11話 睨まれたり溜息吐いたり
「それと今までの反応を見るに、もしかして最近この世界に来たでしょ?」
クオンさんは鋭い目で俺を見る。
それに反応して咄嗟に身構える、俺。
「別に敵って訳じゃないんだし、そんな身構えなくていいじゃない。危害を加えるつもりなんて無いし、それにあなたが迷い人なら私はリクヤ君の味方よ」
クオンさんが口をとがらせた後に微笑みながら言う。
その間に俺はじっくりクオンさんの目を見る。
……どうやら嘘は言ってないみたいだな。
「すまない」
「よいしょっと、気にしてないから安心して」
クオンさんが近くにあった石の椅子を俺の前に運びながらそう言う。
「そう言えば、さっき言ってた迷い人ってなんなんだ?」
「んー、そのまんまの意味だよー」
石椅子に座り、リラックスしながら答える、クオンさん。
「何らかの理由で異世界からこの世界に迷い込んだ人のことを迷い人って言うんだ。ついでに言うと、召喚魔法によって喚ばれた人や自力でこの世界に来た人は渡り人って言うんだよ」
この場合俺の場合はどっちになるんだ?
召喚魔法によって召喚されたっぽいけど、この世界に来た時まわりに誰もいなかったから─
「迷い人、かな」
「なら、リクヤ君の味方だよ」
「…なんでクオンさんは俺の─迷い人の味方をするんですか?」
「まあ、国から迷い人を保護せよってランク問わず冒険者全員にお達しが来たからね」
……なんだろう。
嘘は言ってないと思うが、何かを隠してる気がする。
………気のせいだろうか。
まぁ、いいや。
それよりも気になることがある。
「そういえば、クオンさん」
「なあに?」
「俺以外に迷い人とか、渡り人っているんですか?」
「いるよ、三〇〇年以上前に喚ばれた勇者様や今の七英雄様たちも召喚魔法によって喚ばれた渡り人だよ」
三〇〇年前って江戸時代真っ只中じゃないか!
そんな昔の人も召喚されたなのか……。
「今のって事は七英雄は生きてるんですか?」
もし生きていれば七英雄とやらに会い、元の世界に帰れる方法─方法じゃなくても手掛かりくらいは見つかるかもしれないな。
「恐らく全員生きてるよ」
「…?恐らくってどういう事ですか?」
「七人の内四人は居場所が分かってるけど、残りの三人が行方不明になってるの。恐らくって言ったのは英雄とまで言われた方たちだから、まあ、生きてはいるだろうと思って、ね」
クオンさんは溜息を吐きながら続けて言う。
「最も仲が良いと言われたシライシ様やタチカゼ様すらもその三人の居場所は分からないそうよ」
もう一度溜息を吐き、「今も捜索しているらしいわよ」と付け足した。
「……ずいぶん溜息吐きますね。幸せ逃げちゃいますよ?」
「すでに憧れのカミジョウ様がどこかに行っちゃったわよ」
もう一度溜息を吐く。
「あの、聞きたいことがあるんですけ「今更だけど無理して敬語使う必要はないわよ」…ん、分かった」
無理して慣れない敬語を使うのはやっぱり疲れるな。
正直助かった。
今度は俺が溜息一つ。
「話を遮っちゃってごめんね。何か聞きたいことがあるんだよね?」
クオンさんはそう言いながら俺に続きを促す。
「カミジョウ……様やタチカゼ様たちの事をも少し教えてくれないか?」
カミジョウ様の事を呼び捨てにしたら怖い顔でクオンさんに睨まれた。
……めっちゃ怖かった。
怯えているとクオンさんは「任せてよ!」言い、興奮した様子で七英雄の事─特にカミジョウ様の事─をマシンガントークを始める。
このマシンガントークは空狐が帰ってくるまで続けられるのであった……。