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森の匂い 〜月の乙女の謎と、逆魔術の呪い〜  作者: 静寂
第9章 戦の始まり
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ペラスギア陣営3

 ソフィアは、アルカスが手配した医師によって体力も回復し、普通に動けるようになっていた。

 そもそも人狼族は、基礎体力に加えて、治癒能力も高いのだが、今回は実季子を連れての旅だったため、備えていた薬の種類も豊富で、その薬を使っての初期の治療が功を奏したようだ。


 途中で合流してきたソフィアの姿を見ると、実季子は駆け寄って抱きつくと、大声で泣いた。

 あんまり、わんわん泣いてソフィアにくっ付いて離れようとしないので、出発しようにも馬車が出せない。

 アルカスは仕方なく、そのままソフィア共々抱き上げて、馬車の中に押し込んだ。

 これでやっと出発できる。


 アッティーハーでは、隣領のラキアからプレギアースの兵士が侵入しようとしているようだが、アルカスが先に出発させた先発部隊と、アッティーハーの先住民族である森の民が、土魔術を使って土や石、木を使って擁壁を築いて侵入を阻んでいるという。

 このままアッティーハーに進み、プレギアースを押し返すという意見も出た。

 が、アルカスの体調を考慮して、現在地から近い位置にある、ウピロス領のエケモス・クセナキスの領主館のあるガレーネーの街で集まり、体制を整えつつ、作戦を練ると言う方針に変更されたのだ。

 現在地は、アッティーハーのテト地域と言う山間の丘陵地帯にいるが、アルカスを休ませるためと、実季子やソフィアもいるので馬車で移動して、ガレーネーまではおよそ1日ほどだからと言う理由からだ。

 山道で、道が悪いため途中かなり揺れるが許して欲しいと、アピテから説明があった。

 確かに途中ガタガタと馬車は揺れまくったが、そう辛くもなかった。

 アルカスが実季子をずっと膝の上に乗せて、抱いていたからだ。

「ミキコ、大丈夫か?揺れるから、私に掴まっていろ」

「あ……うん。ありがとう……大丈夫だよ」

 真っ赤になって俯く実季子を、大事そうに抱えて、包むように腕を回したアルカスを、ソフィアは呆れたように眺めた。


 ソフィアはコホンと、小さく咳払いをすると、実季子を見て目を細めた。

「兎に角、ミキコさまがご無事に戻られて、良う御座いました。

 私がついていながら、あのプレギアースの逆魔術師なぞにミキコさまを奪われたときは、どうしたものかと身が縮む思いが致しましたが。

 陛下とも無事に会えて、聞けば、狂狼と化した陛下の狂狼化をミキコさまが解いてくださったとか。

 我らが陛下をお救いくださり、心より感謝いたします。」

 ソフィアは、目元を拭いながら実季子に頭を下げた。

「いや、いや、そんな……

 私の方こそ、あの時ソフィアに守られるばっかりで、何も出来なかったのをずっと悔やんでいるの。

 結果的に、怪我をしているソフィアを置いて、捕まってしまったし……。

 ソフィアが、あのままだったらどうしようって、ずっと思ってて」

 アルカスの膝の上で体をソフィアの方に向き直し、涙目の実季子はソフィアの手を握る。

 そんな実季子を悠然とみていたアルカスは、自分の胸に実季子を抱き寄せると、ゆったりと笑った。

「ミキコを攫ったプレギアースの者どもは、どうもタブラの城からつけていたらしい。

 ソフィアも元気になったし、もう、いつまでも泣くな?

 それよりも、ミキコは無事戻ってきたし、月の乙女となったミキコの姿は、美しかったぞ」

「まぁ!それは、是非、見とう御座いました」

 ソフィアにも言われて、実季子は赤くなった。

 こうしてアルカスが実季子を構っているうちに、一行はウピロス領ガレーネーの街に到着したのだ。

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