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「《マスター》はバカバカです。もういっそバカバスターって呼んでやります」
意味がわからなかった。
《チルル》がどこかへ行ってから、俺達は《制圧下》にあった村へと向かっていた。
サラが言うには《制圧》は解かれているとの事からだ。
残してしまった生き残りも気になるし。
「聞いてますか、バカバスター!」
定着してしまうのかしら。
俺はこんなふざけた発言するような奴だったのかなあ。
それとも俺と同じで、サラは生まれてからの経験で俺とは変わって行っているのだろうか。
そこら辺はまだわからない。
「今度あんなことしたら舌噛みますからね! 私、舌噛みます」
やっぱ俺かなあ。よくわからないことをギャグっぽく言ってだいたい外す。
「聞いてる聞いてる。ところでこれ何だけどさ」
サラの発言をそこそこに、
俺は《チルル》から貰った《ディスク》を取り出す。
サラはジト目こそ向けてはきたが、どうやら答えてくれるらしく、
《ディスク》をまとめて3枚持ち上げる。
「この3枚は何だかわからないです。
あの人の言っていた呪われた装備っていうのはこれじゃないですかね。
零刀、一ノ盾、虚数鎧っていう名前しかわからないです」
「わかってんじゃん」
「茶化さないでください、名前しかわからないって異常ですよ?」
まあ、確かに聞けばだいたい何でも答えてくれてたもんな。
「ただ後の5枚は、どういうつもりなんですかね」
「どういうこと?」
「ただの滅茶苦茶強い装備です。
たぶんこれ装備したらそんじょそこらの《異界人》何て相手にもなりませんよ」
それは、なんだろう。
サラを守れってことかな。
「案外いい人なのかも?」
「《マスター》……いえ、バカバスター。拷問されたのにどんだけお人好しなんですか」
いやー、言い直さなくてもいいんじゃないですかね?
「そっか、じゃあ協力者として働くことへの前払い報酬ってことなのかな。
ありがたく使わせて貰おうよ」
《ディスク》を《具現化》しようとしたところで、サラが押し止める。
「ちょっと悪目立ちする見た目何で《鍛冶屋》でどうにかした方がいいかもです」
どんな見た目なんだろう。
まあさておき、それなら少し問題がある。
「《鍛冶屋》で見た目変えるお金無くない?」
実際、無一文です、俺ら。私、文無しです。
もはや私以外元ネタの原形がないな。外した。
「《マスター》!」
「おう!」
そんなこんなで目的地を前にした瞬間だ。
サラが俺の胸元に沈み込み、全体像が俺の脳内に浮かぶ。
180度方向転換、足を送り出す。
完全に揃った動作だ。
来た道が逆に流れ、俺たちが起こした風で草が舞う。
途中に居た運の悪いウサギが空高く舞い上がり、
それが落下するのを見届ける間もなく足を進める。
だがしかし。
「逃げなくてもいいよ」
返り血が流れ落ちるようなデザインの仮面をつけた男が、目の前に居た。
つまりは、逃げ出した相手に回り込まれた。
唐突に、俺の身体にごつい鎧がまとわりつき、
厳めしい盾、禍々しい剣、ついでに刺々しいブーツまでもが具現化された。
「相変わらず凄いね、君の《精霊》は。
ああ、そうそう。それでそれだよ。僕が君たちに会いに来た理由」
奪いに来たということだろうか。
《神衣憑依》を解かずに相対する。
そんじょそこらのプレイヤーではないが、勝つ必要はない。
「《鍛冶屋》でデザイン変えるならそのクラスだと金貨レベルだからさ、
僕がやるよ。動きにくいだろ?」
「「はい?」」
サラと声が被った。
「僕、《鍛冶スキル》の熟練度985あるから出来るよ」
それどの程度なのよと思った瞬間。
「ぶはっ!」
サラが噴いた。
水を含んでいたらそれは見事に《キリヤ》を水浸しにしただろうという、見事な噴きっぷりだ。
「あんた何やってんですか」
「《シズク》……僕たちの《リーダー》がこういうのに勘が働く子でさ」
その顔は、どこか誇らし気だ。
そしてそこからは、深い愛情も感じられた。
どうしてこんな人が《VW》何かプレイしていたのだろう。
しかも第二位の強さと言われるまでキャラメイクした。
それはつまり、残虐非道な行為を繰り返したという証拠だ。




