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森の匂い 〜月の乙女の謎と、逆魔術の呪い〜  作者: 静寂
第5章 建国祭
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晩餐会1

 タブラにある城は、中央に美しい尖塔のある本塔と、本塔を守るように4つの巨大な円形の塔を配し数多の部屋とそのまえを通る直線の廊下で塔と塔を繋いでいる。

 また、塔の上階に上がるには見事な螺旋階段が配され、設えられた窓からは、庭や奥の森が見える。

 広大な前庭では、戦の時には兵士達が整列し、戦地に赴くための式が行われたり、急ごしらえの救護所が設置されたりもする。

 城の後ろは、使用人棟や厩舎などがあり、前庭も含めた城全体を堀が囲っている。

 堀の外側を城壁がぐるりと覆っており、城の南側には広大な森が広がる。

 この森には、魔術師達が魔術を込めた侵入対策を施された樹木が等間隔で植えられており、登録をしている者以外は入れないようになっている。

 その広大な城の城門を出ると、なだらかな道が城下に続いており、建国祭が始まった城下では、肉やパン、お菓子などの屋台が出て賑わっていた。

 また、異国から来た商人がテントを張りその下では、色鮮やかな布地や雑貨やアクセサリー、酒などが売られ、噴水広場では大道芸人や道化師が、芸を披露しているという。


 良いなぁ……行ってみたい


 と思ったが、とてもじゃないが言える雰囲気ではなかった。


 ソフィアによって、朝から、風呂に入れられて、磨かれ

 -自分で洗うと必死で抵抗したが無理だったー

 頭から足の先までマッサージされ、香油を塗られた時点でヘロヘロになった実季子は、やっとお茶を入れて貰い一息ついた。

 

 エンパイアラインのドレスは、横に浅くカットしたボートネックデザインで、露出が控えめで上品な印象を与える。

 また、上半身にシルバーと、燻したようなゴールドの糸で、薔薇の花と蔦が刺繍されていて、実季子はアルカスと出掛けた城下のレストランの前庭の風景を思い出した。

 腰から切り替えたスカート部分は、内から外に向けてシルバーグレーの薄く、透け感のあるオーガンジーの生地を何枚も重ねて奥行きのあるグラデーションになるように仕立てられており、実季子が動くと纏う空気が揺れているように見える。

 柔らかい空気感を感じさせるシルバーグレーのドレスは、実季子の象牙色の肌をさらに上品に演出しているように見えた。

 ソフィアが、実季子の黒髪を美しく結い上げている間に、メイクの得意な侍女が実季子にメイクを施す。

 全てが終わった頃、部屋の扉がノックされてアルカスが実季子を迎えにきた。


「ミキコ………その、とても似合っている」

 小さく息をついたアルカスは、ボソリと褒め言葉を口にする。

「陛下も素敵です。とても似合っておられます」

 白のウエストコートを着て、ジュストコールと呼ばれる上着は、黒にシルバーグレーの糸で蔦の刺繍がされている。

 ブリーチズも同じく黒で統一され、首元にはクラバットが巻かれ、シルバーのピンで留められていた。

 そして、胸ポケットにはシルバーグレーのオーガンジーがポケットチーフにして差し込まれている。

 実季子をエスコートするのはアルカスだと、控えめに主張しているかのようだ。



 アルカスが実季子をエスコートすると、城の晩餐室にはエラトスと4大公と呼ばれる5人の男達が居た。


 あれれ?

 5人だけ?他には?


 壁際にシメオンは控えているが、席は全部で7席。

 こう言う場ってもっと沢山のキラキラしい人達がいて、実季子なんてテーブルの末席の隅の方に座らされるんだと安心していたのだ。

 ところが、部屋にはアルカスが迎えに来て、そのままエスコートされるし、何だか圧の強い男達に、入った途端視線を向けられて、かなり及び腰になってしまう。


 イカン、イカン

 マナーの講師には常に背を伸ばし、堂々とするようにと言われていたのに


 そう思い出した実季子は、背筋を正す。

 アルカスに手を取られて、席にエスコートされる。

 そして、驚いたことにアルカスは、実季子の隣に立ったのだ。

 今度は、ギョッとした。


 皇帝陛下の隣?なぜ?

 確かに、私は表向き陛下の客人と言うことになっているけど、本来ならば、皇帝陛下の隣の席って、陛下のお妃様か、若しくは王位継承者第一位の人の立ち位置では?


 マナーなどの勉強を始めてまだ日の浅い実季子は頭の中で懸命に考えた。

 建国祭までの間、マナーに歴史に、ダンスに、貴族の勉強と、詰め込むだけ詰め込まれて、常に実季子の頭の中はカオス状態で、肝心の晩餐会や舞踏会の内容についてきちんと確認していなかった。

 というか、自分など、隅の方でチンマリと大人しくしておけば、そう目だつこともないだろうし、程々時間がたてば解放されるだろうと安易に考えていたのだ。

 勉強はあくまで、何かの時の保険だろうとしか思っていなかった。

 シメオンが、次々と詰め込んできたのには理由があったのだ。

 壁際に控えているシメオンをジロリと見たが、彼は涼しい顔で立っている。

 内容をちゃんと確認しておかなかった自分に、心底腹がたった。

 が、仕方が無い。もう、晩餐会は始まってしまったのだ。

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