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Catastrophe  作者: 架幸
-Requiem-
13/20

-Lyuk Side

再度目覚めた時は、発作は随分と治まっていた。

夢の内容や暴れたことの記憶は無い。

荒れている部屋とへこんだ壁と、乾いた血と涙。

痛む頭がそれを物語っている。

過去に囚われて、よく起こる発作。

今回はまだマシな方か。

今までは発作が起こると一日動けなかった。

しかし最近は、なんだまたか…という感じだ。

ここまで来ると、もう慣れたようで。

慣れというものは怖いな。

流石に発作中の苦痛は慣れないが。

悪魔たるものは罰を受ける…

まぁこんな症状を持つのはオレくらいなんだが。

理不尽だな…

オレは魔王な分、罪を背負えと。

まぁ…違うな…

大罪を犯した罪でオレは…

魔王になったんだ。

一生、償わなければならない。

その莫大な力と壮大な罰。

魔王という使命。

永遠に付き纏うものだ。


「ぁあ……い…ってぇ…ッ……」


よろめきながら立ち上がる。

血は着いているものの、傷口は塞がっていた。

流石、悪魔の回復力は凄い。

重い体を引き摺るように、部屋の隅にあるシャワ

ー室へ向かう。

服を脱ぐと、肌が顕になる。

何度見ても醜いオレの裸体。

生々しく刻まれている無数の傷。

全身が痣や傷で覆われている。

過去にやられたものだ。

自分でやったのもある…

オレの過去の話は簡単に語れるものじゃない。

とても深く…辛いものだ。

シャワーのレバーを緩める。

温かいお湯が体を包み込む。

悪魔は温度を感じることに関しては鈍感だ。

シャワーのお湯が温かいのは実際分からない。

けれど昔の感覚で覚えている。

冷たい、熱い、温かい。

心で感じる。

過去を、辛い記憶を洗い流すかのようにシャワー

を浴びる。

不思議だ。

気持ちがいい。

ベランダから月を見ている時とシャワーを浴びる

時が一番、リラックス出来る。

さて…また仕事をするか…

まだふらふらする。

タオルを手に取り、身体を拭きつつクローゼット

を開ける。

いつも来ているコートは正服だ。

まぁ着替えるのが面倒な為に、浄化して着続けて

いる。

悪魔は人間とは違って、風呂だの洗濯だの手洗い

だの面倒な事は全て潜在能力で済ませる。

オレはマメにシャワーを浴びているが。

一応この城には大浴場があったりする。

摩訶不思議で快適な悪魔の生活だ。

人間よりも気楽だ。

人間の頃よりも…


「雪だるま作れーっ♪」


なんか違うぞ。

聞き覚えのあるフレーズと、ドアをダンダンと強く

叩く音。

この声は…愛世か。

頭がふわふわとして、鈍くなっている。

かなり不安定だ…嫌な予感がするな。

心配されるのは好きじゃない。

適当に服を選び、着替え終わらせつつドアを開け

る。

何事も無かったかのように装う。

案の定、愛世がいた。

どことなく疲れている様子だ。

すると、ぎゅっと抱きついてきた。

顔をすり寄せつつ、オレの荒れた部屋を見回す。


「まーた!発作!起こしたね!?」

「…あー……」

「うわーんっ」


そう言って大泣きしだした。

やっぱり気づいていたのか。

発作の時は愛世には共有が影響されない。

しかし気持ち的には来るらしく…

辛い思いをさせてしまう。


「いや別にいいけども!はいこれ!」


何故か犬のぬいぐるみを渡された。

意外だろうが、オレは犬が好きなのだ。

何よりも、動物が好きだ。

まぁ獣族を含め獣…特に犬が。

愛世は一番オレのことを知っている。

愛世の中でオレ=犬喜ぶとでも思っているらしい。

慰めるつもりなのか、度々ぬいぐるみを渡される。

この前はコーギー、その前はチワワだったな…

その数は日に日に増え、部屋の棚の上から溢れ始

めていた。

今回は一番好きな柴犬だ。

顔を埋める。

うん、落ち着く。

思わず笑いが零れた。

愛世はオレを見て、少し驚いたような、はっとし

た顔をした。

何かオレの顔に付いてるのか?

首を傾げる。


「…き…っ……」

「なんだ…?」

「…んっ…何でもない…リュークん…」

「ん…?」


愛世は一瞬目を伏せて何かを言いかけたが、結局

黙り込んだ。

話を逸らそうとしているのか、狼狽えているよう

にも見える。

しばらくして、何かを思い出したかのように飛び

跳ねた。


「あっあっ忘れてた!大変!!」

「どうした?」

「くずちゃんが逃げた!」

「マジか…ったく……」


愛世について行き、ロビーへと降りていく。

安心しきっていたのだ。

その時はまだ気づかなかった。

嫌な予感に。

少しずつ少しずつ、

思考が、オレ の記憶が…

視界が薄らいでいくことに。

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