ミリオタの独り言~「原子力戦艦」はありえたか~
ふとした思い付きを少し深く考察してみました。1,400字の短い文章ですが楽しんでいただけたらと思います。
ちなみになろう初投稿です。
世界初の原子力船は、1954年9月30日に就役したかの有名なアメリカ海軍の潜水艦“ノーチラス(SSN-571)”だ。その後1961年にミサイル巡洋艦“ロングビーチ(CGN-9)”と空母“エンタープライズ(CVN-65)”が就役し、それからも沢山の原子力船が造られたが、現在動力に原子力を用いているのは主に「空母」と「潜水艦」だ。それ以外の艦種も数隻存在するが、いずれもその艦種における主流は原子力ではない。
では今は亡き艦種「戦艦」が生き残っていればどうだろう?第二次世界大戦以降、列強国の海軍の主力は空母に変わり、戦艦は建造されなくなった。現時点で歴史上最後に建造された戦艦はフランスの“ジャン・バール”で、その就役は1950年。その頃はまだ原子力船は存在しない。では空母の発展が史実より遅く、大艦巨砲主義の時代がもう少し続いていれば「原子力戦艦」が作られることもあっただろうか?
筆者は「試験的に数隻作られるかもしれないが、主流にはならない」と考えた。
そう考えた理由は次の通りだ。なお、この考察にあたってWikipediaの「原子力船」という項目(https://ja.wikipedia.org/wiki/原子力船)を参考にした。
そもそも動力を原子炉とするメリットは「燃料補給の必要がほぼない」「蒸気発生量/発電量が大きい」「大気(酸素)に依存しない」といったものがあるが、三つ目は潜水艦でなければ大きな意味を持たないし、二つ目も空母ならともかく戦艦では通常動力で十分に間に合う。
では燃料補給がほぼ不要である点はどれくらい魅力的だろうか?
例えば大日本帝国海軍の戦艦“大和”の航続距離は7,200海里で、日本からハワイまで無補給で往復できる計算だ。ただこれは最も効率よく進める速度での話。戦闘中はもっと速度を出すのでその分早く燃料を消費するし、遠征先で長期間従軍する場合もあるので、航続性能はあって困らないだろう。また、“大和”の燃料タンクを満たすには6000トンの燃料が必要だったが、原子炉にはそれも不要なので、その分他の物を積める。
だが作戦行動半径の問題については補給艦を随伴させれば済む話で、燃料分の積載量とスペースも同様だ。戦艦を建造できる国力があるなら補給艦を用意することは難しくないだろう。
次にデメリットを述べる。(ただ正直に言うとこの部分は出典元以上の情報はない。)
原子力船の場合建造費、維持費、そして廃船・廃炉コストのいずれも通常動力船と比べるとかなり高い。原子力空母のライフサイクルコストは通常動力空母の1.5倍以上だそうだ。維持管理と点検にはコストだけでなく人材と技術も不可欠になる。
そのうえ原子炉事故のリスクを常に負い、さらに使用済み核燃料の問題は陸上の原発と同様である。
このような理由から「原子力ミサイル巡洋艦」は主流にならなかったし、日本の“むつ”をはじめとする民間の原子力船もうまくいかなかった。それらと同じで、「原子力戦艦」が作られたとしてもデメリットが勝り、主流にはならないのではないかと思う。
そうは言っても筆者をはじめとする多くのミリオタにとって戦艦は漢の浪漫だろう。仮想戦記で原子力戦艦が出てくるなら、活躍してほしいと思う。が、やはり現実で戦争はあまり起きてほしくないとも思う。
いかがでしたか?素人意見なので穴だらけかもしれませんが、私の考えはこんなところです。感想欄で読者様の意見も聞いてみたいです。
以下筆者の自己紹介。本文には関係ありません。
筆者がミリオタ(ペンネーム通りにわかですが)になったのは父親が子供の頃に買った本を祖父母の家に遊びに行ったときに見せてもらったのがきっかけです(確か当時小学生)。最初に読んだのは『宇宙戦艦ヤマト』で、そこから戦艦“大和”と連合艦隊にも興味がいって、育った場所から近い記念艦三笠も見に行きました。あと本屋で見つけた堀越二郎氏の『零戦 その誕生と栄光の記録』を買って読みました(当時内容を理解できていたかは疑問符が付きますが)。