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10話 魔力欠乏症


 目が覚めて体を起こすと、空狐じゃない見知らぬ黒髪で軽装の冒険者みたいな格好の女性がすぐそばに立っていた。


 ぼーっと女性を見てると、視線に気づいたのか俺の方を見る。


「お、やっと目を覚ましたね」


「誰?」


「初めまして、私はクオリアス・アップバーだよ」


 いや、誰だよ。


 てか、空狐はどこ行ったんだ?


 結界張って見張ってるんじゃなかったのか?


 洞窟を見渡すが空狐はどこにもいない。


 一体どこに行ったんだ?


 ……まさか俺が情けなくて見捨てたのか?


 今思い出したが、確か俺は全身強化しようと魔力を全身に流そうとしたら失敗したのか意識を失ったんだ。


 ……まさかその所為で空狐に愛想を尽かれたんじゃないだろうか。


 どんどんネガティブ思考になっていく。


「えいや」


 そんなかけ声とともに頭に強い衝撃が走る。


「いてっ!」


 何事かと思い前を見ると、どうやら先程の女性─クオリウスさんが頭を叩いたようだ。


「いきなり何するんですか!?」


 声を荒げて抗議するも、クオリウスさんは無視して腰につけたポーチから紫色の液体が入った試験管のようなビンを取り出した。


「とりあえず、これ飲みな」


 笑顔で差し出してくる、クオリウスさん。


「え、嫌です」


 速攻で断る、俺。


 ただでさえ調子が悪いのに、見るからに体に悪そうな色をしてる液体を飲んだらさらに体調が悪くなるに違いない。


 そして体調が悪くなった俺はこの洞窟で一人孤ど─


「そいや」


 ネガティブな事を考えていると口の中にビンを突っ込まれる。


「ぅぐぅ……、ごほっごほっ」


 飲んじゃった……。


 しかも、マズい……おぇ。


「本当に何なんですか」


「そんな事より体調はどう?まだ辛い?」


 抗議の声を上げるも、またスルーされる。


「あんな色の液体飲まされたらさらに辛く……あれ?辛くなくなってる」


 さっきまで体が重くて怠かったのに、今ではすっきりし、体調が良くなっている。


 体を動かしてみたがどこにも異常はない。


 むしろ、紫色の液体を飲む─正確には飲まされただが─前より調子が良い。


「うん、回復したみたいだね」


 クオリアスさんは「良かった、良かった」と頷く。


「えっと、俺を助けてくれたんですか?」


「ん、まあ、紫ポーション飲ませただけだけどね」


「紫ポーション?」


「体力と魔力を回復してくれるポーションよ」


 ……なんだかよく分からないが助けてくれたみたいだ。


 冷静になってきた俺は今までのクオリアスさんに対する言動を思いだし、顔を青ざめる。


 いくら何でもあれは助けてくれた人に対する態度じゃない。


「あ、あの!さっきは声を荒げたりしてすみませんでした」


 勢いよく頭を下げる、俺。


「まあ、魔力欠乏症なら仕方がないよ」


「魔力欠乏症?」


 俺は首を傾げた。


「魔力欠乏症を知らなの?」


 クオリアスさんは驚いたように目を丸くする。


 しかし、すぐに何かを思い出したように納得する。


「そう言えばあなた…えっと……」


「あ、クオリアスさん、俺の名前は西城陸野です」


「リクヤ君ね、わかったわ。あ、私の事はクオンって呼んで」


「分かりました」


 お互いに「よろしく」と言って握手をする。


「さてと、軽い自己紹介も終わったところで、魔力欠乏症について説明するね」


「お願いします」


「魔力欠乏症とは、魔力の使い過ぎなどの原因により、体の中の魔力が極端に少なくなった時に発生する症状のことよ」


「危険なんですか?」


「魔力欠乏症になると、思考がネガティブになったり、性格が荒れたりするの。…中には思考がネガティブになり過ぎて自殺した人もいるのよ」


 最後の言葉を聞いて、一斉に鳥肌が立つのを感じた。


 クオンさんに助けて貰わなかったらもしかしたら俺も……考えるのはよそう。


 そんな事考えるより先に聞くことがあるしな。


「クオンさん、聞きたいことがあるんですけど…」


「ん?なあに?」


「俺の近くに狐の獣人?が居ませんでしたか?」


「空狐ちゃんの事?」


「そうです、空狐です!彼女はどこに行ったんですか!?」


 俺は前のめりになりながら空狐の居場所を聞いた。


「ちょ、ちょっと落ち着いて」


「あ、すみません」


 少し興奮してしまったな。


 そう思った俺は、深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。


「…落ち着いたみたいだね」


 そう言うとクオリアスさんはこれまで事を説明してくれた。


 簡単に説明すると、クオリアスさんを含めた五人の冒険者が依頼を完了してギルドに戻る途中、休憩をとるためにこの洞窟に来たそうだ。


 そこで、空狐と倒れた俺に遭遇したらしい。


「んで、私はリクヤ君の看病を、他の私の仲間と空狐ちゃんは食料調達することになったんだ。あ、空狐ちゃんから伝言あるよ『主様、空狐が栄養になる物を取ってきますので待っていてください』だって。多分あともう少しすれば帰ってくると思うけど」


 それを聞いた俺はほっと安堵すると同時に嬉しさも込み上げてくる。


「あ、そうだ、私もリクヤ君に聞きたいことがあるんだけど」


「何ですか?」


 恩人の頼みごとだし可能な限りは答えたいな。


「あなた迷い人よね?」


「……」


 迷い人ってなんだ?


 俺は聞き慣れない単語にどう答えて良いか分からずに黙り込んでしまった。

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