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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

俺の恋人は綺麗な男の子

作者: へんなひと

 一目惚れだった、もし俺が小説を書くのならこの一文で決まりだ。

 そう、俺は一目惚れをした。


 髪は短いが、前髪は長く、目が隠れている。

 体は小柄で、150㎝ぐらいの身長。

 本ばっかり読んでる、俺と正反対な男だ。


 そう、男だ。


 俺は男に一目惚れしてしまったのだ。


 まあまあ、落ち着きたまへよ。

 安心しろ、俺も男だ。


 最初はふつうの出会いだった。

 前から来たその子とぶつかってしまい、突き飛ばしてしまったのだ。


 見れば男子生徒。

 俺は手を貸し、気をつけろよと一言だけ言って去る予定だった。


 しかし、尻餅をついたその子の前髪が少し開き、目が見え顔全体が見えた。

 俺はガーンと頭を殴られたかのように衝撃を受ける。

 だってすごい可愛かったんだもん。


 長く整えられた眉毛、色白の素肌、目はぱっちりと開いておりまるで人形だ。

 俺は思わず見惚れてしまう。


「す、すいませんで…した」


 男子生徒はすぐに前髪を戻し、俺に一言謝って去る。

 俺は「お、おう」とだけしか言えなかった。


 それと同時に、あの子とお近づきになりたいと思った。

 俺は友達に聞いて話を聞こうかと思ったが、その必要も無くなってしまった。

 同じクラスだったのだ。


 教室の一番後ろの窓際。

 その子は髪を風にたなびかせながら本を読んでいる。


 美しい、そう俺は心の中で感嘆する。

 話しかけようかとも思ったが、それはよしておいた。

 この美しさを俺が壊すわけにはいかない。

 そっと席に着く。


 しかし、なんで俺はあの子に気づかなかったんだろうと思ったが、それは彼の存在感がないからだ。

 ぼっちと言って良いのだろうか。

 今日一日観察してみても、彼と話す特定の友達というのはいなかった。


 そして、俺が話しかけようかと思ったが、これがかなり緊張する。

 好きな人に話しかけるって緊張するんだな。

 それにお互いの立ち位置が違いすぎるし。


 俺は中学時代に彼女というのは何人か作ったことはある。

 しかし、性格の問題ですぐに別れてきて、高校になってからは告白されることは多々あるが彼女という存在は作ったことなかったのだ。

 なにかが違う。

 そう思い始めるようになった。

 自分で言うのもなんだが、俺はかなりモテる。

 そして、スクールカーストとか言う訳のわからんアレも上位に属していると、俺の取り巻きに言われた。


 正直言って取り巻きはウザいことありゃしない。

 一人になりたい時もひっきりなしに俺に擦り寄ってきて気持ち悪いのだ。


 話が逸れた。


 とにかく、俺は彼が好きだ。

 生まれて初めての恋である。

 男と男、おかしいんじゃないかと思われるかもしれないが別にいいだろう。


 好きになってしまったのが男なのだから。


 それに言ってしまえば、人間というカテゴリーを外れたらオス同士など当たり前である。

 江戸時代など、大名の8%が男色に手を染めていたと言うではないか。

 当たり前、当たり前、自然の摂理。

 こうして、俺は名前の知らない彼を遠目で見続ける日々が始まった。

 見れば見る程、本を読む姿が美しく、触れたら壊れそうだのとか思ったり、まあ端的に言えば好きになっていく。


 話掛けたいなぁ、しかしその勇気がないなぁ。

 俺のこの立ち位置を恨む。

 絶対に彼を怯えさせてしまうだろう。


 そんなことを考えていた時だった。


「や…やめ…」


 彼の声が聞こえてきた。

 男子トイレの中から聞こえるな。


 不思議に思い、俺はトイレの中に入るとそこには、髪を引っ張られた彼の姿があり、髪を引っ張ってるのは俺の取り巻き達だった。


「ぎゃはは!こいつよぇー!」

「つーかこいつ、半泣きになってんじゃん」

「あ!ヒロトくん!見ろよこいつ、俺たちにぶつかってきて一言も言わなかったんだぜ!だからちょっといじめたら、こんなんになっちまった!」


 下卑た声で笑い、俺を呼ぶ。


