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私は妹に全てを明け渡す(不憫な少女と妹、精霊の男の話)TwitterSS

私の妹は皆に愛されている不思議な魅力を持つ女の子。姉の私はそのおこぼれにありつく小さな虫のような存在。

その筈だったのに。何故こうなってしまったの?

キーワードは、不憫、多角関係、バッドエンド

 私と妹は、5歳年が離れた姉妹だ。

 妹は大変可愛らしい容姿をしており、それに見合う少女らしいほんわかと優しい空気を持っている。それは周囲の人々、老若男女に関わらず人を惹き付ける魔性の如き魅力である。

 現に妹は小さな頃から誘拐未遂をされていたり、ストーカー等まだ可愛い方で、妹に惚れ込み過ぎた男性が家に侵入し逮捕されたりと、それはもう花の蜜に群がる蜂のように、多種多様な人間が妹の周りに集まって来る。

 それは妹が望むと望まざるとに関係なくだ。

 この為に両親は、妹に護衛役を付けることを決断した。私自身その当時の事はよく覚えているのだけれど、妹を溺愛する両親にとって護衛役という存在は必要不可欠なものだったのだ。


 けれども両親は妹に憚ってか、私にも護衛役を付けるのだ。妹とは違い、人を惹き付ける魅力を持たない私には絶対に必要無いというのに。

 だから両親から手配されて護衛役として来た男性達は、何かしら理由を付けて妹の護衛に回るよう諭している。第一、護衛役の殆どは妹を一目見ればその存在に心酔せずにはいられないのか、視線の先には常に妹が居る。

 別に私自身には護衛役など必要無い。それは周知の事実でもある。

 けれどもそれを私自身が直接口に出す事は出来ない。それは両親の配慮を無碍にさせるものだから。

 そのような関係から、極力感情を表に出さずに妹の方へ行くように諭せば、殆どの男性が引き下がる。

 そして妹の護衛役に納まるのだ。

 妹はこれを知らないらしいが、護衛役が多すぎる為に護衛役をローテーションで付けているらしい。

 このような関係からか妹の周囲は常に華やかだ。それでもその中で問題が起きていないという事は、妹自身の穏やかな性格や気質が表れているのだろう。


 肩からするりと落ちるストールを引き上げると、耳元で低い笑い声が聞こえてくる。


「あいつ等は本当に目が悪いな」

「そう言わないで。彼等はそれで良いのだから」


 私の声に応えるように影が揺らめいて、目の前に一人の青年が現れる。彼は私の護衛役を自称する精霊、のような物だ。

 この精霊、いつの頃からか私の周りをうろつき、遂にはもう隣に居ない事が稀な程に私にくっついて離れない横暴な精霊なのだ。

 とはいえ、精霊憑きという存在はある意味特殊なフェロモンを持つ人間であり、精霊憑きの人間は神に近い存在である精霊の子として崇め奉られるような存在なのだから、本来であれば私も妹と同じような世界に生きていたかもしれない。勿論、私自身がこれを公表するつもりなど毛頭無いけれど、精霊の姿が見えない人間からすれば、私は単なる頭の可笑しな異常者としてしか見られる事はない。


「お前の護衛役は俺だけで十分だろう?」


 その甘く低い声は私の耳にするりと入ってくる。

 確かに彼が居れば私は安全だろう。

 何故なら彼が見える人間は私しか居ないのだし、彼は人間にはない長命種であるのだから。けれども私は彼も離れて欲しいと常々願っている。

 けれども彼はそれを即座に斬り捨てるのだ。全く、何て酷い精霊なのだろう。


「お姉様、少しよろしいですか?」


 彼と少しばかり話をしていたその時、妹がそう言ってひょっこりと部屋の入口から顔を覗かせた。

 妹が私を訪ねて来るのは珍しい。

 「どうぞ」と答えれば、妹が足取り軽く部屋の中に入って来る。そう広い部屋ではないけれど、応接用のソファーに妹を座らせると、妹は形容し難い不可思議な表情を浮かべて私を見つめた。


