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森の匂い 〜月の乙女の謎と、逆魔術の呪い〜  作者: 静寂
第8章 スーパームーン
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アルカスの誕生日1

 ペロポソからの帰り、馬車の中でひたすら実季子は眠っていた。

 多少は揺れるが、クッションを沢山詰め込み、ブランケットを掛けて貰うと、あっという間に目蓋が重くなり、次に気が付くのは食事の時間。

 どうにか口に食べ物を運び、暫く皆と休憩をしている間にも、うつらうつらして、近くに来たアルカスに運ばれて馬車の中へ。

そしてまた、移動中もひたすら眠って、気が付くとタブラに着いていた。



 実季子が洞窟から持って帰ってきた大きな黒い石

 -何かの結晶のような-

 は、マダム・マリナの懇意にしている宝石工房に持ち込まれて鑑定されている。

 本日、その石を持ってマリナが実季子を訪ねてきた。

「お久しぶりで御座います。ミキコさま。

 ご機嫌麗しゅうお過ごしでいらっしゃいますか?

 本日は、先日お預かりした石をお持ちいたしました」

「ご機嫌よう。マダム・マリナ。

 わざわざいらしてくださって、ありがとう御座います」

 お互いに挨拶をして、テーブルにつくと、ソフィアがペロポソのお土産のクリマ

 -葡萄っぽい果物-

 のドライフルーツが入ったアイスティーを入れてくれた。

「おいしいー」

「本当で御座いますね。果物の良い香りが致します。

 ミキコさま、旅にお出掛けだったとか?」

「え?そう、そうなの。ペロポソの方に」

 なぜ、実季子が旅に出ていたのをマダム・マリナが知っているのか、ギョッとしたが、旅の目的は言えずとも、旅に出たことは隠さなくても良いはず。素直に、答えた。

 すると、ソフィアが控えていた侍女達に下がるように指示を出し、部屋のドアを閉める。

 あれれ?と思ってソフィアを見ていると、ソフィアが口元に微笑みを浮かべた。

「ミキコさま、マダム・マリナには、隠さずに話しても大丈夫なのですよ。

彼女は、帝国の諜報員ですから。」

「チョーホーイン?……諜報員?スパイってこと?

 えー!マリナさん……。スパイだったの?」

大きな声を上げそうになって、慌てて小声で話す。

「うふふ。そうなんですのよ。ウチは、仕立屋だから貴族の方達が出入りされるでしょう? 

 だからね?

 後、宝飾品や装飾品も、扱っておりますから、それに関連して入ってくる情報もありますのよ」

 そう言ってホホホと、上品に笑った彼女は心なしか悪く見えた。

「マダム・マリナは、国内の諜報を主としております。国外の諜報員はまた別におります」

 ソフィアが、補足してくれる。

「で、ミキコさまはこの石をペロポソのヴロヒ湖近くの洞窟で見つけられたんですね?」

「そうです。あっ!大丈夫です。持ち帰って良いかのお許しは、キプス大公に頂いてます」

 実季子の言葉を聞いて、マリナは、ホッとしたようだった。

「それならば、結構で御座います。幾ら洞窟で拾ったとは言え、他領の資源ですので気になっておりましたの」

 マリナは言いながら、実季子の顔を覗き込む。

「なぜ、そんなに気にするかというと……この石、ブラックダイヤモンドで御座いますわ」


 ブラックダイヤモンド?

 へぇーーー

 ダイヤモンドって、色んな色があるけど、ブラックもあるんだ


 そう思っていると、マリナが更に説明してくれる。

「ミキコさま。ブラックは大変希少な鉱物で、ダイヤモンドを人工的に加工して色を付けている物は市場にも出回っておりますが、天然のこのように大きな物は、先ず産出されませんの。

 周りの不純物を取り除いて見ないことには分かりませんが、かなりな大きさになると思われますわ」

 それを聞いて、実季子は、ポカーンとなってしまった。

「あの……実は、もうソロソロアルカスのお誕生日なの。

 だから、その石を加工して貰って、首飾りが出来ないかなと思ってて。

 でも、そんなに貴重な石だと無理なのかな?」

 もう直ぐ、238日だ。

 -ペラスギアは、1年間をただ日にちで数えるだけなので、慣れない実季子には、頭がこんがらがりそうになる-

 アルカスの誕生日に、何かあげたいと思っていた実季子は、組紐でネックレスを作ったら如何だろうと思っていたのだ。

 -因みに、実季子の誕生日は、ペラスギア式で行くと295日だ-

 しかし、マリナの話を聞いてションボリしてしまった。

 ところが、

「まぁ!ステキで御座います。何と良いお考えでしょう。お任せ下さい。

 勿論、このマリナ、協力させて頂きますわ」

 マリナは立ち上がって、手を前に組んで目を燦めかせた。

「で、どのようなデザインになさるかお決まりですか?」

 腰を折って実季子の顔を覗き込んでくる。


 近い、近い

 相変わらず、仕草が大袈裟だな……


 そう思って、苦笑いが零れる。

「石を通す組紐は、自分で編もうと思ってるの。昔、お友達とブレスレットを編んだことがあるから、出来るはず。

 銀色と、青色の編み糸で編んだ組紐に、雫形の石を通そうと思ってて、持って帰ってきた石をお月様みたいに丸くしたいの。

 その…、お金はちょっとはあるから、出来たらその範囲でお願いしたいんだけど、幾らくらいかかる物なのかな?」

 実季子は、クレオン達技術師の手伝いをすることによって、対価として賃金を得ているのだ。

 マリナは、了承したように一つ頷く。

「畏まりました。金額の相談は後ほど致しましょう。

 ミキコさまのご予算もお聞かせください」

 マリナにそう言われて、ホッとした。

「それと、相談なんだけど、どの程度の大きさが良いかしら?

 余り大きいと重いし、小さいとアルカスは体が大きいから、バランスが悪いかなと思うし」

 実季子は、そう言いながら、紙にデザインを描いて見せた。

 ソフィアも一緒になって、組紐を編む糸は、城下の手芸店から幾つか取り寄せましょうとか、石は折角のダイヤモンドだから、カットを入れて輝くようにしましょうとか、女同士で大いに盛り上がった。

 結局、マリナは、2時間ほど滞在し、また石を持って懇意にしている宝石工房に相談してくると言う。

 帰り際に彼女は、

「因みに、陛下にはこのことは?」

と聞いてきた。

「勿論、内緒です!」

 それを聞くと、マリナはニンマリ笑って挨拶をすると部屋を出て行った。

 ソフィアも、嬉しそうに早速、糸の手配をしますと言ってくれた。

始まりました。新章です。

またしても、まったりとお話は、展開してまいります。

よろしくお付き合いくださいませ。


また、評価や感想など頂けますと嬉しいです。

よろしくお願いします。

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