序話
それは深い闇に包まれた森の中。
『はぁっ、はぁ……っ』
『HA!どーした、息が上がってんぜ?』
その女は俺をキッと睨みつける。
『う、うるさい、わよ……!』
『そんなんでこの俺を捕まえられんのかよ?』
ここ3日こんな感じで、その女は俺を追いかけてくる。
俺はその女に問いかけた。
『なぁ、なんで俺をそんなに捕まえたいんだ?』
『それは――――、きゃぁ!』
『!!!』
女は木の根につまずいて転んだ。
ずっと追いかけてくるから、少しの情が湧いてしまったんだろう。俺はほとんど反射的に、その女を助けた。……助けてしまった。
俺の腕の中で、女はふわりと笑い、俺の首に腕をまわした。
『やっとつかまえたわ!鵺―――、わたしの鵺。
あなたの名前は、
――――廻。』
「――――という夢を見た。」
「へぇ。それで?」
「What's!?おいおい、相変わらず素っ気ねーなぁ」
刻はまだ薄暗い朝。
僕―――― 九 京介 ――――は、一人でゆっくり朝食をとっているところだった。
ところが、この気持ちいい朝を妨害してくる奴がいる。それがこいつ―――鶫だ。
鶫は妖怪“鵺”だ。
妖怪“鵺”は一般に【サルの顔、タヌキの胴体、トラの手足を持ち、この鳥の寂しげで気味の悪い鳴き声から平安時代頃の凶鳥】とされている。
しかし鶫は、端整な顔立ち、無駄のない引き締まった体、少し長めの艶やかな黒髪。さらに妖怪特有のものだろう妖艶さには、
ほとんどの女性が思わずヒトメボレしてしまうのではないかと思う。
つまり鶫はビジュアル的には完全無欠だということ。ただしこいつは、
――――かなりうるさい。
おそらく、こいつがうちに来てから静かだったことがない。(『鶫』という名は僕がつけたのだが、鶫は『鵺だから“鶫”なんて単純すぎんだろ―――!!!』とか騒いでたっけ…。)
ちなみに、僕と鶫が出会った経緯はまた後々。
平安時代ごろの妖怪だというのに、なぜか英語まじりの口調だし。自分で“俺は妖怪最強だ!”とか言ってるし……。
……と、話がそれてしまったね。
ああ、話をしているうちにもうこんな時間だ。学校に行かないと……。
「きょーすけー??またschoolかー?」
「あぁ」
「俺も行くー!」
「だめだ。鶫は留守番してろ。火元に注意しろよー」
「えぇ―――!!?」
俺は一緒に行きたがる鶫を制し、いつもの学校に向かった。
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読んでいただき、ありがとうございました!
まさかの主人公と俺の名前がかぶってることに焦りましたιスミマセン
初投稿なのでまだまだ未熟ですが宜しくお願いします