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オストメニア大戦  作者: 居眠り
30/53

第30話 カーリス海海戦

第30話です。

 第1混成航空艦隊は戦艦や重巡を先頭に、カーリス警戒艦隊目掛けて突進を行った。

 カーリス警戒艦隊指揮官の黒葛原准将はアウトレンジ攻撃を仕掛けてくる第2艦隊所属戦艦アーネスフルト、及び第5艦隊のアルドレッドに怯んだ。


「お、面舵一杯!敵艦隊から離れつつ、雷撃で牽制せよ!奴らは帝国軍が始末してくれる!」


 なんと彼は敵艦隊を目前にして尻尾を巻いて逃げ出したのである。

 それをここぞとばかりにアーネスフルト、アルドレッド両艦は31センチ連装砲の砲門を回頭地点に向け、絶え間ない砲撃を与えた。

 この攻撃により、駆逐艦雪雨、雪原が轟沈。

 旗艦雨崎も艦尾主砲塔大破という損害を被ったが、駆逐艦隊の決死の魚雷攻撃はこの損害を生贄に大いに奮った。


「魚雷4本、正面より接近!」


「取舵10、針路調整!」


「駄目です!以前被雷コース!」


「総員衝撃に備えー…」


 艦長の必死の操艦も虚しく、第5艦隊の軽巡アランが艦首に被雷し航行不能となった。

 さらに同じく第5艦隊所属重巡ダーラルトも右舷魚雷発射管破損による誘爆で煙突が根本からポッキリと折れ、火が甲板上を走り回り、艦内は大混乱に陥ってしまう。

 黒葛原准将の謎の指示は意味をなさなかったが、先陣の勢いを殺せたことは確かであった。


「司令、軽巡アランが航行不能。重巡ダーラルト大破炎上中とのことです」


「…そうか。で、奴らは退いているのか?」


「その様です」


「…チッ」


 アルリエの報告に、眉間にシワを寄せたアンカーは軽巡、重巡に追撃命令及び突破口の形成を命じた。

 続けて戦艦と空母を守る様に駆逐艦を張り巡らせ、対空戦闘を下令した。

 一見冷静に指示を与えるアンカーだったが、ベストロニカにはどこか危うく見える。

 と言うのも、戦闘が始まったら決まってアンカーの肩に纏わりつくラートが主人を威嚇する様な目つきでベストロニカの腕の中にいるのだ。

 人間にはわからない殺気というものだろうか。

 彼女はそんな気がしてならない。


〈スカリー航空隊〉


「第1小隊は先頭の戦艦をやれ。第2小隊から以降は順に主力艦を狙え。王国の奴らに1発食らわしてやれッ!!」


「「了解!」」


 Ge-5戦闘機20機、K-10中型双発爆撃機25機が各々の攻撃位置につき、接近してくる。

 対する第1混成航空艦隊の航空戦力はM-2戦闘機18機。

 陸上機の援護が到着するまでの間は数的不利を対空砲火で補うしかない。

 警戒艦隊が引き剥がした重巡や軽巡の隙を突いたこの一撃は第1混成航空艦隊に痛手を負わせた。

 Ge-5戦闘機の援護のもと、迎撃機隊の網を抜けたK-10中型双発爆撃機隊は魚雷をツヴァレフ、ツヴァレーン、アーネスフルト、アルドレッドの横っ腹目掛けて投下した。


〈空母ツヴァレフ艦橋〉


「右舷より雷跡3。続けて4。来ます!」


「機関、最大戦速。おもーかぁーじ!!」


 ガーゴイラの重い声に合わせて必死に舵を回す操舵士の顔には大粒の汗が溢れている。

 殺気らしきものを放っていたアンカーや幕僚の面々にも緊張が走る。


「3本回避!誤差修正求む。取舵20!被雷まで30秒!」


「取舵20!当てるなよ!」


「ハッ!」


 弾幕音や飛び交う航空機の爆音すら聞こえなくなる様なこの空気に復帰していたエスメールは思わず吐きそうになったが、ぐっと堪える。

 10秒。20秒。30秒。


「回避成功!」


 見張員のその歓声が耳に届いたその時。


 ”グワラシャーン!!!”

