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目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです  作者: MIRICO


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10① ー狩猟大会ー

 フィオナは書庫の魔法書を何冊か調べたが、まだ同じものは見付かっていない。そもそもフィオナが知っているような強力な魔法が載っている本は一切なかった。

 セレスティーヌはなにを参考にしてあの魔法陣を描いたのか。


 この人に聞けば簡単に分かるだろうか。


 クラウディオの隣でフィオナはため息を我慢する。夫婦としてクラウディオがセレスティーヌにエスコートをするのは当然か、馬車から降りる時に無表情で急に手を出されて、一瞬戸惑ってしまった。


 本日は招待を受けて、狩猟大会に夫婦で参加である。


 嫌がっている人の腕を取るとか、拷問である。嫌ならば離れて歩けばいいのにと思うのだが、仲が悪くとも世間体を考えて行動を共にしなければならないと考えているらしい。

 もうほんのり腕に触れる程度にして、フィオナはクラウディオに付き添うように歩いた。周囲の視線が集まる中、時折クスクスと嘲笑う声が聞こえて、なおさら胃がきゅっと締まるのを感じる。


 周囲は不仲を知っているのだ。世間体などと言いながら、周知されていることにフィオナは笑いそうになった。

 多くの縛りがある貴族の結婚はただの茶番劇だ。

 それを強要したセレスティーヌは、あまりに滑稽なのである。


「それでは、行って参ります」

「いってらっしゃいませ。お気を付けて」

「……はい、では」


 クラウディオは一瞬なにかを言いたげにしたが、その場を離れた。


(なにかおかしなことを言ったかしら?)


 とりあえず手を振ってみてクラウディオを見送る。


 男性は狩りの用意が必要なので、一旦女性から離れていく。各々声を掛けて男性を見送るが、皆が一様に女性からお守りのような物を渡されていた。

 無事に戻るようにと願いを込めたお守りだが、セレスティーヌは行わないでいいだろうとリディが言っていたので、フィオナはなにも用意しなかった。それでいいと思ったのだが、クラウディオは拍子抜けしたような顔をしていた。


(毎回、イヤイヤ受け取ってたんじゃないの?)


 セレスティーヌがお守りを用意していなかったことに驚いているようだった。

 いざないと分かればあの顔をするのだから、なんだかな。と呆れてしまう。


 セレスティーヌの贈り物をクラウディオは儀礼的に受け取っていた。周囲はそれが分かるので、嘲笑していたそうだ。その姿を見るのが忍びないという、リディの感想はもっともである。


 クラウディオが離れると、女性たちの視線と笑い声が一層増えた。

 友人がいないというのは本当のことのようだ。誰も近付くことがなく、ただ笑い声が耳に届く。


(寂しい人だったのね。人のこと言えないけれども)


 フィオナは体調が悪くなりやすく、近所の子たちと一緒に遊ぶこともなかった。小さな領土なので年の近い女の子も少なく、出掛けても体調が悪くなるので敬遠されていた。

 家にいるか森に行くか、頑張って行けて孤児院。フィオナの行動範囲はその程度だ。


 セレスティーヌは人の多い集まりに行くと、意気消沈して帰ってくることが多かった。クラウディオと一緒にいる時は良いが、一人での参加となると途端に居場所がなくなる。

 茶会に呼ばれることもあったそうだが、大抵青い顔をして帰ってくるのだ。


 クラウディオに対して悪びれているわけではないのならば、もっと胸を張って堂々としていればいいのに。


 フィオナは空いている椅子に座り、のんびりと狩りの用意をする者たちを見遣った。


(随分人が多いのね。今日のお誘いは別の公爵家って話だったけれど)


 挨拶は二人で行うべきなのだろうが、馬車に乗る前にクラウディオからこちらで行うから待っているだけでいいと釘を刺された。余程自分の妻を挨拶の場に連れていきたくないらしい。


(参加はさせて挨拶なしとか、セレスティーヌは外で何をしちゃったのかしら)


 間違いなく、おかしなことをしたのだろう。クラウディオの釘の刺し方は尋常ではなかった。冷眼を向けられて半ば脅すような雰囲気だった。

 リディも言うことを聞くようにと目配せしてきたので、おそらくその別の公爵家に何かしたのだ。


(はいはい。大人しくしてますよ。今日は本を持ってきたしね)


 暇になったら本を読んでいいと許可は得ている。


 狩りには犬も連れていくようで、数匹の真っ黒で筋肉質な犬がリードを付けてうろついていた。よく見ると凛々しい犬もいれば可愛らしい犬もいて、つい視線を向けてしまう。

 狩り用の馬の鞍などの装飾は凝っていて豪華だ。フィオナは興味津々で見つめた。


 しかし、リディが出してくれる紅茶を飲んでゆったりそれらを見学できるかと思ったが、声を掛けてくる者がいた。


「公爵夫人、お久し振りです」


 声を掛けてきたのは長い茶色髪を一つに結んだ細目の男だったが、瞳の色にフィオナはドキリとした。真っ赤なルビーのような色をした、珍しい瞳だったからだ。


 男はかしこまっておじぎをしてきたが、余裕のある態度に見える。

 セレスティーヌを馬鹿にしに来たのだろうか、判断しかねた。


「お久し振りです」


 とりあえず同じ言葉で返すと、男性はうっすらと笑った。あまり良い感じはしない。


「お教えした方法は、行わなかったのですか?」

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