違う。会えば長く話すだろうし、話せば間違いなくおかしいと思われるだろう。それに、公爵に借金を背負わせ娘を嫁がせるような父親だ。他の面倒を持ち込まれても困る。


「私はその日体調を崩しますので、お一人で出席なさってください。ダンスも練習する必要はありませんね」

「なぜ、そんなことを」


 クラウディオはどうにも理解できないと顔を歪める。その顔をされる方がフィオナには理解ができなかった。クラウディオはセレスティーヌが参加しない方が良いのではないのか?


「あなたが楽しみにしていたパーティです」

「ですが、旦那様は興味ないのでしょう。なら、それで良いのでは?」

「————去年のことを、根に持っておいでで?」

「根に持つようなことをなさったんですか?」


 フィオナが問うと、クラウディオはぐっと口を閉じた。思い当たることがあるらしい。クラウディオはフィオナに食いつくのをやめて視線を床に下ろすと、黙りこくってしまった。


 罪悪感があるからセレスティーヌを誘ったようだ。優しいというべきなのか、迷うところである。


(その中途半端な優しさのせいで、セレスティーヌがいつまでもしつこく付きまとうような気もするのだけれど)


 セレスティーヌはクラウディオのどこが良かったのだろう。

 確かに顔は良いだろうし、セレスティーヌに散々迷惑を掛けられながら優しさを見せるのだから、そこに惹かれたのかもしれない。しかし、セレスティーヌがすがるのもそれが原因のような気もする。

 フィオナは、セレスティーヌの気持ちに共感できないが。


「分かりました。出席はしますが、別行動をしましょう。念の為ダンスの練習はしておきますが、踊らないことを祈っています。もう、私には構わないで結構ですので」


 セレスティーヌには悪いが、これくらい言っておけばクラウディオも変に罪悪感を持ったりしないだろう。


 セレスティーヌの行動に振り回されて苦労したのだし、ここはもう興味がなくなったとアピールすればクラウディオも肩の荷が下りるはずだ。セレスティーヌが元に戻れば、彼女が少し苦労するかもしれないが、セレスティーヌも今までの行動を冷静に鑑みるべきだろう。


 部屋に戻ろうと踵を返すと、クラウディオはどこか暗い表情をフィオナに向けていた。

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