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頑固な私と誠実な貴方  作者: 白石 玲
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2015年2月20日の私

   2月20(金)からの私  ―――大型犬と私―――


『お願いします!』


 話は少しさかのぼって1月の終わり。私は透から、イタリアに招待された。それはとても突然で、およそ計画的な透の行動とは思えないもので、でも、それでも透に会いたい気持ちのほうが勝っていた私は、主任と藤堂に無理を承知で頭を下げた。

『俺はいいですよ。できる限り代わります』

 いつも通りのへらりとした微笑みとともに藤堂はふたつ返事でOKしてくれた。

『これが藤堂の頼みだったら一蹴なんだが、田部井じゃそうもいかないな』

『主任ってば、俺だって割とまじめに働いてるじゃないですか』

『なに言ってんだ。今年に入って遅刻2回もしてんだぞ?』

『ははは・・・』

 そんな二人に救われて、私は2月の初めから2週間のヨーロッパ旅行へと出かけて、そして、今日にいたる。


「田部井さん、俺、こんなつもりじゃ・・・」

 私がいない間の大部分のシフトを請け負ってくれた藤堂に私は大量のイタリア土産のチョコレートとミュージカルチケットを渡した。

「それは私からじゃないわ。透から。それから、チョコレートは結衣ちゃんと分けて」

「あ、はい・・・って、こんな高価なもの、受け取れませんよ」

 今回のチケットは最高ランクの席でかなりの高価品。透が縁のあるクライアントに頼んでようやく入手したものだ。

「結衣ちゃんもミュージカル好きでしょ?ふたりで行って」

「あ、はい・・・って、こんな高価品、田部井さんにもらったなんていったら、俺、結衣ちゃんに叱られちゃうんですけど」

 なんて藤堂は子供みたいなことを言う。

「どうして?」

「結衣ちゃんってとってもしつけが行き届いたお嬢さんなんです。なので、俺はいい子にしてないと結衣ちゃんに捨てられちゃうんです」

 つくづく藤堂は犬のようだ。結衣ちゃんは大型犬を飼い始めたらしい。

「じゃあ、飼い主さんのほうに渡すわね」

「へ?」

 戸惑う藤堂からチケットとチョコレートの半分を受け取って私は結衣ちゃんにメールをした。


―――お久しぶり、田部井です。ちょっと会いたいんだけど、週末、時間あるかな?―――


 そんな私のメッセージに、結衣ちゃんはすぐに返信をくれた。


―――土日休みなんで明日も明後日も暇ですよ!いつでもOKです♡―――


 相変わらず可愛いメールに頬が緩む。なんか、彼女からメールをもらってる彼氏の気分だ。


「ちょっと田部井さん!結衣ちゃん俺の彼女なんですけど!俺の許可なく勝手に誘わないでもらえます?」

 ふと振り向けば藤堂が後ろからのぞき込んでいた。

「のぞき見なんてお行儀悪いわね。飼い主さんに言いつけるわよ」

「ええっ!それはダメ!勘弁してください!それじゃなくても玲ちゃんに今年の遅刻回数をばらされたばっかりなんですよ!」

 普段のポーカーフェイスはどこへやら、焦りまくって口止めする藤堂が面白くてしばし笑う。

「じゃあ、いい子にしてなさい」

 しゅんと肩を下げた藤堂はおとなしくフロントへ戻っていく。その後ろ姿を見送って、私は明日のランチの約束を取り付けた。


 さあ、透。あなたの言いつけ通り私は作戦を決行するわね。




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