推死の当て馬騎士様を守りたい(短編版)
この小説は、とびらの様主催「あらすじだけ企画」の寄稿作です。
ヒロインをかばって、当て馬の推しが死んだ。
推しのアルネストは完璧な騎士だった。強く優しく誠実。
でも、とにかく不憫キャラで、思えばいつも自己犠牲的な戦い方をしていた。
自分より他人を大事にする人。
彼のような人こそ、生きてちゃんと報われてほしい。
そう嘆いていたら、物語の中に転生した。
騎士学校の、モブ女子生徒として。
時期は原作開始の約一年前。
そして、アルネストは直属の教官。
天国は、ここにあり。
なんとしてもアルネストを守ろう!
しかし、主人公は剣術ど素人。
――と思いきや、アルネストを想うと、膨大な炎の魔力があふれ出た。
信じられないが、萌えが魔法の原動力になっている。
騎士としては反則に近いが、魔法剣だと言い張った。
この国は魔法大国で、軍人もほとんどが魔導師。
騎士は魔法が発展する前の遺物で、慣習的に残存している、美しいだけのお飾り軍人と揶揄されていた。
魔力が弱い者が、仕方なく騎士となるのだと。
アルネストも魔法は使えない。
しかし、その代わり魔法を無効化できる体質で、戦場では頑丈な「盾」として重宝されていた。
主人公と共闘するにも相性が良く、二人はパートナー騎士に。
さらに、上級モンスター撃退の戦績が評価され、二人は王子の近衛騎士となった。
終戦後もモンスターが出現するのは、戦時中に隣国がかけた呪いのせいだと判明する。
隣国は敗戦国。賠償金支払いの条約もすでに締結済みで、「これ以上の責任は負えない、自国の復興で手一杯」と責任逃れ。
呪いはいつどこで発動するかわからず、穏やかではなかった。
話がところどころ原作と違う。
アルネストの死期も予測できなかった。
そして、近衛騎士の任務初日。
遊興目的で城から脱走した王子(原作の正ヒーロー)。
その居所を即座に突き止めたことで、主人公は王子から不審がられる。
言葉巧みに尋問され、ついには転生者だとばれる。
アルネストを生かすために王子も協力すると言うが、代わりに異世界知識を提供しろと迫られた。
それは、本来ヒロインの役目なのに。
主人公と王子の仲が急速に縮まった(ように見える)ことで、アルネストは複雑だった。
ある日、アルネストをかばって主人公が呪いを受ける。
それは、原作でアルネストを死に至らしめた呪い。
アルネストと王子は解呪方法を調べ上げ、無事に呪いを解くが、ここで二人とも主人公に恋愛感情を抱いていることが判明。
主人公には黙ったまま、以後二人は牽制し合うようになる。
やっとヒロインが異世界トリップしてきて、聖女となる。
主人公のある挙動から、同じ異世界人ではとヒロインに見抜かれる。
この際、ヒロインにもすべてを打ち明けた。
ヒロインは主人公の考えに賛同。
そして、原作では救われなかった隣国に行くと決意する。呪いの原因を絶つと。
ヒロインは和平大使として隣国へと渡った。
原作では、最後に大量のモンスターが国を襲う「ワイルドハント」が起こる。
今回もそれは避けられなかった。
決戦前夜、主人公はアルネストに強力な眠剤を飲ませ、出陣できないようにした。
王子の許可も得た。その代わり、生還後には王子との婚姻を約束させられた。
死闘の末、主人公は崖から海に落ちて行方不明に。
助けてくれたのは、若い漁師だった。
一月後、傷が癒えると、漁師から求婚される。
王城には帰りたくない。アルネストにも会わせる顔がない。ここで生きるのが幸せかもしれない。
すると、アルネストが訪ねてくる。激怒している。当然だ。
「あなたは王太子妃になられるお方です」と連行された。
アルネストは主人公を血眼で探していたらしい。
生死不明で手掛かりもなく、絶望し、自分宛ての遺書でも残っていないかと部屋を探したところ、日記を見つけたと。
主人公は青ざめる。それ推し活日記……!
アルネストは主人公にではなく、不甲斐ない自分に一番怒っていた。
彼は主人公に告げる。
「私と逃げて下さい。どこか遠い地で、二人で暮らしましょう」
渾身の求婚だったが、主人公にはまったく伝わらず、馬車は王城に到着してしまう。
アルネストが王子に猛抗議。
分がないと悟った王子は、意外とあっさり引く。
そこで、勢いのまま、もう一度主人公に求婚するアルネスト。
日記のおかげで愛されていると自信が持てたので、強気に出られた。
しかし、断られる。
「結婚なんてとんでもない! 推しへのお触りは厳禁です!」とか、よくわからない理由で。
その後何度も乞われ、結局主人公が根負け。
そして初夜。
アルネストが主人公に触れようとした時。
主人公の脳内に、転生前に愛読していた別の小説の映像が流れ込んでくる。
二番目の推しが死にそう。でも今なら助けてすぐに帰ってこれそうだ。
それを正直にアルネストに話すと、今まで見たこともない凄まじい形相をされて震え上がる。
「二番目、ですよね。なら一番に慕う方がなんとかしてくれるでしょう。だから、もうどこにも行く必要はありませんね?」
優しい推しが、初めて怖かった。




