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オストメニア大戦  作者: 居眠り
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第4話 賢兄賢弟

第4話です。

第4話 賢兄賢弟


 〈ライン家〉

 アンカーは寝ているラートを起こさない様にそっとラート用の部屋に入ってベッドで寝させたが、まぁおそらく翌朝来たらベッドから姿を消し、そこら辺の床に寝転がっているだろう。

 ナースルに上着を預け、2、3の質問に答えていると気持ちの良い足音が聞こえて来る。

 あの足音を立てるのは弟のアンデルだけだ。


「兄上!1ヶ月の航海お疲れ様でした。ささやかですが料理を用意しました。ご夕食がまだでしたら是非召し上がって下さい」


 ビシッと敬礼しつつハキハキと話す彼はアンデル・ド・ライン。

 ライン家三男、アンカーの実弟である。

 歳は17歳とアンカーの9つ下で歳の割に童顔で同年代からはかなり可愛がられているらしい。

 髪はアンカー似のこげ茶、目も黒く、アンカーの若い頃と2人は結構顔が似ていた。

 アンカーはこの弟をとても可愛がっていた。

 弟を可愛いがるのは兄の努めと信じて疑わないアンカーは幼少時に母を失ったアンデルの母親代わりとして軍務に精励しながら一緒に遊んでやったり、自ら武芸などを教えた。

 アンカーに比べ体が弱く、とても軍人にはなれないと本人も思っているが自衛と教養の一環として文武両道に育とうという意志が見られる。

 そんな向上心溢れる弟をアンカーは愛した。

 そしてこの弟もアンカーのことが大好きだった。

 他人の目から見たらブラコンにしか見えなかったがアンデルもアンカーも気にしたことはない。

 なぜなら2人は数少ない信じ合える肉親だからである。


「アンデル、会いたかったぞ!」


 執事次長のナースルの前だろうがお構いなしにハグをする2人。

 それを見てナースルは、なんと仲の良いご兄弟だろう…と微笑んでいた。

 無理もない。

 父親と異母兄があれではアンデルが頼る相手はアンカーと従姉しかないのだから。


「それで料理だって?お前が作ったのか?」


「はい!しかし僕だけじゃありませんよ。ヨルバ姉様が手伝ってくださいました!」


「ヨルバ姉さんが?これはいかん。挨拶せねば…」


「食堂でお待ちです。3人で是非にと」


「ならなおさら急がなくてはな。ナースルさん。上着よろしくお願いします」


「畏まりました。あとでワインをお持ちしますね」


「オレンジジュースも頼む」


 2人はヨルバの待つ食堂へと急いだ。

 ヨルバ・ド・タイラード。

 それが彼女の名である。

 歳は27歳、漆黒の美しい長髪に深緑の瞳を持つ美しい貴婦人だ。

 血的にはアンカーやアンデルの実従姉だが異母兄にとっては全く関わりない女性で、ライン家の本家面々とは仲が悪い。

 逆にアンカーやアンデルといった次男三男の分家とは懇意にしている。

 タイラード家は古くから続く海軍将校の貴族家でライン家と長年交流のある家で、ライン家現当主シヴァリエのもう1人の妹(病死)が嫁ぎ、1人の女の子を授かった。

 それがヨルバである。

 ヨルバの父、アンカーらにとっては義叔父であるマラガ・ド・タイラードは軍人として職務を全うし、第1次オストメニア大戦で壮絶な戦死を遂げた。

 以後ヨルバはライン家に身を寄せ、仲良くしてくれたアンカーらに好意を向けてくれた。


「アンカー、ただいま帰宅しました、ヨルバ姉さん。息災でしたか?」


「お帰りなさいアンカー。私もアンデルも健康そのものですよ」


 少し無理をした様な笑い方だったが彼女が大丈夫と言うのであればこちらが詮索してはいけない。

 ここで話題をアンデルにむけた。


「アンデルの料理の手伝いをして頂いたとか…アンデルは何かやらかしたりしましたか?」


「兄上!僕は失敗してませんよ!」


「大丈夫よアンカー。アンデル、また腕を上げてね。いつか抜かれそうだわ」


 本来、貴族の子女が直接料理をするなど有り得ないのだが幼少期にお菓子作りにハマって以降たびたび厨房に立つことが多くなったそうだ。

 アンデルはそんな従姉の手伝いをするようになった様でめきめきと腕を上げている。


「さぁ、早く召し上がって下さい兄上。ここにいる者は兄上の無事のご帰還を心から喜んでいる者達です」


 見渡すと執事次長のナースルを始めとした数人の執事、メイド。料理長に庭師や家庭教師と様々な者が控えていた。

 それと豪華な食事がたくさん用意されていた。


「皆、ありがとう。ただ俺達だけ食べるのはもったいない。皆で食べよう!」


「えぇ、皆さんお皿を取って下さいな。私が盛り付けますわ」


「えぇ!?い、いや恐れ多いことです…」


「いいんだよ皆。僕たちがそう言ってるんだから。さ、食べようよ!」


「…ではお言葉にに甘えさせて頂きます」


 ナースルが率先してそう言うと他の者も席に着く。

 誕生日席とも言われる端っこの席に座ったアンカーが「頂きます!」と言うと皆口を揃えて復唱した。


「美味い美味い」


 早速アンカーが感想を言い始める。

 癖みたいなものだ。


「兄上!パンと野菜しか食べてないじゃないですか!ほら、この燻製ハム入りのポトフをどうぞ」


「(モグモグ)…ありがとう。(モグモグ)頂こう」


「もう少し落ち着いて食べなさいなアンカー」


「いやぁ航海中はいつ何時なにがあるかわかりませんからね姉さん。急いで食べないといけない時もあるので。実は今回の任務中にこんなことがありまして…」


 ワハハと愉快な笑い声が食堂を満たす。

アンカーは任務中の笑い話を面白おかしく、ヨルバは作った料理を説明しながら全員に配る。

 アンデルは兄や師範らに自分の成長を自慢する。

 到底貴族の家とは思えない雰囲気だったがこれを気に入らない者もいた。

 父、シヴァリエ・ド・ラインである。


最近暑いですね(白目)

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