表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/61

騎士たちとの攻防戦

 一方、体制を立て直した黄金の騎士たちは、武器を構えたままのジャンヌを睨め付ける。


「フン、こいつが民の希望だという聖女か。今度こそ本物なのだろうな?」

「そうよ。私があなた達の探しているジャンヌ・ダルクよ。あなた達の狙いは私なんでしょ。これ以上、関係ない人を巻き込まないで!」

「ハッ、平民如きが余に命令するでない。余は命令されるのが何よりも嫌いなんだよ」

「……そう。言ってもわからないなら、その体に直接教えてあげるわ!」


 ジャンヌは大きく跳躍すると、黄金の騎士目掛けて斬りかかった。


「クッ……」


 ジャンヌの突然の行動に驚いた黄金の騎士は、慌てて馬を引いて逃げる。


「やあああああっ!」


 地面に着地したジャンヌは、追撃の手を休めずに続けざまに黄金の騎士に斬りかかる。


「クッ、このっ! こ、こいつ……おい、余を助けるんだ! 早く!」


 ジャンヌの余りの猛攻に、黄金の騎士は溜まらず二人の部下に助けを求める。

 その言葉に反応した二人の騎士は、手持ちの武器でジャンヌへと斬りかかった。


「……チッ」


 二人からの同時攻撃をジャンヌは後ろに跳んで回避すると、一旦距離を取る。

 そのまま充分な距離を取ったジャンヌは、ルシオを庇う位置で立つと再び剣を構えた。

 一方、ジャンヌにやられ放題の黄金の騎士は、流れてきた汗を拭いながら武器を構えなおす。


「……どうやら聖女と呼ばれるだけの存在ではあるようだな」

「情報どおり、聖女の力は侮れないみたいですね」

「らしいな。なら……」


 三人は頷き合うと、馬から降りてジャンヌを三方から囲むように立って武器を構えた。


「我等の同時攻撃。見破れるものなら見破ってみろ!」


 黄金の騎士がそう叫ぶと、三人同時にジャンヌに襲い掛かった。

 真ん中から突進してきた黄金の騎士は、槍を後ろへ引き絞り、


「お前たち、余に合わせろ!」


 残りの二人に命令しながら槍を突き出した。

 ジャンヌは冷静に黄金の騎士の突き出した槍の軌跡を見極めると、首だけの動きで刺突攻撃を回避してみせる。そのまま黄金の騎士との距離を一気に詰めようとするが、後ろから現れた騎士が黄金の騎士の攻撃の隙を埋めるようにジャンヌに刺突攻撃を繰り出してくる。


「クッ……このっ!?」


 この攻撃に対し、身を投げ出してどうにか回避して姿勢を立て直そうとするが、そこには更に別の騎士が待ち構えていた。


「もらった!」


 大上段から振り下ろされる斬撃に、ジャンヌは手にした剣を天に掲げてどうにか防ぐ。


「くぅ……」


 予想以上の衝撃がジャンヌを襲い、堪らず顔を苦痛に歪める。

 だが、ジャンヌへの追撃はそれだけに止まらなかった。


「ジャンヌ、後ろだ!」

「――っ!?」


 ルシオの叫び声に、ジャンヌは膝の力を抜くと、相手の振り下ろされる力を上手く往なしながら真横へ転がる。次の瞬間、ジャンヌがいた場所に空気を切り裂く音と共に槍が通過し、騎士が振り下ろした剣と交錯する。

 金属がぶつかる音を耳にしながらジャンヌは体制を整えると、全力で駆けて相手との距離を取る。更なる追撃があるかもしれないと警戒するが、相手も一旦体制を整え直していた。

 どうやら先程の最後の攻撃でジャンヌを仕留められると思っていたらしい。


「つぅ……」


 ジャンヌは痛みに顔をしかめながら頬に手を当てる。

 どうやら敵の攻撃を完全には回避出来なかったようで、頬の切り口から血がとめどなく流れ出ていた。

 危なかった。ルシオの声が無かったら確実に後頭部に穴を開けられていた。

 ジャンヌは血で汚れた指を一舐めすると、深呼吸して相手の実力を分析する。

 見立てでは、敵の一人一人の実力はたいしたことない。一対一で相対すれば、圧倒するのは容易いだろう。ただ、三人の連繋は相当の鍛錬を積んだのか、正に一部の隙も無いといっても過言で無いほど完成されており、あの連繋を掻い潜って反撃を行うのは至難の業だろう。


