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ただ愛してる(愛する恋人を失う女性、そしてその恋人)白昼夢 TwitterSS

Twitterで呟いていたSS。とても短いです。主人公の独白

 私には愛する恋人が居る。

 彼自身も私の事を愛してくれていると、そう思っていた。けれども彼が選んだのは、彼の両親が決めた婚約者だった。

 彼の家は大きな会社を経営していて、彼の両親が決めた婚約者は同業者の娘。私とは違い、彼の家業と家柄も釣り合う裕福な少女だった。だから、両親の居ない私はただ黙って身を引くしか無かった。


「ごめんな」と彼が言ったから、私は全ての言葉を飲み込んで、笑って頷いた。

 だって私はもう彼の側に居られない。居てはいけない存在だから。

 それから半年後に彼は結婚式を挙げた。

 勿論結婚式に呼ばれる事は無かったけれど、私は彼の幸せを祈った。身を引き裂く様な痛みが私自身の心臓を握り潰し、心から血が流れていてもそれは変わらない。

 だから、なのか。

 私は本当に心臓が悲鳴を上げている事に気付いては居なかった。


「余命、半年…?」

「はい、手を尽くしてはいますが、何分進行が早く、早めに緩和療法に切り替えた方が体の負担も少ないでしょう」


 総合病院の簡素な個室のベッドの上。目の前で淡々とそう言葉を紡ぐ先生は、眉を下げてただじっと私を見ていた。

 ああ、私の心臓は文字通り悲鳴を上げていたらしい。

 緊急入院した病院で聞いたのは、薬で症状は緩和出来ても、完治する事は無いという事。


「そっか、私死ぬんだ」


 どうしてか虚しい。

 それから半月後、生きる気力を失った私の体は急速に悪化していった。

 看護師さんや先生は、出来る限り手を尽くしてくれている。けれども私はこの世界に対する未練などとうに失っていたのだ。


 ―――そうして病院のベッドの上で体の痛みに耐えながら、私はその時を迎えていた。

 ああ、意識が遠退いて行く。

 暗くなっていく視界に安らぎを感じながら、私はその生涯を終えた。





 ―――その筈、だったのに。

 何故こんな状況なの?


 次に目を覚ますと、私はベッドの上に居た。

 軽く目を瞬かせるが、体は鉛の様に動かない。

 直ぐ側で誰かが息を飲むのが聞こえて、首を傾けようとして、その痛みに呻いた。

 バタバタと遠くから靴音が聞こえて、複数の人が雪崩れ込んで来た。目線だけ動かすけれど、状況は見えない。

 目を覚ましたぞ、だとか大丈夫ですか、―――さん。という声が聞こえるけれど、何処か現実味が無い。そうして一通りに診察をされた後、誰かが私の顔を覗き込んだ。

 それは私と別れ、婚約者と結婚した筈の元恋人だった。

 私はパニックに陥ってしまったのだろう。はくはくと口が動く。

 でも、声は出ない。手も動かせない。それを察してか彼が私の手を握った。


「生きていてくれて、良かった」


 それから、訳が分からず涙ばかり流す私に看護師さんが彼にその場を譲り、「後で点滴に来ますね」と声を掛けた。彼は看護師さんに頭を下げて、椅子を引いて隣に座った。


 彼が言うには、私はずっと植物状態だったのだと言う。

 けれどそれは私が死ぬ前の状態とは全く違い、その齟齬に更に混乱を極めた。けれど彼が見せてくれたカレンダーや写真を見せて貰って、私は漸くこれが現実なのだと納得する。私が彼と別れた時、私は植物状態にあったのだ。

 つまり、つまりだ。私が彼と別れて、彼が結婚しているのを見ていたのは、所謂白昼夢のようなもの。現実ではなくただの夢だったのだ。

 パラレルワールドに移動したの? だとか、もしかして私自身の愚かしくも優しい夢の世界に入ってしまったの? 余りにも現実味のあった夢を体験しただけに、そんなオカルト染みた事すら考えた。


 それでも私は嬉しい。

 彼はずっと事故に遭って植物状態にあった私の側で、私の目覚めを待っていてくれた。それはどれ程辛く苦しかった事だろう。ああ、本当に私の知る現実が夢で良かった。だって私は彼をもう失わなくて済むのだから。


「愛しています」

「ああ、俺もだ」


 彼の腕の中で、私は微笑んだ 。


主人公:事故で二年間植物状態にあった女性。

彼:主人公を溺愛する御曹司。主人公の優しい人柄に惹かれ、植物状態の主人公の目覚めを長く待っていた

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