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契約的結婚に至るまで(モテる恋人と冴えない少女、謀略の為に少女に結婚を迫る男の話) 元恋人視点SS

 カトリーナがアルメニア公爵子息と結婚したという一報を聞いた時、何かの間違いではないのかと、たちの悪い冗談だと笑い飛ばしたかった。けれども顔色を悪くした深刻そのものの執事の顔を見た時、漸くそれが事実であり現実なのだと理解した。

 私はその時初めて、愛する恋人を失ったのだ。


 カトリーナという女性は、実に堅実で慎ましく淑やかな女性だった。性に対して奔放な令嬢が多い中、名実共に淑女の名を欲しいままにしていた彼女は、私にとってかけがえのない恋人でもあった。

 彼女の周りに居る女性達は皆、メイドですら彼女を慕っていた。

 それは一重に彼女の穏やかで誠実な気質を知っていたからだ。


 けれども令嬢達の間では、飾り気のない彼女を侮る人間も多く、少しでも彼女の印象を良くしたくて積極的に女性達と関わっていた結果、まさか彼女に関係を誤解されていたとは、思っても見なかった。

 私は彼女を愛している。

 心から尊敬出来、彼女とならば温かな家庭を築く事が出来るだろうと思い描いていた。だからこそ、辛く苦しいサルサティ伯爵家の仕事に積極的に関わり、時には領地経営を学ぶために出向いた事もある。

 だというのに、恋人は既に他の男の妻。


 もう、笑う他無かった。

 全て、すべて私の思い違いだったのだ。

 彼女はすべて理解してくれているのだと、そう思っていたのに。

 まさか当の彼女自身が私の行動を誤解しているとも知らず、友人同士の軽口で気恥ずかしさから彼女を貶めてしまった場面すら見られていたとは。


 ああ、そうだ。私が彼女を追い詰めた。その結果、愛する人を生涯失ってしまったのだ。

 彼女は他の令嬢のように夫の他に恋人を作る様な不実な女性ではない。

 私は絶望した。涙すら枯れ果てた。最早彼女に振り向いて貰う事など到底出来はしまい。けれども最後にもう一度だけ、もう一度だけきちんと話がしたかった。誤解を解きたかった。

 けれど再び彼女に会った時、私は更に絶望する事になるなどこの時の私には知る由も無かった。


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