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4話 遭遇

 今俺は全力で走っている。


 え、何で走っているのかって?


 それはもちろん追われているからさ。


 んで、そんな逃げてる俺を追ってくるのが─後ろにいる巨大な蜘蛛だ。


 走る速さはそこまで速くないが、心なしか徐々に巨大蜘蛛との距離が近づいて来てる気がする。


 糸を一度もはかれないのは不幸中の幸いだが、それでも巨大蜘蛛に捕まるのは時間の問題だろう。


「どうしてこうなったぁぁぁ!!」


 時間は数分前に遡る─。



◇◆◇◆◇◆◇◆



 川を探して歩き始めて体感でおよそ数十分後、俺は少し開けた場所に着いた。


 そこは今までの場所とは違い、空に木の枝が重なっておらず、雲一つ無い青空を見ることが出来る。


 直接多くの太陽の光が地面の草や木に当たっているためか、他の場所と比べて緑が多い。


 何か食べれそうな実はないか探してみた。


 んで、結果だが、実自体はあるにはあった。


 落ちて潰れたり、噛み千切られたりなどして食い散らかされていたけどな。


「はぁ、見事に全部食べられてるな……」


 食べ物を確保できると期待していた俺は溜息を吐いた。


 しばらく、休んでいると─


 ドーンッ、ドーンッ─


 遠くから何かがぶつかる音が聞こえるな。


 ドーンッ、ドーンッ─!


 ……音が近づいてきてるな。


(やな予感がする……ここから離れた方がいいかもな)


 そう思い、音が聞こえる方向と反対の方に走り出そうとすると─


 ドーンッ!!


 巨大な蜘蛛が姿を現した。


 反射的に逃げる俺。


 その俺を追いかける蜘蛛。



◇◆◇◆◇◆◇◆



 んで、今に至る。


 はい、回想終了!


 なんで蜘蛛がこんなに大きいのかとか、他にもいろいろと足を止めてゆっくりと考えたいことが山ほどあるが、今はそんな余裕はない。


 足を止めたら確実に終わる。


 蜘蛛による捕食エンドとかマジで勘弁してほしい。


 そんな事を考えながら必死に走り続けていると、遠目に橋が見えた。


 見るからにボロボロの橋だ。


 上手くいけば蜘蛛の重さで橋が崩れて谷に落とせるかもしれないな。


 どのくらいの深さかは分からんが、まぁ、時間稼ぎくらいにはなるだろ。


 問題は橋を渡った時に板が抜けないかだな。


 渡るべきか渡らずに別の方法を探すべきか……。


 悩んでいる内に橋に辿り着いてしまった。


「っ…えーい、儘よ!」


 俺は一瞬の考えの中で橋を渡ることに決めた。


 ……落ちないように祈りながら。


 いざ、橋を渡ろうとすると─


「何か変な音が聞えるんですけど……」


 何かが千切るような音が聞こえた。


 音がした方を見てみると橋を支える紐が一本千切れていた。


 一気に血の気が引くのを感じた。


(これもしかして落ちるんじゃないか?)


 そう思った俺は恐る恐る下を見る。


 めっちゃ深い。


 冗談抜きでめっちゃ深い。


(これは落ちたら確実に死ぬな……)


 そう思い、俺は慎重にしかし足早に橋を渡り始める。


 その甲斐あってか、なんとか落ちることなく渡りきることが出来た。


 後ろを見ると、ちょうど巨大蜘蛛が橋を渡ろうとしていたところだった。


(……ちっ、駄目か)


 巨大蜘蛛が危なげなく橋を渡ってきた。


 真ん中まで渡った所で俺はその場から離れようと背を向けると─


 ブチッ─


 紐が千切れる音が聞こえた。


 ブチブチブチッ─


 振り返ってみると、橋を支える紐が立て続け千切れ始めた。


 ブチッ!


 あ、最後の紐が切れた。


 依然、巨大蜘蛛がこっちに向かって走ってくるが、渡りきれずにそのまま谷底に落ちていった。


 ─ドゴーンッ!!


 落ちた衝撃で地面が揺れる。


「……」


 しばらくして揺れが収まる。


 それから、しばらく待ってみたが何も起きないし、何も聞こえない。


「……死んだか?」


 俺は不安を解消したいが為についフラグを立てるような事を言ってしまった。


 それがいけなかったのか谷底から何かが空高くまで飛び出した。


 飛び出した何か─いや巨大蜘蛛が俺の目の前に音を立てて着地する。


 俺は着地時の揺れと急に巨大蜘蛛が目の前に落ちてきた恐怖で腰を抜かしてしまった。


「……マジかよ」


 複眼が一斉に腰を抜かした俺を睨んでくる。


 心なしか笑っているように見えた。


 その瞬間に今までのいろんな思い出が脳裏を駆け巡っていった。


(あぁ、これが走馬燈か……)


 俺はそう直感的に理解する。


 ゆっくりと巨大蜘蛛近づいてくる。


(俺、ここで終わるのかぁ)


 もう、逃げることを諦めた俺は、来る痛みに耐えるように目を閉じて歯を食いしばる。


(……)


(………)


(……………?)


 だが、何時になっても痛みがこない。


 恐る恐る目を開けるとそこには─


 血を噴き出して倒れる巨大蜘蛛とナイフを持った狐の耳と狐の尻尾を生やした銀髪の少女が立っていた。


 背丈は中学生のくらいあり、服装はよく見慣れた─てか、今朝俺が制服に着替えるときに部屋に投げ置いた服を着ている。


「……ほぇ?」


 いろんな感情が入り交じり、俺の口から間抜けな声が漏れる。


 その声に反応したのか、少女はこちらを向く。


 少女は表情を固くしながら俺の体に顔を近づけてジロジロと見始める。


 突然現れた狐の耳と尻尾を生やした謎の美少女にジロジロと見られるというよくわからない状況に困惑しながら俺は身を固くした。


 しばらくして少女は俺から離れた。


「うん、怪我はないようですね。よかったぁ」


 狐の女の子が安心したように顔を綻ばす。


「あ?え、えっと、き、君は一体?」


 混乱しながらも疑問を口に出す。


「あ、そっか、直接会うのは初めてでしたね。では改めまして、こほん、初めまして空狐と申します。主様を守るためにこの世界まで追ってきました」


 そう言うと、少女は微笑んだ。

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