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02:鵺と源 ―前―

「へ、へぇー……。えーと――、あ、でも、陰陽師って大変そうだね?」

「そんなこと……。あ、でも勉強とかは大変かな」


――イキナリ昼休み


 僕と(みなもと)さんは何故か仲良くなっていた。(いや、『なぜか』というか、源さんに話しかけた僕の愉快なクラスメイト達が、事あるごとに僕に話を振るからなのだが……。)


 実は(自称)人見知りな僕は、源さんと話していると、よく話が途切れる。う〜ん、これは参ったな……。


 その時――――、

ヴ――、ヴ――、ヴ――

と、僕の携帯が鳴りだした。(バイブレーション)


「あ、あー…、電話だ。ちょ、ちょっとごめんね?」

「ええ。」


 フー……。助かった。僕、あんな雰囲気ちょっと苦手なんだよね。誰だか分らないがナイスタイミング!

 僕は、着信を見てみた。


着信 自宅


うおぉい!!!!?前言撤回!


僕の脳内では【予想】

・自宅からの着信=(つぐみ)からの連絡

・連絡内容(8割):「なんか暇だから(そっちに)遊びに行くからな!」

     (2割):その他

・今こっちに来る→消される

という計算(?)が一瞬にして弾き出された。


 いや、もしかしたら僕の計算違いかも!うん。そう信じよう!


 僕は通話ボタンを押した。

『よぅ、きょーすけ!なんか今暇だから遊びに行ってもいいか!?いいな!じゃあな、きょ―すけ!』

「え、ちょ……!」

ブツッ、ツ―――、ツ―――、ツ―――




うん。まずい。


 いや、でも、さっきまで源さんと話していたけど、妖怪だからと言って問答無用で消しちゃうような悪い人ではなさそうだし。大丈夫だよね。うん。

 

 ところが――――、


ダダダダダダダダ!!!!バタンッ!!!!!

「かぐや!!!」

「「「!?」」」(一同)

「あ、にぃさま」


 突然勢いよく教室に入ってきた、源さんが『にぃさま』と呼んだその男は(そういえば転校生は兄妹だって言ってたっけ?よく似てるなー)、源さんを見つけるなり、ズンズンと歩み寄ってきた。


「かぐや、ずっと一緒にいてやれなかったが大丈夫だったか?何かわからないこととか、不安なことはないか??ちゃんと馴染めているか???困ったことがあったらいつでもにぃさまに―――、」


どうやら彼は非常にシスターコンプレックスらしい。妹が心配だったという理由だけでわざわざ駆けつけて来たらしい。

しかし、いつものことなのか、源さんは『うん。大丈夫だよ、にぃさま。』とだけ答える。



と、その時―――、


「京さま〜♪えへへ♪実は今日、この雪女が京さまのためにお弁当を作ってきたんですよっ!よかったら召し上がってください♪」

と、雪女が教室に入ってきた。

 当然、妖怪は普通の人には見えないので雪女は堂々と入ってくる。


「ああ、雪女か、ありがとう。」

と、僕がその(雪女の手作りだと思われる、凍ってしまった)弁当を受け取ろうとした、その時、


「なっ……!?こんなところに雪女だと!?これはいかん!妖魔・即滅!(りん)(ひょう)(とう)(しゃ)(かい)(ちん)(れつ)(ざい)(ぜん)!」

「きゃああぁぁああ!!?」


 源(兄)くんは雪女を見つけるなり、問答無用で九字を唱えだした。途端に油断していた雪女はその場に倒れこむ。

 ――大丈夫だろうか?


「あ、うぅ…ぅく……」

 よかった、まだ息があるみたいだ。しかし、源くんも雪女の息がまだあると知るや否や、再び九字を唱えだす。


「ムッ!まだ息があるか、しぶといな。…臨・兵・闘……」


 このままでは雪女が消されてしまう。だが、源くんみたいにおもむろに妖怪のことを言うと、この場にいる普通の生徒たちに変人扱いされる。


……やむを得ない、アレ(・・)をしよう。


「う、うわぁー」

バタンッ!!!

 僕は机を倒した。それで、机を立て直すふりをして雪女を担ぎあげる。

「い、いやー、参ったなー…ア、アハハ、ハ☆」

「て、オイお前…!雪女が―――、」

「おおっとぉ!?今度は急に腹痛がー」

「え?」

「ということで、僕は保健室に行ってくるね!先生にはそう言っておいて?」


 そういうと、僕は雪女を担いだまま、その場を後にする。

 うん。これが作戦だけど?――て、こら。期待外れとか言うんじゃない!




僕は保健室にはいかず、校舎裏の、目立たない日陰に既にぐったりしている雪女を連れて行った。保健室だと誰か来るかもしれないから、雪女を介抱してやれないからね。


 まあ、ここにはだれも来ないだろう。そう安心したのもつかの間、僕は背後から『オイ。』と、声をかけられた。


「あ……、源、くん。」

 そこにいたのは源くんだった。(ちなみに、源さん(・・)は追ってこなかったようだ)


「えーと、どうしたのかなー?」

「『どうしたのかなー?』じゃねえだろ。お前、なぜそんな邪悪な魔物を助けた?」

「え、えー?何のことかなー?妖怪なんて見えないけどなー?」

「しらばっくれんな。――じゃあなんでこんなところにいんだよ?」

「え?あ!あー、み、道を間違えたのかなー?」


 というように、僕が言い訳を届けていると、彼は少し天然なのか、『そうなのか?』と信じ始めた。しかし――、


「きょ――すけ―――?どこだ―――???お、いたいた!」

―――と、タイミング悪く鶫が遊びに来てしまった。しかも鶫はその時【猿の顔、狸の胴体、虎の手足を持ち、尾は蛇】という、いかにも妖怪“鵺”の状態だった。(ちなみに、前々回説明したような人間の姿は、鶫自身の妖力で変化(へんげ)しているのであって、本当の姿ではない)


それはともかく、(だいたい予想できるだろうと思うけど)源くんは、当然、僕と明らかに親しそうにしている妖怪“鵺”に反応してきた。

 ……まあ、鵺は普通のそこら辺にいる妖怪なんかとは邪悪さ(?)みたいなものが格段に上だからね。

 しかし、

「鵺だと!?やはりお前……!」

「え、あ、これは……!」

「おい、テメェ!!――名を名乗れ。」

「ちょ!?鶫!?」


 ちょ!?鶫まで喧嘩腰なんですけど!?なんでだよ!初対面でイガミ合わないでよ!!

 しかもなぜか、源くんは素直に答える。


「ふん!特別に名乗ってやる。―――(みなもと)頼圖(らいと)だ。覚えておけ。」

「源、だと?」

「おい、お前も名乗れよ。」

「チッ、――鶫だ。おい、きょーすけ。…帰るぞ。」

「あ?いや、これから午後の授業が―――」

「いーいーかーらー!帰るんだ!!!」

「ぅえ!?ちょ!?」


 鶫は僕(と倒れていた雪女)をムリヤリ背中に乗せ、その場を後にした。(ああ、学校が……(泣))


 それにしても、二人は知り合いだったのだろうか?源くんはいつもああだとしても、馬鹿(つぐみ)がここまで敵意を示したことなんて今までに一度もない(と思う)。二人の関係も気になるしな。

 僕は家に帰ってから、いろいろ問いただしてみることにした。








.

後編へ続きます

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