03:鵺と源―後―
この物語はフィクションです。
実際の事件及び出来事・人物・団体とは一切関係ありません。
現在、PM1:42。自宅の寝室。僕は雪女を介抱しながら【にっこり】と笑って鶫に問いかけた。
「さあ、鶫。説明してもらおうか。」
「Ah~?」
「僕がなぜ、学校を早退しなくてはならなかったのか!そしてお前がなぜ源くんにわざわざ喧嘩を売るようなことをしたのか!それから、お前と源くんの関係とか!さあ!」
僕は意味不明すぎていつもよりテンション高めになってしまっているのに、鶫は何故かいまだに不機嫌そうにしている。
僕は「Quieting…(落ち着け)」と不本意ながら鶫になだめられた。
そして鶫は何かを思い出しながら話し始めた。
「平安時代末期頃だったか、天皇の住む御所、確か――、清涼殿に毎晩のように妖怪“鵺”の不気味な声が響き渡った。
天皇はこれに恐怖し、遂に病にかかった。
側近はかつて弓を鳴らして妖怪を退けたある男に倣い、ある弓の達人にこの妖怪の退治を命じた。」
「――ある弓の達人?」
「その男の名は―――、源頼政。」
「なっ―――、源……!?」
鶫は目を伏せて続ける。
「源には妹がいた。しかしそいつの存在は、腹違いだったから一般には公表されていなかった。―――源はそいつを使って妖怪“鵺”をとらえることに成功した。“鵺”を捕まえることができれば、源家として認めてやると言ったんだ。
だが、当然それは嘘で、妖怪“鵺”を捕まえた後、そいつは源家の地下牢に監禁された。そして妖怪“鵺”はというと源に飼いならされた。」
「――ひどい話だね。その妹さんはどうなったんだ?」
「そいつは妖怪“鵺”に“廻”という名をつけていた。そいつは地下牢を抜け、廻とともに源から逃げ回った。しかし―――、
そいつは源に捕まり、肉体を殺され、魂は鏡に封印された。そして妖怪“鵺”は過度の玉体を受け、挙句、ある渓谷に封印した。」
「肉体を――?そんなことが……」
「残念ながら、できるのが源だ。」
僕は息をのんだ。そんなことが――……
そして、僕はもうひとつ気になったことを質問した。
「その、妖怪“鵺”っていうのは、もしかして――、」
「俺だ。……そして、その妹ってのは俺の前の、というか、今も契約は引き続いているもう一人の主人だ。…名前は返してくれなかったからな。」
今は人間の状態の鶫が僕の方を真剣に見つめて言う。
「源は、おそらく危険だ。近付かない方がいい、と言いたいところだが……。俺ら妖怪が消されそうな時には、その、助けてくれない、か……?」
意外だった。鶫が僕にお願いしてくるなんて。
「『約束を守る』ための一番の方法は『約束しない』ことだ。」
「……きょ―すけ」
僕は鶫の頭を撫でていった。
「やれるだけやってみるよ【ニコッ】」
「……!!!きょーすけ〜!」
鶫は僕にギュッと抱きついてきた。
ホントに……、これだから妖怪が好きになっちゃったのかな?
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