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森の匂い 〜月の乙女の謎と、逆魔術の呪い〜  作者: 静寂
第9章 戦の始まり
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拉致1

流血シーンがあります。

苦手な方は、ブラウザバックでお願いします。

 タブラからアルカスが現在いるスタラまで、馬車で凡そ2日程度。

 しかし、その間にも行軍は止まらないので、実季子達はタブラ軍を追いかける事になる。

 シメオンからは、4日もあれば追いつけるはずだと言われた。

 馬車には、ソフィアが一緒に乗り込み、護衛にはスーパー ブレ エクリプス ムーンの日に泉まで護衛してくれていたニカノルと、もう1人の騎士がついてくれた。

 タブラの領地内は平地が多く、なだらかな道が続いているため馬車に乗っているのも、さして苦痛ではなかった。

 1日目は、宿を取ってたっぷりの湯を使うことも出来たし、快適な部屋のベットで眠ることも出来た。

 2日目の夜も、騎士達が天幕を張ってくれた。

 寒くないように、暖気を発する魔石を四方に置いてくれたので、天幕の中も暖かい。

 明日の午前中にはスタラの街に着くようだ。

 アルカス達の行軍はすでにスタラの街を出発しているそうだが、シメオンからの伝書では数人の護衛を残してくれているそうで、彼らと合流してその先を目指す事になっている。

 あと数日でアルカスに会えるのかと思ったら、実季子は浮き足立つような気持ちになった。


 早くアルカスに会いたい

 体調がすぐれないと言ってたけど、大丈夫かな?


 狂狼化のせいで調子が悪いんじゃなくても、いつもこの帝国のために働きすぎで、プレギアースとの戦いを前に、かなりの重圧があるはずだ。

 少しでも彼を癒せる力が自分にあるのなら、出来る限り力になりたい。

 そんなことを考えながら、ソフィアと共に天幕をでた。

 湯浴みの準備を一緒にするためだ。

 ソフィアは、1人で出来るからと遠慮したが、そもそもこの旅は、実季子の我儘でみんなを付き合わせているのだ。

 実季子が出来ることは、少しでもしたい。


 外は、夜の帳が降りたばかりで、西の空には、まだほんの少し太陽がカケラを残して、薄淡いピンク色が消えかかろうとしている。

 淡いピンク色が消えかかるのを眺めながら、荷馬車に向かう。

 荷馬車の手前の大きな木のところまで来た時だ。

 夜の闇が作った木の影から、何かが覗いているような気がしたけれど、何もいない。

 なんだか背筋がゾクリとして、足早に通り過ぎようとした。


 突如、数人の男が目の前に現れた。

 一人は深くフードを被っていて顔が見えない。

 その男が発した声なのか?実季子の耳にねじ曲がってギシギシと軋むような声音が聞こえた。

「ホィスイ トプナシピエ」

 薄暗い中、ユラユラ揺れる力が二人と男達の周りを取り囲む。

「お前達、何者です?誰か!誰か!!」

 ソフィアは、実季子を守るために一歩前に出て大きな声を張り上げる。

 しかし、声は辺りに響くどころか、何かに吸い込まれるように消えていく。

 明らかに、様子がおかしい。

 何か術を使われたのは、明確だろう。

「グルルルルルルルルル……」

 ソフィアは喉から唸り声をあげると、みるみるうちに耳と尻尾が出て狼に変化した。

 緑の目がキツく相手を睨みつけ、グレーの毛並みの中に茶色が混じった体は今にも相手に飛びかかろうと身構えている。

 次の瞬間、後ろ足で地面を蹴り、狼はフードの男に向かって飛びかかった。

 大きく牙を剥き出した赤い口を開けて、男の首に食いかかろうと、大きな体が影を落とした時だった。

「マスアディモ」

 またしても男の口から、軋むような声が発せられると、ソフィアは雷にでも打たれたように体が痺れて動けなくなってしまった。

 空中で体が動かなくなり、そのまま地面に落下してしまう。

「ソフィア!」

 実季子が、ソフィアに向かって走り寄ってこようとする。

 “ミキコさま!来てはいけない……“ソフィアは痺れる体を無理やり起こして、もう一度男に向かって行こうとした。

 ところが、フードの男のそばにいた男が、すかさず腰の剣を抜くとソフィアに斬りかかったのだ。

「ギャヒン!!」

「ソフィア!!」

 切られたソフィアの鳴き声と、実季子の叫び声が重なる。

 辺りには、赤い鮮血が飛び散り地面に這いつくばるソフィアの体の下には血溜まりが出来始める。

「ソフィア!ソフィア!ソフィア!!」

 涙を流しながらソフィアの名前を叫ぶ実季子の耳に、再びあの軋む声が聞こえる。

「アミスィポリ」

 その途端、いきなり全ての音が消え、一瞬で幕を下ろしたかのように周りが真っ暗になり、実季子の意識は暗転した。

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