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目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです  作者: MIRICO


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12② ー疑問ー

 庭園でアロイスとセレスティーヌが花を見ているようだ。


 アロイスが座り込むと、セレスティーヌも一緒に座り込んだ。

 リディが日に当たりすぎないように日傘をかざす。セレスティーヌの姿が隠れると、クラウディオが眉根を顰めた。


「なにをしているか、分からないな」

「花を見ているだけだと思いますが」


 本当にそうだろうか。クラウディオが見ていないところで、アロイスになにかをしていないだろうか。そんなことを言いたそうな顔をする。

 そうして、クラウディオはかぶりを振った。最近のセレスティーヌからはその心配をする必要はないだろうと思っているのではなかろうか。


 動揺しているのがよく分かって、モーリスは苦笑いをしそうになる。主人の混乱ぶりは大きいようだ。


「彼女が、なにか企んでいる様子はないのか?」

「そこまでのことは」

「それに最近買い物にも行っていないようだが。店の者も呼んでいないな」

「それは、そうですね」


 セレスティーヌはよくドレスや装飾品を購入していた。その度、クラウディオに朝食で見せびらかすようにして着飾ってきていたのだが、朝食がなくなったので購入もしていなさそうだ。


「狩りの前も買い物をしなかったな」


 催しの前は気合を入れることが多い。それなのに今回それがなかった。ドレスが汚れても気にしなかったこともおかしいが、その前に着飾る真似をしなかった。


 確かにおかしいかもしれない。

 クラウディオにアピールするのを諦めたのだろうか。


「そういえば、ここのところアクセサリーを着けていない気がする。いつも見ないようにしていたので思い出すこともなかったが、場違いな装飾品を着けていなかった。まさか、病気ではないだろうな?」

「それも、ないと思いますが」


 倒れたあと、体調が悪いとは聞いていない。アロイスの相手もしているので、不調ではないだろう。

 なにか理由がないと落ち着かないのか、クラウディオは座ったり立ち上がったりし、再び窓の外を見遣った。庭園からはセレスティーヌの声が届く。数の数え方を教えているのか、セレスティーヌが歌うように数を数えていた。


「おはなが、いーち」

「いーち」

「おはなが、にーい」

「にーい」


 アロイスは楽しいのかセレスティーヌの真似をしている。セレスティーヌはアロイスの髪に花を挿して、それで数を教えているようだ。


「まるで教師だな」

「アロイス坊ちゃんのおかげで、変わったと思うのが妥当かと。お菓子などもアロイス坊ちゃんのために作っているようですし」


 そのせいかポールもよく珍しい菓子を作るようになった。お茶の時に少しだけ甘みのある焼き菓子を作るようになり、クラウディオに出すこともある。クラウディオは甘いものは好まないが、それが舌に馴染んだのか口にする回数が増えた。

 セレスティーヌが厨房に入り浸っているため触発でもされているのか、モーリスは不思議に思う。


「とにかく、セレスティーヌがなにかするようならば、すぐに私に知らせてくれ」


 もちろん、セレスティーヌがそんな真似をするのならば、すぐにクラウディオに知らせるが、クラウディオが気にしているのは別のことではなかろうか。


 今までセレスティーヌがなにをしようとも顔を逸らすことで否定を表し無視していたのに、今はちらちらとセレスティーヌを見遣っている。結婚する前からセレスティーヌに翻弄されてきたが、ここ最近は別の意味で翻弄されているように見えた。


「静けさが企みでないことを確認しなければ。頼んだぞ」

「……承知しました」

「そういえば、そろそろパーティの時期だな……。ドレスはどうするのだろう」


 クラウディオの小さな呟きが耳に届いたが、モーリスに問うたわけではないようだ。


(立場が逆転したようだな……)


 それは口にせず、クラウディオがセレスティーヌを見守るように見つめているのを見て、モーリスは苦笑しそうになった。

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