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森の匂い 〜月の乙女の謎と、逆魔術の呪い〜  作者: 静寂
第9章 戦の始まり
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戦の足音

 年が明けて、タブラでは寒い日も増えた。

 温暖な気候で、比較的冬でも暖かいと言いつつも、夜などは流石に冷え込む。

 その日は、アルカスの執務の合間に呼ばれて、御茶を飲みながら、新しいメニュー開発商品の売り出し方を話していた。

 実季子の誕生日に、城の前庭で天幕を張って行われたお祭り騒ぎの際に、実季子が食べたヤキ麺を、もっと王都で流行らそうと、早速シメオンは実季子に聞き込みをして、次々と料理を作らせている。

 安い材料で、手軽に作れて、更に外でも食べやすい物をドンドン売り出して、経済の活性化を図りたいらしい。

 流石、シメオン。

 ただ疲れただけでは終われないらしい。

 あのお祭りは、実はシメオンが裏で苦労して実現したという話を、何処かから耳にした実季子は、一生懸命シメオンに協力している。

 卵やビネガー、油を使ってマヨネーズらしき物を開発したり、青のりを作ったりした。

 それらは既に商品化されている。

 ヤキ麺も今では、王都で大流行りで、夜のバルでは手軽にガツンと食べることが出来ると、客達がこぞって注文するそうだ。

 そのため、王都の夜の繁華街界隈では、ソースの焼けるいい匂いが漂っているという。

 先日は、小麦粉を使ってお好み焼きをシェフに作って貰った。

 最近の城の食堂には、試作品のお好み焼きや、たこ焼き等が出てくる。

 これが、城勤めの者達には大変好評なのだ。

 ここ数日は、一口で食べられる大きさのベビーカステラや、りんごを飴で包んだりんご飴等も作り始めている。

 と言っても、実季子は料理の腕には余り自信がないので、こんな味だとか、これくらいの大きさだとか、こんな風な食感だとかと言うだけだ。

 製菓部門のパティシエールも参加して、厨房は新しいメニューの創作に燃えているそうだ。

 今日は、お茶菓子にベビーカステラが出ているのを摘まみながら、どの程度の量をどんな容れ物に入れて売るかや、ターゲット層はどんな人達かと言う話をエラトスも交えて話していた。

 エラトスは、ベビーカステラをポイポイ口の中に入れて口を動かしている。


「旨いね、これ。軍の兵士も疲れているときに甘い物食べるから、ターゲット層広いんじゃないの?

ただ、ミキコが言うその容れ物に入ってる位じゃあ全然足らないなぁ……」

「足らなければ、2つでも3つでも買えば良いのです。

我が国の軍に所属している者ならば、好きなだけ買えるほどのお給金を支給しているはずです」

 シメオンにピシャリと言われて、エラトスは、ベビーカステラをポイポイ口に運びながら、ぶつぶつ文句を言っている。

 実季子は、そんな2人の掛け合いが可笑しくて、クスクス笑った。


 と、突如、部屋のドアが乱暴に叩かれた。

 

「入れ」

 アルカスが短く返事をする。

 息を切らせた侍従と共に、城の衛兵が着ている制服とは、違う意匠の制服を着た兵が転がり込むように入ってきた。

「申し上げます!プレギアースが侵攻。我が帝国のラキア領より侵攻!」

「何だと!!!」

 エラトスは、ティーカップをソーサーに叩きつけるように置くと、赤い髪を逆立てて傍らに置いていた長剣を引っ掴んで勢いよく立ち上がった。

「兄上。失礼します」

 一言、アルカスに暇を告げると、扉を蹴り破らんばかりの勢いで開けて、廊下に飛び出して行く。

 直ぐに、副官の名前を呼ぶ、苛立った怒号が聞こえてくる。


「ラキアの北からか?」

 アルカスの問いかけに、知らせに来た兵は、顔色を悪くしながら答えた。

「それが、ハッキリと致しません。気が付いた時には、既に町の中に兵が溢れており、城が囲まれておりました。

 カラノス大公閣下をお捜ししておりますが、私が出立した際にはまだお姿を見つけられておりませんでした。

 町中には、逆魔術師と思われるローブ姿の者が何人も見受けられ、町人は、逃げ惑っております」

「カラノス叔父が……。では、今は誰がラキアの指揮を執っている?」

「今は、暫定的にコロニスさまが指揮を執っておられます」

「……そうか。ご苦労だった。ゆっくり休め。

 誰か、部屋の用意を。それと、湯と食事を用意してやれ」

 静かに命じると、目を閉じ何かを考え込んでいる。

 侍従はすぐに、諸々の手配をするように、知らせに来た者を伴って、出て行った。

 

 実季子は、一言も発せずに黙って身を固くしている。

 こんな時に、何を言って良いのか、どう振る舞えば良いのかなんて分からない。

 実季子の育った世界は、常に平和で、もしも戦がおこったら……何て想像さえ微塵もしなくて良い環境だったのだ。


「シメオン、主だった閣僚を集めよ。直ちに対プレギアース戦の対策を立てるぞ。

 エラトスに、情報を集めて半刻後には協議の間に参れと伝えよ。

 アピテを呼べ。

 ミキコ、アピテと共に部屋に戻るのだ」

「はい、陛下」

 青い顔をしたミキコは、アルカスに1つ礼をすると、扉の所に控えていたアピテと共に部屋に下がった。


やっと、ここまでやってきました。

お読み頂きまして、有難うございます。


暗い内容ですみません。

暫く、こんな感じで進みますがお付き合いください。

また、評価を頂ければ、大変嬉しいです。

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