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森の匂い 〜月の乙女の謎と、逆魔術の呪い〜  作者: 静寂
第11章 魔法円
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魔法円2

 魔法円を覗くのは、大魔女と、森の魔女の都合上、午後からと連絡があった実季子は、部屋でマッタリと本を読んでいた。

 王都の城の蔵書も凄まじい数だったけれど、ここも負けず劣らず、沢山の本があった。

 折角だからウピロスのことについて書かれてある本を読もうと、この土地の歴史や産業についての本と、昔から語り継がれている物語の本を数冊借りてきて、窓辺に座って歴史の本を広げていた。

 コンコンと、やけに世話しなさげなノックの音が聞こえて、ソフィアが応対のために扉に身体を向けると同時に、バーンと扉を開けてアルカスが入ってきた。

「ミキコ!」

 しかし、そう言ったっきり、彼はそこから動こうとしない。

 いきなり部屋に入られることには慣れてしまった実季子が、入ってこようとしないアルカスを不思議そうに見ながら、首をかしげる。

「アルカス?」

 自分の名前を呼ばれた途端、金縛りが解けたかのように大股で実季子の所まで歩いてきたアルカスは、実季子を抱き上げるとぎゅうっと抱きしめて、首筋に顔を埋めた。

 深い森の香りが実季子の身体を包みこむ。

「アル……苦しい。もうちょっと緩めて」

「ミキコ、森の魔女から聞いた。

 ミキコが、元の世界に帰れる可能性があると。

 しかし、ミキコに魔法円で元の世界の様子を見たら、此方に来たときの衣服を一式燃やしてくれと言われたと」

 抱きしめていた腕を緩め、そっと実季子を降ろすと、実季子の手を握り、跪いた。

「そんな辛い決断を、ミキコ一人にさせていた私を許して欲しい。

 そして、今この時より、どんなことも私と分かち合う事を約束して欲しい」

 握っていた手を裏返し、手の平に恭しくキスをする。


 まるで、結婚式の誓いの言葉みたい。


 ボンヤリそう思うと、途端に恥ずかしくなってきて、頬が熱くなる。

 赤い顔で、ポーッとアルカスを見ていた実季子に、アルカスがもう一度乞うた。

「ミキコ、返事は?」

 いつも、相手を声だけでひれ伏せる事が出来るような、重く低い声なのに、この時は小さく弱い声に聞こえた。

「はい、アルカス。分かりました」

 アルカスに握られていない方の手を、頬に当てながら、実季子は返事をする。

「ミキコ、魔法円で元の世界を見るのに、私も一緒に行っても良いか?

 そなたの世界を見てみたいのだ。

 それと、魔法円で見た後も、此方に来たときの衣類を燃してしまうのは禁止だ」

 驚いた実季子は、アルカスの顔をじっと見た。

 アルカスは、実季子に優しく微笑みかける。

「まだ、先の人生は長いのだ。

 これから先、どんなことが起こるか分からない。

 勿論、私は実季子を大切にし、元の世界に戻りたいなどと思わせないように幸せにすると誓う。

 しかし、この先に何が待ち受けるか分からないのも事実だ。

 御守り代わりに持っていても、別に邪魔にはならぬよ」

 まるで、小さい子供に言い聞かせるように、優しい声色で実季子に言ったアルカスは、けれどそれ以上は反論を聞かぬとばかりに、昼食を食べに行こうと話題を変えて実季子を食堂にエスコートした。

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