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内気

これはね、Bibliothek(ビブリオテーク)の宝箱って言うの。この世界中…あの世の本さえも集めてくる図書館の宝箱よ。きっと素晴らしい宝物が入っているのでしょうね――――


咲き誇るアマリリス畑の真ん中で誰かが僕に金の金具がついた暗い色の木箱を渡す。どこかで見たことがあるような…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


目覚めるとそこは大きな図書館だった。

天井は見えない程高く、全てが本で埋まっているのが分かる。所々にある梯子(はしご)は金色で、どこからか差し込む日の光が反射してキラキラしていた。

この図書館は円柱状になっており、中心に向かってまた背の高い本棚が並べられている。


鮮やかな夢を見た気がする。夢の内容は覚えていない。しかし心は見栄(みえ)を張ったような罪悪感で満たされていた。

「ここはどこだ?」

立ち上がり、(おもむ)ろに1つ本を取る。

【―――何のために生きてるの?と問うと君は太陽がかんかんと照る庭で満面の笑みで「そんなの自分の勝手じゃん」と答えた。】

(日本語だ…)

隣の本も開く。

【―――لغة زهرة الأماريليس هي "جمال رائع" و "غرور قوي"】

(読めない…)

本を閉じ本棚に戻して少し歩く。

どうやら自分はこの図書館の外周に居るようだ。

そして人はそこそこ居るようだが、何故か認識できない。

(夢か…?)

(ほほ)を強くつねる。

(いてて…)

夢ではないようだった。

「はぁ……」

頬を(さす)りながら深くため息をつく。こういう状況はこれから冒険が始まるが結局は夢だった、というのがオチだ。そんな物語なんて山ほどある。面白くない。

人が認識できない、しかも大きな図書館で、なんてとんだ冒険が始まるのだろう。ま、たまには物語の主人公になってみるのもいいかもしれない。読者になって結末も過去も全てを見通しながら主人公を見守るのが楽しいんだけどな。

いつの間にか止まっていた足をまた動かす。

少し歩く度に壁に大きな扉が現れる。

それぞれの扉には金色の文字で「絵本」「ミステリー」「論文」「古文」などと書かれていた。

(案内は日本語…。日本語…?)

書いてあることは分かるが文字自体は日本語とは違うような気がする。もう訳が分からない。

(変に色んなことを忘れてるパターンか…?)

「とりあえず真ん中に行ってみるか」

中心へ歩き出す。

相変わらず人は居るようだが存在はとても曖昧(あいまい)だ。

(蜃気楼(しんきろう)みたいだな)

(蜃気楼のような日光による蜃気楼…てとこか)

足を止める。日光は蜃気楼ではないようだった。

この大きな図書館の中央にはまたとても大きな木が生えていた。その木漏れ日が図書館を明るくしている。

枝やうろに座って本を読んでいる人もいるみたいだ。

「大木だな、この図書館にぴったりだ」

「んで、この大木は知恵の樹…いや逆だ、怠惰(たいだ)の樹…」

知恵を与えてくれる木、というより全てを夢見心地にするような木。

その大きな根を眺めながら木の周りを歩く。

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