7話 積み上がる疑問
歩き始めてすぐに、再び空狐は口を開いた。
「続いては、私や主様がどの様にしてこの世界に来たのかをお話ししたいと思います」
「その話を聞く前に確認したいんだけど、やっぱりここって地球とは違う世界なの?」
「はい、その通りです」
今までの事から薄々気づいてはいたが、 やっぱり、ここは異世界なのか……。
「じゃ、俺は漫画とかラノベにあるような感じで誰かに呼ばれてこの世界に連れてこられたの?」
「はい、転移系の魔法によって連れてこられたんだと思います。魔法陣による転移なので、少なくとも人為的なものです」
異世界に行けないかなと思った時が俺にもあったが、いざ異世界転移させられると傍迷惑な話だな。
「あれ?そういえば、空狐はどうやってこの世界に?」
「主様が護符状態の私を家に忘れましたよね」
「…?何時の話?」
「今朝のことです。覚えてませんか?」
……あ!思い出した!
そういえば、急いで部屋を出たときに何かの紙が落ちたな。
あの時床に落ちたのは栞─いや、護符だったのか!
「どうやら思い出したみたいですね」
俺は頷く。
「実は、主様は気づいてませんでしたが、度々私を忘れいるんですよ」
「え、マジか」
忘れた事なんてあったかな……。
「はい、マジです。そのたびに人化して、隠れながら隙を見て主様の鞄の中に忍び込んだんです」
あー、普段、入れない場所に栞─護符が入ってたのはそれが原因か。
「それにしても、なんで、隠れて行動してたの?」
「狐耳と尻尾は隠してましたが、それでもばれる可能性があったので。もし狐耳や尻尾を見られたら、確実に話題になると思い、主様にも迷惑が掛かると思いまして」
それはそうか、いきなり狐耳と尻尾を生やした女の子が現れたら、少なからずめんどくさい事になるだろうな。
「実はですね、ここから本題に戻るんですが、学校の中にも忍び込んだ事もあるんですよ」
「学校にも!よくばれなかったな」
そう言うと、空狐は得意げな表情をして、胸を張った。
「今日も主様は私を忘れたので隠れながら主様を追って、学校に向かいました」
……全く気がつかなかった。
「誰もいない校舎を歩い「ちょっと待って!本当に誰もいなかったの!?」…はい、音も気配もありませんでした」
「平日なのに?」
「はい。恐らくは、学校に居た全員が異世界転移したのだと思います」
「それって間違いないの?」
「はい、漂っていた魔力の残滓が主様を転移させるために使われた魔力と同じものだったので」
「何で学校全員が転移させられたか分かる?」
「すいません、そこまでは分かりません」
まぁ、そうだよな。
話を聞く限りじゃ俺以外の全員が転移した後に学校に着いたんだし、知らないのが当然だ。
それにしても、一体何が目的で俺達を呼んだんだろうか。
生徒だけでも三五〇人くらいは居たはずだ。
一体全体何のためにそんな大人数を集めたのだろうか、みんなはどこにいるのだろうか、疑問が減るどころかドンドン増えていく。
「先程の続きですが、誰もいない校舎を歩いていたら、主様の呻き声が聞こえたんです。急いで近づいてみると、転移の魔法陣が発動してこの世界に来ました」
「そうだったんだ」
あの最後に聞こえた声は空狐だったのか。
「こっち転移した経緯は分かった。ところで話は変わるけど、魔法陣が発動する前、俺の近くに誰か居なかった?」
空狐は首を振る。
「いえ、誰もいませんでしたが」
「音とか…そうだ、確か喋ってたな。俺じゃない声とか聞こえなかった?」
「いえ、音も気配もありませんでした」
確かに誰か居たはずなのに、一体どういう事なんだ……。