2015年1月22日の私
2015年1月22日(木)の私 ―――出会い―――
「やっぱりきついよ・・・」
透がイタリアへ行ってしまってからまだ2週間ちょっとしかたっていないのに、私のこの弱さはなんなのだろう。
どんなに離れていても、メールも電話もいつでもできる。そう思ってやっと納得して、自分はそんなに弱くないと過信して、お互いがしっかりと自立している透と私なら、何があっても大丈夫・・・なんて、甘すぎたのだろうか?
「何ため息ついてるんですか?」
「別にため息ついてないわよ、あんたじゃないんだから」
頬に缶コーヒーがあてられて振り向くと、この上なく柔らかく微笑んだ藤堂が立っていた。これじゃあ、いつかの逆だ。
「ついてましたよ。上条さんとなんかありました?」
「ない。何もなすぎて・・・何もない」
ぼんやりといえば、藤堂が笑い出した。
「日本語としておかしいですよ、今の」
「余計なお世話」
「とりあえず、元気出してください。俺、お先に失礼するんで」
時刻は18時。そろそろ仕事に戻らなければならない。少し困ったように微笑む藤堂を従業員通用口から押し出して、フロントへ戻った。
「あの・・・」
「はい、チェックインですか?」
キャメルカラーのロングコートの美人がフロントにやってきた。
「いえ、とう・・・あ、田部井里佳さんですか?」
彼女はフロントの奥にさまよわせていた視線を私の胸元のネームプレートにとめて嬉しそうに微笑んだ。でも、ネームプレートに書いてあるのは R.Tabei “里佳”とは書いてないはず。
「はい、そうですが?」
「これ、あなたのですよね?」
彼女が差し出したのは私の従業員証だった。今朝見つからなくて、裏口の警備室で名前を署名して入ったのだ。
「どこで?」
「今日、お昼に乗ったタクシーの中で拾ったんです。勤務先がここだったので、警察に預けるよりもこのほうが早いと思って」
そう言って彼女はにこりと微笑んだ。
「ありがとうございます。あの、この近くの方ですか?」
何かお礼がしたい。が、いま勤務中だ。それなら、後日にでも・・・。
「いえ、ここで知り合いが働いているので、彼に預けようと思ってきたんです。でも、先に田部井さんにお会いできてよかったです」
そう言った彼女の首元のマフラーには見覚えがあった。
「もしかして、藤堂の?あ、でも、藤堂、ついさっき帰ってしまいまして」
藤堂の奴、なんていうタイミングの悪さなの?彼女がせっかく訪ねてきたのに(私の落とし物届けにだけど)数分差で入れ違いになるとは・・・。
「いいんです。彰には特に用事ないので。では、私はこれで」
彼女はにこりと微笑んで私に頭を下げて帰ってしまった・・・お礼しようと思ってるのに、名前も聞けてないじゃん。まあ、藤堂に訊けばいっか。
透、もしかしたら、これはいい出会いかもよ?
明日に続く・・・




