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2話 日常の終わり

 連続投稿2話目になります。

 目が覚めた。


 外を見ると明るくなっている。


 どうやら気がつかない内に寝ていたようだ。


 寝起きすぐのため頭が働かず、ボーッとする。


 学校に行かなきゃと思い体を起こし、時計を見ると─


 針は一二時を指していた。


 目を擦って再び時計を見る。


 変わらず針は一二時を指している。


「ファ!!?」


 一気に頭が覚醒した。


 ヤバイヤバイヤバイヤバイ!


 何でこんな時間まで寝たんだ、いくら何でも寝過ぎだろう。


 去年、皆勤賞を取った俺が寝坊で遅刻するなんて!もしかしてまだ夢の中?(錯乱中)


「ってか、混乱してる場合じゃねぇ。早く準備して行かないと!」


 俺はパニックになりながらも白のTシャツとジーパンを脱ぎ投げ、素早く制服に着替えて、鞄を持ち、部屋から出た。


 何か落ちた気がしたが、今の俺に気にしている余裕はない。


 ドタドタドタッ、ガチャッ


「行って来ます!」


 階段から滑るようにして下り、家を出た。


 ガチャンッ─


 鍵を閉める音がした後、西城家には再び静寂が訪れた。



◇◆◇◆◇◆◇◆



 今思えば、俺の運命が大きく変わったのは、おそらくこの時だろう。


 もし、俺がこの時寝坊しなければ。


 もし、俺がパニックにならず、冷静に仕度できていれば。


 もし、俺が机から落ちた物を確かめれば。


 もし、俺が学校に向かう途中でお守りにしている栞を家に忘れたことに気がつけば。


 次の日も平和で平凡な何時も通りの日常を過ごしていたことだろう……。


 少なくとも俺はこの時までそう信じていた。


 この事に気がついたのはもうしばらく先の話だ。



◇◆◇◆◇◆◇◆



 走り始めて数分後、家と学校の間にある商店街まで辿り着いた。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 何時もならのんびり歩きながら学校に向かうが、今日の俺は足を止めることなく、ひたすらに学校に向かって走り続けている。


 静かな商店街を抜けると、学校が見えてきた。


 俺が通っている学校は創立七〇年を越え、中庭がとても広いことやその中庭に巨大な木があることで有名で、それ以外は普通の学校だ。


 木はおそらく樹齢百年くらいは経っているだろう。


 実際、そう思えるくらい大きな木だし、この学校が建つ前から生えていると学校説明会の時に貰ったパンフレットに書いてあったので、少なくとも七〇年以上経っているはずだ。


 そんな事を考えていると学校の校門に着いた。


「はぁ、はぁ、はぁ、……ふぅ」


 一度止まり、乱れた息を整える。


 校舎に埋め込まれている時計を見ると、一二時二〇分を指している。


 なんとか昼休み前には着くことが出来たな、と思いながら、下駄箱に向かおうと校門を越えると─


「……!!」


 ゾクッと背筋が凍るのを感じた。


 後ろを向くが誰もいない。


(気のせいか?)


 そう思い、下駄箱へと向かった。



◇◆◇◆◇◆◇◆



 靴から上履きに履き替え、自分の教室がある三階に向かう。


(……?)


 違和感に気づいたのは二階に差し掛かった時だった。


(人の声がしない?)


 今はまだ授業中のはずだ。


 なのに教師や生徒の声が全く聞こえない。


 いや、まぁ、授業中だからっていうのもあると思うが、少なくとも授業終了十分前くらいになると、自分がいる教室ではざわつき始める。


 しかし、今日はそのざわつきが全く聞こえない。


 三階に到着しても全く聞こえない。


 テストがあるなら話は別だが、今日はテストとかは無かったはずだ。


(おかしい……)


 そう思った俺は、足早に教室に向かった。


 教室の前に到着しても声が全く聞こえない。


 勢いよく扉を開けると─


 そこには誰もいなかった。


「……あれ、誰もいない」


 そこで俺は一つの結論に思い至った。


「もしかして今日って祝日?」


 祝日だったら人の声がしないのも納得できる。


 日付を確かめようとスマホを取り出そうとすると─


 ガンッ!


 突然、頭に強烈な痛みが走った。


 俺は痛みに堪えきれず、床に倒れ込んでしまう。


「がぁ、な、ぁ」


 体が動かない。


 息をするのも辛い。


 痛みで意識が徐々に薄くなっていく……。


 すると突然、頭の上から女性の声が聞こえてきた。


「頑張って」


「な、にが……」


 意味が分からなかった。


 何を頑張れと言うのか。


 女性に疑問をぶつけようとするも、口が開かず、言葉が続かない。


「じゃあね、機会があればまた会いましょう」


 タン、タン、タン─


 別れの言葉を最後に足音が遠ざかっていった。


 タッタッタッ─


 そのすぐ後に誰かが走って近づいてくるのが聞こえた。


「主様!」


 誰かの心配するような声を俺に掛けながら体を揺らす。


(りあるであるじどのっていうひととはじめてあったな……)


 そんなことを思ったのを最後に俺は完全に意識を手放した。


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