「やめ…やめて…」


 泣き顔で、こっちを見てくる。

 そんなに顔を見て俺の腹は煮え繰り返る。

 取り巻きの一人を俺は気づいていたら殴っていた。

 鼻を重点的に。


 鼻を重点的に殴る殴る殴る。


「い、いあい!ちょ、ひほとくん!?いあ…い!」


 殴られながら話せるなんて根性あるな。

 俺は、馬乗りになった体制を変え、顔に蹴りを一発入れておいた。

 折れた歯がタイルに転がる。


 いきなりの事に呆然とする残りは、俺の顔に飛び散った血を見て逃げていく。

 そうはさせるかよ。

 逃げようとした一番後ろの奴の首根っこを掴み、個室の扉に顔を打ち付ける。

 何度も、何度も、何度も。


 いつのまにか、掴んだ奴は気絶しており、残りの奴はもうすでに居なかった。


「……あ、あ」


 あ、彼の事を忘れていた。


「大丈夫か!?」


 俺は急いで彼の元へ向かい、肩を掴む。

 顔には少し擦り傷があり、服はびしょびしょ。

 クソが、何でこんな事を。


「ひっ」

「す、すまん」


 俺は掴んだ肩から手を離し、謝る。

 そうだよな、怖いよな…

 うん、うん…

 なんとも言えない気持ちになる、拒絶というのは悲しいものだ。


「……あの、すいませんでした」


 少し落ち込んだ俺を見かねてか、彼が話しかけてきてくれた。

 えらいこっちゃ。

 好きな子に話しかけられるなど、素晴らしいにも程がある。


「へくちっ」

「おっと、すまん。ここはあれだから移動しよう」


 最初は保健室に連れて行こうかと思ったが、どうやら彼は事を大きくしたくないらしく、どこへ連れて行こうか迷う。

 すぐに彼を治療してあげれる所…。


 俺が思い浮かんだのはたった一つしかなかった。


 ☆


 ……やってしまった。


 やってしまった!


 彼を家に入らせてしまったー!


 心の中で、顔に手を置き恥ずかしがる。

 ひゅー!大胆すぎるううう!


 いや、恥ずかしがってる場合じゃない。

 まずはお風呂に入らせてやろう。


「こっちきて」

「…は、はい」


 彼の手を引き、お風呂場までやってくる。

 俺の家のお風呂は全自動式ですぐにお湯がたまる優れものだ。


 ボタンを押し、準備完了。

 あとはシャワーでもなんでも入ってもらおう。


「ここに着替えと、タオル置いて置くぞ」

『はい…』


 中からシャワーを浴びる音が聞こえる。

 俺は表面上はクールに振る舞うが、心の中はとんでもない速さで鼓動する。


 …ふう、落ち着け、落ち着け俺…。


 あったかい飲み物を作ってやろう。

 そう思い台所に行き、コーヒーメーカーを起動する。


 あ、彼の着替えは洗濯機にぶち込み、あとで乾燥機で乾かすつもりだ。

 …パンツを見てしまってまたドキドキしたのは内緒だ。


「あ、あの…」

「ひゃい!?」


 まずった。

 変な声が出てしまった。


「ひゃい?」

「あ!あはは!気にしないで!で、なんの用?」

「…お風呂ありがとうございました」


 彼はぺこりと頭を下げる。


「ああ、気にしなくていいよ、こっち来て。手当てするから」

「…すいません」


 俺は救急箱を取り出し、消毒液を傷口につける。

 見てるだけで、ムカついてきた。

 こんな綺麗な顔を傷つけるとは…。


「大丈夫か?」


 俺は比較的優しい声で彼に問う。

 体の傷はすぐに癒えるが、心の傷というのは厄介なものですぐには消えはしない。

 時間をかけて癒していくしかないものだ。


「少し体は痛みますが、平気です」

「そっか、欲しいものがあったら言ってくれ取ってくるよ」

「いえ、大丈夫です……優しいんですね」


 これはイケナイ。


 可愛すぎる。


 上目遣いで見てくるとか反則だろ。

 少し、前髪が開きその綺麗な目を見せる。

 儚げな、そしてちょっと触っただけで壊れそうな体。


 俺は決心をした。


「あ、あの!」

「は、はい!」

「俺にアドレス!教えてくれないか…?」


 俺は片手にスマホを持ち、彼に問う。


「は、はい…喜んで…」


 俺は心の中で大きくガッツポーズをした。

 連絡先ゲットーーーー!

 思い人と通話ができる!

 メッセのやりとりだって!

