腐りきった晩餐会
何もできないのだと蹲ったまま立ち上がろうとしない君はとても滑稽な姿だと思う。見下した私の視線は絶対零度で凍てついてるのが分かる。だけど君はそれすら見ようとしないから気付きもしないのでしょう。
何を持ってして何もできないのだというの?ただ、やろうともしないで可能性から眼を逸らしていると分かっている私だからこそ問える言葉。だけど君はそれすら聞こうとせずに耳を塞ぐのでしょう。
そうしてまた繰り返す、何もできないのだという言葉。
「本当に何もできないのだというのなら、どうぞ此処から飛び降りて」
指差した先には広がる街並みと、地面を歩く人達。見上げれば青空が私達を憐れむように見つめている。君は恐る恐る顔をあげるけれど、あぁ、やはり笑って弱音を零すだけ。
「もうこれ以上は、何もできないんだ」
顔を俯かせて零した言葉の腐り様に溜息すらもう零れない。いっそ私がその背を押せばいいのかしら――なんて、動いた両手は君の背に触れる前に落ちた。あらまぁ、なんて滑稽なのかしら。私こそがもうこれ以上は何もできないみたい。だってどれだけ言葉を尽くしても、手を差し伸べても、君は動かないのでしょう?なら――
「もうこれ以上は、何もできないわ」
同じように零した言葉は歪んだ笑みと共に腐り落ちた。あぁ、私も君と一緒。だけど、君と一つだけ違うのは――
進めた少女の足は空中を踏みしめ落下する。俯いたままの少年はそれに気付かず己を哀れんだまま。ぐしゃり、潰れた心臓の赫は少女の眼にも、少年の眼にも映らぬままブラックアウト――これこそが少女の本音だと、誰も知らぬまま消えていく。