 という大音量が各員の鼓膜を打った。

 思わずアンカーが叫ぶ。


「何事だ!?」


 近くの人間ですらアンカーの声が聞こえない音の正体は戦艦アルドレッドに命中した魚雷の爆発音だった。

 巨大な水柱が1本大きく立ち昇り、戦艦の巨体をすっぽり覆い隠してしまっている。


「どうなっとる?!」


 老練なガーゴイラもこれには口を閉じることが出来なかった。

 閉めることが出来たのはその後、水柱から横倒しになったアルドレッドが現れた時だった。


「戦艦、アルドレッドが…」


見張員も報告が出来ないほど衝撃を受けている様だ。

 そして次の瞬間。

 アルドレッドの艦中央部が輝いたかと思えば、彼女は大爆発を起こし、船体を真っ二つに割って轟沈した。


「嘘だろ…!」


 イグロレの喉から絞り出した声は、周囲の者達の気持ちを代弁するに十分だった。

 無理もない。

 戦艦がわずか数十秒で海底に向かったのだから。


「…クソッ」


 アンカー達は一度たりとも航空機を侮ったことは無かったが、この惨状を目の当たりにすると自分達の立てた作戦に甘さがあったと思わずにはいられない。

 わずかに生き残った水兵達が海に飛び込もうとした時、爆風に巻き込まれてぐちゃぐちゃになっていく姿を見てしまっては本当に申し訳なく思う。


 戦争は、人の心を蝕む。

 アンカーもその1人だった。


〈空母ツヴァレーン艦橋〉

 アルドレッドが轟沈する様を目を大きく見開いて見つめていたレッソンは敵国のパイロット達ではなく、艦隊総司令であるアンカーにその怒りをぶつけた。


「あの若造が安全だと言い切った航路を航行していたというのに…!これほどの被害が出ては例え作戦が成功してもジリ貧ではないかッ!」


 机に拳を何度も何度も叩きつけながら憤慨するレッソンは興奮状態であったが、そんな彼の耳は入ってきた不穏な音に機敏に反応した。

 それが燃え盛る友軍戦闘機の音だと理解した時、既にツヴァレーンの艦橋と司令塔はその戦闘機と衝突コース上にあった。


「…ッうぉおお!?」


 制御不能に陥ったM-2戦闘機は艦橋内に航空燃料をばら撒きながらぶつかってきた。

 逃げ出す暇もなく、レッソンと彼の幕僚達は爆炎に包まれていった。


〈空母ツヴァレフ艦橋〉

 ツヴァレフの艦橋要員達は海中に没していく戦艦アルドレッドに視線を奪われていたが、本艦の前方を航行する姉妹艦の炎上には流石に気づいた。


「司令、ツヴァレーンが!」


「艦橋が燃えています!司令塔も!」


「何だと!?」


 駆逐艦の分厚い弾幕をくぐり抜けて投下された魚雷はアルドレッド以外回避したはずだ。

 それに艦橋が炎上中?

 レッソン中将は?

 原因は何だ?

 一度に浮かび上がってくる疑問にパンク寸前になったアンカーだが、落ち着いて発光信号で連絡を取った。

 艦橋にある無線機は使用出来ないことは明白であり、マストもひしゃげてしまっているので信号旗でも連絡が取れない。

 艦内にも無線機があるが早急に事態を把握する為に発光信号を用いることにしたのだ。


【貴艦炎上理由送レ】


 これに対する後部飛行甲板にある信号灯から返信は重かった。


【友軍機激突。負傷者多数。司令行方不明】


「…」


 普段から散々レッソンに嫌われてきたアンカーだったが別に彼のことを嫌悪していたわけではなかったので、レッソンの無事を心から祈った。

 祈るぐらいしか出来ない自身の無力さを歯痒く思いながら、アンカーは自分の仕事に取りかかった。


「…作戦参謀!艦隊被害状況と敵航空隊、友軍航空隊の情報報せ!」


「ハッ!艦隊は空母1、駆逐艦2小破。重巡1、軽巡1大破。戦艦1撃沈であります。それと敵航空隊は引き上げたようです」


 イグロレの指し示す方向には確かにスカリー航空隊の尾翼が見える。


「続きまして、友軍航空隊は時間的にそろそろ…具体的にはあと5分で到着のはずですが…」


 チラッとイグロレに目配せをされた見張員達は慌てて周囲を索敵する。

 その報告が上がる前に、アンカーは最後にもう1つ質問した。


「カーリス艦隊はどうした?逃したのか?」


「いえ。戦艦や重巡の事前砲撃の後、少数の追撃隊が追っています。戦果報告を求めてみます」


 そう言って作戦参謀は通信士に歩み寄って追撃隊との交信作業にかかった。

 まだ見つからない友軍航空隊に焦れているアンカーを嗜めるようにアルリエが話しかけてきた。


「…落ち着きなさいアンカー。あんたはドンと構えてなきゃダメでしょ」


「仕事中だぞ参謀長。それに俺は冷静だ」


「………だと、よろしいのですが」


 アルリエの小言が終わったあたりで無事友軍航空隊が視認された。

 そのまま艦隊防空の任にあたってもらいながら、艦隊は応急処置や消化活動に勤しみつつ、カーリス半島に帰還する針路を取った。

 昼時を過ぎた頃、やっと追撃隊との連絡が取れた。

 大火傷を負いつつも救出されたレッソンの朗報に続いての連絡だった。


「こちら軽巡アムン。敵重巡1、軽巡2、駆逐艦6を撃沈ないし撃破致しました!ですが水上機母艦以下3隻ほど取り逃がしてしまい、当方も駆逐艦2隻が撃沈されてしまいました。申し訳ありません」


 軽巡アムン艦長の陳謝にアンカーは怒る必要性を全く感じなかったのでその戦果を褒め称え、労いの言葉をかけた。


「ありがとうございます、司令。それともう1つご報告が…」


「何だ?」


「その、撃沈した敵艦の乗組員達が現在漂流しておるのですが…どうしたらよいでしょう?」


 敵を助けるべきか放って置くべきかに悩む軽巡アムンの艦長に、アンカーは真顔で答えた。


「殺せ」

アンカー君(´ºωº`)

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