 それに俺はこんな言い訳をしてしまう。


「ほら、今度何かあった時、俺に真っ先に連絡くれればすぐ飛んでくから!」


 彼はポカーンと口を開けて俺の話を一方的に聞く。

 あ、これ引かれたか?とも思ったが、彼はクスリと笑い出し、「はい、その時はよろしくお願いします」と俺に連絡先を教えてもらった。


「そういえば君の名前…まだ聞いてなかったな」

「橘恵です」

「そうか、俺は近藤大翔、よろしくな」

「はい、よろしくです!」


 ☆


 恵と出会い、俺の生活は一変した。

 まず、今まで寄ってきた取り巻きは一切来なくなり、逆に女子に話しかけられることが多くなった。


 どうやら一連の出来事を一人の男子生徒が目撃しており、俺は次の日学校に行ったらヒーロー扱いだ。

 噂というのは広まるのは早い。


 そして一番大きく変わったことと言えば…


「よ!メグ!」

「もう、メグっていうの辞めてよヒロトくん」


 恵と一緒に帰ったり、少し寄り道して帰る事になったのだ。

 これはもう放課後デートと言っても差し支えないのでは!?

 にやける口を必死に抑えて、二人一緒に並んで歩く。


 そしてなんの変化か知らないが、恵は前髪を目が見える所まで少し切った。

 その綺麗な顔をみんなに見せるのは俺としてはいい気分ではなかったが、みんなは恵の変化には気づかなかったらしい。

 恵が「おかしいね」と苦笑していた。


 いいんだ、こんな事を言ってしまってはなんだが、恵の魅力に気づくのは俺一人でいい。


 ☆


 さて、俺と恵がいつも向かう場所は本屋だ。

 俺も文庫本は好きなので、それを言ったら恵に驚かれた。


 まったく、俺でも本は読むに決まってるだろう。

 性格ならお前と似たようなもんなんだから。


 目当ての本を手に入れたようで『るん♪』と擬音が出るくらいの勢いでレジに向かっていった。

 ははは、そんなに本が好きかぁ。


 俺はふと横に目をやる。

 そこには『告白』とシンプルな題名の本が映る。


 告白かぁ、うん告白…

 俺が恵に告白しても、ただ引かれて距離を置かれてしまうだろう。

 しかし、この気持ちを伝えないというのは一生後悔する事だと思う。

 俺はこの気持ちを一人で心にしまって置くつもりはない。

 必ず恵に告白し、その時は潔くふられよう。


 なんで俺は叶わない恋をしちまったんだろうなぁ…。


 ☆


 あれから幾らかの月日が経ち俺たちは三年生になった。

 変化はというと、受験シーズンとか、就職とか…ごく些細なものだ。

 しかし、俺には衝撃的な報告が舞い降りた。


「僕、告白されちゃったよ」


 目の前で恵が照れながら、俺に告げた。

 俺は最初何を言ってるのかわからなくなった。

 恵が告白…?

 俺の心の中で、ふつふつと不安の気持ちが溢れてくる。

 まさか、そいつと付き合うのかと思ったがそうでもないらしい。


「気持ちは嬉しかったけど、ごめんなさいしちゃった…」

「なんでだ?」


 俺は心の中で盛大にため息を吐く。

 よかったー!

 実は俺は今日告白しようとしていたのだ。

 告白する前に彼女がいるんだったら俺は一人で何してたか分からん。


「…………えっとね」

「ああ」


 なんだ?恵がチラチラとこっちを見ている。

 なんだ?一体?

 すると恵が深呼吸をして俺の瞳を見る。


 恵の顔は赤くほてり、俺の目を釘ずけにしている。

 え?この雰囲気…まさか…

 俺はそこまで愚かじゃない、目の前に気持ちを伝えようとしてくれている恵がいるんだ。

 俺はそれに答えなきゃならない。


「……好きです」


 俺は何も言えなくなる。


「引かれちゃうかもしれないけど……僕は…僕は」


 恵は大きく息を吸い込み、そして俺にはっきりと気持ちを伝えてきた。


「僕は大翔のことが大好きです。お付き合いしてください」


 潤んだ瞳が、恵が出した勇気の証拠だ。

 それに…大好きだと?ふざけるな…。


「俺の方が大好きだ」

「え?」


 今日は恵と始めて話した日。

 忌々しい記憶ではあるが、それ故に鮮明に覚えている。


「俺の方が恵の事をもっと大好きだし、それにずっと前から付き合えればなと思っていた」

「はい…」

「先に言われたのは悔しいがな」

「ひゃ!」


 俺は恵を抱きしめる。


「ていうか名前呼び…」

「茶化すなよ、真面目な時くらい名前で呼ぶさ、メグ」

「あうう…」


 こうして恋人同士に俺たちはなったと言ってもいいだろう。


 この後の話はまた別の機会で…な?

息抜きで書いたやつです。

書き始めたら引っ込みがつかなくなっちゃったんでここに投稿したいと思います。


少しでも面白いと思って頂ければ評価してもらえると嬉しいです。

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