遅ればせながらビッグウェーブに挑戦
ビッグウェーブに乗り遅れた。
何てことはない。
いわゆる農ゲーの《GW》何て俺はやらないし、
善行を行うことでキャラクターメイキングを可能にする《HW》は性に合わなかった。
悪行を行うことでそれが出来る《VW》は都市伝説だと思っていた。
世間は今、一つのニュースで持ちきりだ。
VRMMO製作第一人者佐伯博士が作ったゲームがいわゆるデスゲームと化したらしい。
しかもただデスゲーム化した訳ではない。
彼女の作った三つのゲームである《HW》、《VW》、《GW》。
それら三つのゲーム世界が《GW》の世界を基調に一つになったらしい。
元々都市伝説とまで言われた《VW》の存在が明るみになっただけでなく、
既に少なくない死者が出ていることも相まって、朝から晩までそのニュースが流れている。
被害者たちの家族が涙ながらにインタビューに答えているがこいつらはわかっていない。
何がわかっていないのか。
その答えは、被害者たちは今頃歓喜に咽び泣いていることだ。
考えてみて欲しい。
ログアウトが出来ないという言い訳をして、奴らは大手を振ってRMMOをやり続けることが出来る。
死ぬ?
それは自分から接続した癖にゲーム内での生き方を知らないマヌケだけだ。現実世界だって俺みたいな、リアルの生き方を知らない人間からしてみればいつでも死ねる。
しかもリアルは強制接続だ。
さらにはお金を出して武器防具を買えば何とかなるものでもない。
ゲーム世界の方がよっぽど生きやすい。
残念だ。どうして佐伯は俺好みのゲームを作らなかったんだ。
《GW》事件から数か月が経過した。
今日も今日とて自分よりも年下の自称バイトリーダーに口汚く罵られ、
無意味にストレスを溜めてきた。
何か良いことねえかなー。
そんな風に道端の小石を蹴りながら歩いていると、
それは突然俺の目に飛び込んできた。
近所のゴミ捨て場に《GW》が捨ててあったのだ!
どうやら近所に被害者がいたらしい。
本当は《GW》を持っている奴は最寄りの警察に届けなければいけないのだが適当な被害者も居たもんだ。
しかしありがたい!
俺は小躍りしながら《フルダイブインターフェイス》に《GW》をインストールした。