2015年1月23日の私
2015年1月23日(金)の私 ―――出会い―――
「そんなぁ!」
翌日、早朝出勤してきた藤堂と入れ替わりに帰るとき昨日の彼女の話をすると、目に見えて落胆した。
「結衣ちゃん・・・来るなら俺に連絡くれればよかったのに・・・」
どうもこの様子では藤堂は未だ彼女と付き合えていないらしい。
「うん、あんたに会って預けるつもりだったみたいよ?」
「どうして田部井さん、昨日勤務だったんですか?」
慰めるつもりで言ったのに、まるで子供のように意味の分からないことを言い始めた。
「あんたが帰ったからに決まってんでしょ」
「どうして俺、昨日18時あがりだったんですか?」
「知るか!」
もう、イライラしてきた。
「田部井さん、最近怒りっぽいですよ」
「余計なお世話よ!」
言われてみれば、半分は八つ当たりかもしれない。自分は彼氏と超遠距離恋愛中な上に時差と仕事のおかげでろくに連絡も取れない。それに引き換え目の前の後輩は、会おうと思えばいつでも会える距離の相手とたった何分か差ですれ違っただけでシフトにまで文句を言う始末。
「田部井さん・・・話聞くだけなら、俺、聞きますよ?」
声を荒げた私を宥めるように藤堂がいう。入社してきた頃からこうだった。私は割と厳しくて、藤堂はおっとりとして、よく言えばおおらか。悪く言うとちょっとだらしがない。何度かに一度は声を荒げる私を、藤堂は怖がらずに宥めようとしてきた。
「怒鳴ってごめん。ありがと。でも、藤堂に言っても、理解してもらえないと思う」
「どうしてですか?」
「んー・・・藤堂が男だから、かな?」
自立したひとりの女でいて、だれにも頼らなくても生きていけると証明したい。でも、結局は透がいなくなってたった数日でこんな気持ちになって、後輩に宥められて・・・仕事をすべてにする男のようにはなれない。そう考えている時点で、私は男女差別を自分の中に確立している。
「じゃあ、女の子だったらいいんですね?」
「・・・玲ちゃんは若すぎるわよ」
女子高生の彼女と私じゃまず、恋愛観が違う。
「玲ちゃんは無理ですよ。三井くんの気持ちにも気づかないほど“ぽやん”ってしてますからね」
藤堂がにこりと笑ってiPhoneを取り出した。
「だから、結衣ちゃんに聞いてもらいましょう。どうせ田部井さん、結衣ちゃんに何かお礼したいんですよね?」
「あのさ、お礼したい私が話聞いてもらったら意味ないでしょ。彼女の迷惑になるわよ。そんなこと頼んだらあんた嫌われるわよ」
藤堂は初めて会った時からあまり人の話を聞かない。とてもマイペースに事を運んでしまうのだ。
「大丈夫です。結衣ちゃんはとっても優しくていい子なんで」
「それ、惚れた欲目じゃない?」
「とりあえず、明日のランチでいいですかね?結衣ちゃん、イタリアンが好きなんで、店は俺に選ばせてください」
何にも答えていないのに、もう話は進んでいる。
「12時に横浜駅でいいですか?」
「ちょっと藤堂!彼女が嫌がるでしょ!」
ぽんぽんと彼女にメッセージを送っているのか、それともイタリアンレストランを検索しているのかわからないが藤堂を止める。
「え?でも、結衣ちゃんが明日の12時でいいって。甘いもの大好きなんで、必ずデザートつけてあげてくださいね。あと、コーヒー飲めないんで、食後は紅茶。できればダージリンで」
藤堂が突き付けてきたiPhone画面には・・・
―――私はOKだけど、お話聞いても力になれないかも?田部井さんが良ければ大歓迎だって伝えて♡―――
「ね?最高にいい子でしょ?」
「あんたにはもったいない」
「ひどいなぁ」
困ったように笑いながら藤堂は私に彼女のアドレスと番号を送り付けてきた。
「じゃあ、よく聞いてもらってきてくださいね。できれば結衣ちゃんからの俺の評価も聞いてきてくださいね」
俺は明日も仕事なんで。なんて笑っていいながらロッカーに行ってしまった。
透、もしかしたら、楽しいことが始まるかもよ?
明日に続く・・・