「お姉様の護衛役の事ですが、」


 何があったのか、歯切れ悪く口ごもる妹を促す。

 その間、精霊の彼は気配もなく姿を消していた。


「お父様には直接お断りした筈だけど、どうかしたの?」

「はい。私はお姉様には護衛役は必要無いと思うのです」


 本当に今日は珍しい。妹がこんな事を言うだなんて。

 けれど私自身、嘘偽りない本心で妹と同じ事を思っていたので、それに同意する。


「ええ、そうね。私もそう思うわ」

「だからお姉様、私がこれからお姉様を護衛を致しますわ。良いですわよね?」

「えっ…」


 妹は私の肩に両手を掛けて奇妙な笑みを溢す。それはまるで、無邪気な子どもが親に欲しい物を強請るかのような、それでいて有無を言わせない強制力を内包したその言葉に、私はただ茫然と妹を見つめ返す。

 そうして妹は畳みかけるように言った。


「お姉様の側に私以外の方が居るだなんて、必要ありませんもの。ねえ良いでしょう、お姉様」


 何処か狂気を感じさせる妹に私は固まった。一体全体どうしてそんな発想が生まれたのか。そう問いただしたかったものの、私の唇が言葉を紡ぐ事は無く、ただ「えっ」だとか、「あっ」だとかいう音しか出てこない。

 けれども先程姿を消した筈の彼は違ったらしい。

 私の後ろから姿を現した彼は、「なら俺はどうだ?」と言った。


「ああ、貴方が居たのですか。そうですわね…貴方ならば良いでしょう」


 そう言う妹に驚いて思いがけず、「あなた、彼が見えるの?」と問えば、妹は少し目を見開いて、ああ、と声を上げた。


「彼は精霊ですよね。ええ、勿論見えますわ。それで手を打ちましょう。けれどお姉様、私とずっと居て下さいね」


 妹は人形の如き華やかな、それでいて奇妙な笑みを浮かべてそう迫る。

 その隣には、「許可は取れたな」と呟く彼が並んだ。


 妹は動く事も言葉を発する事も出来ない私の腕に重心を掛けて、甘えるように頬を寄せた。


「ずっとずっと居て下さい。お姉様だけが私にとって大切なのですから」


 ―――そうして妹は、その後全ての護衛役を解雇した。

 どうしてこうなったのだろう。

 私は妹に全てを渡すために、その為だけに気配を殺し、兎に角地味で目立たないよう動いていたというのに。

 両親とて、妹を溺愛してやまず私の事など露程にも気に掛けては居なかったというのに。

 それなのにどうして妹は、そんな目で私を見るというのか。

 どうして、私なんかを好きだと言って慕い、甲斐甲斐しく世話を焼くというのか。

 妹の思考が理解できない。それはまるで言葉の通じない宇宙人を目の前にしたかのような違和感ばかりが強く感じられる。


 けれども妹は、そんな私の戸惑いや無意識の恐怖すらも理解しつつ私に甘く微笑むのだ。


「お姉様、大好きです。ずっと傍に居て下さいね」


 小悪魔的に笑う妹の隣で彼も笑う。


「籠の鳥はお前だったな」


 違うという言葉は喉の奥に消え、二人に両腕を引かれて私は歩く。

 両親は妹の行動に一度は疑問を呈した。けれども妹は蛆虫を見るかのように両親を隠居に追い込み、家の全てを掌握した。

 家に仕える人間は全て妹の部下ばかり。


「逃げられませんよ」

「逃げられる筈がない。そうだろう?」


 妹と彼の声が聞こえた。



主人公:不憫。妹の感情は単なる恋愛という意味での愛情ではなく、盲信的に信仰する神へ向けるようなものだと知っている。逃げようとするも妹と精霊によって囲われている為逃げられない絶望の中で過ごす。

家族も将来の自由も全て奪われた中で朽ち果てる将来を憂えている

妹:姉を心の底から愛し、自分が守らなければならないと強く確信している小悪魔の皮を被った腹黒サイコパス

彼:主人公を愛してやまない精霊。精霊付きの人間は国によって守られ、生涯を共に過ごす事を誓約しなければならないと知っていて、主人公を妹と手を組み籠の中に囲う

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