「……でも、やるしかない」


 こんな開けた場所で、相手は一頭潰れているとはいえ馬を有し、こちらは身動きが取れない怪我人がいる以上、既に退却するという選択肢は無いのだ。

 ジャンヌは剣を構えなおすと、いつでも飛び出せるように腰を落とす。

 まだ戦う意思を見せるジャンヌを見て、黄金の騎士たちもまた、各々の武器を構える。


「余の攻撃を受けて生き延びるとは流石は聖女、ということか」

「だが、逃げ回るだけでは我々には勝てんぞ」

「次こそは、その命をいただく」


 三人は互いの顔を見合わせて頷くと、ジャンヌを三方から取り囲むようにして立つ。

 動き始めた黄金の騎士たちを見て、ジャンヌは囲まれる前にその内の一人に斬りかかろうとしたが、それを実行すれば、残りの二人はすかさずジャンヌに襲い掛かる気配がしたので止めておいた。


「そういえば……」


 彼等の作戦は、ライルがアルブル村でルシオたちに指南した戦い方そのものだった。その指南で、戦いの素人だったアルブル村の面々は、正規兵と互角に渡り合う事が出来た。

 そう考えるとなるほど、この戦い方は非常に理に適ったものかもしれない。

 ならば、とるべき策は……。


「戦いの最中に余所見とは、随分余裕だな!」


 響いた声にジャンヌが顔を上げると、目の前に黄金の騎士が迫っていた。

 黄金の騎士は、裂帛の雄叫びを上げて手にした槍を突き出す。


「聖女の命、もらったぞ!」

「甘いわ!」


 ジャンヌは突き出された槍を後ろに下がりながら叩き落すと、そのまま後退する。そして、間髪容れずに脇から現れた騎士からの刺突攻撃も叩き落し、ジャンヌは更に後退する。続く三人目の追撃も同じ様に下がりながら捌くと、


「フン、一転して逃げに転ずるとは、余の戦略に慄いたか!」


 一周して四連携目の追撃を仕掛けようとした黄金の騎士が迫る。

 ジャンヌは相手の挑発には乗らず、尚も下がりながら繰り出された攻撃を弾くと、続く二人の攻撃に備え、同じ様に下がりながら攻撃を弾き、往なしていく。

 そうした攻防を暫く続けると、四人の位置関係はジャンヌを取り囲む形から、縦に一列に並んだ形、それも縦に長い形になる。


「このっ、ちょこまかと逃げるな!」


 逃げてばかりでまともに戦おうとしないジャンヌに業を煮やした黄金の騎士が、三人の連携を崩してジャンヌに対して深く斬り込んで来る。


「ここっ!」


 黄金の騎士が突出するのを確認したジャンヌは、後退を中断すると一転して前へと踏み出す。

 この状況こそ、ジャンヌ望んだ展開だった。

 これなら三対一でも、相対するのは一人ですむ。

 攻勢に出たジャンヌを見て、黄金の騎士は自分が突出しすぎている事に気付く。


「しまっ……」

「やああああああああああああああああああああっ!!」


 ジャンヌは黄金の騎士に一気に肉薄すると、剣を振り上げて相手が持つ槍を弾き飛ばす。勢いそのままに二人目の騎士へと突撃し、驚いた相手が苦し紛れに突き出した槍を易々と回避すると、槍を真ん中から真っ二つにしてみせた。

 続く三人目は、前の二人が応戦している間に冷静さを取り戻したのか、ジャンヌが二人目の騎士を剣で追い払う隙を狙って襲い掛かってきた。

 完全に虚を疲れた攻撃だったが、相手の獲物が槍ではなく剣だったのが幸いした。

 同じ刺突攻撃でも、槍と剣ではリーチが段違いだ。ジャンヌは冷静に相手の攻撃を見極めると、自分に迫る剣先へと体を投げ出した。


「――っ!?」


 紙一重で攻撃をかわしたジャンヌの髪の毛が数本宙に舞う。

 だが、受けた被害はそれだけだった。

 ジャンヌは地面スレスレ、倒れそうになる体を必死の足捌きでどうにか保ちながら相手の懐に飛び込むと、下から跳ね上げるように騎士の剣を空高く打ち上げた。


「な、何だと!?」


 武器を失った騎士が驚愕に目を見開く。


 こいつ等だけは、絶対許さない!

 これまで何があっても不殺を貫いてきたジャンヌだったが、目の前に立つ人間だけはどうしても許すことが出来なかった。

 ゴメン、ルシオ、ミシェル。あなた達が私の為に立ててくれた誓い、私の方から破っちゃって。

 ジャンヌは二人に心の中で謝罪すると、悲壮な顔でジャンヌを見つめる騎士の首を刎ねるべく、剣を振りかぶった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