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未来を切り開け

 ジャンヌたちが街を出て駆け抜けていく様子を城門の上で見守っていたマリータは、安堵の溜め息をついた。

 車輪は、一度回り始めたら、それ以降は思ったより力はいらなかったので、今はミシェル一人で回していた。


「ジャンヌたち、無事脱出出来たみたいよ」

「そうか、それは何よりだ」


 マリータからの報告に、車輪を回し続けていたミシェルも続いて嘆息する。


「よし、それじゃあ、俺たちも脱出しようか?」


 ミシェルは車輪から手を離し、小屋の外へ出て脱出の提案をするが、


「いや……そういうわけにもいかないみたいだよ」


 乾いた笑顔を貼り付けたマリータが街の方を指差す。

 目を向けると、そこには異変に気付いた黄金の鎧を着けた騎士、アンペラールシュヴァリエとその部下と思われる騎士、計五人がこっちにやって来るのが見えた。


「クソッ! そう簡単には行かない……か。おい、ここは俺がどうにかするから、君等は何処かに身を隠すんだ」


 ミシェルは弓を構えると、女性たちに逃げるように指示をする。

 身の危険を察した女性たちは頷くと「ご武運を」と告げて城壁から降りて行った。


 ただ一人を除いて――


「……何でお前は逃げないんだよ」

「逃げろって、一体何処に逃げれば安全だって言うのさ?」


 マリータは城壁にもたれかかると、小さく嘆息する。


「それに、ミシェル。さっきの言葉から察するに、あんたここで死ぬ気でしょ?」

「な、何の事だよ……」

「言葉に詰まるってことは、図星ね?」

「うっ……」


 マリータは顔を伏せたミシェルに近づくと、ミシェルの腹を軽く小突いて笑う。


「諦めるなんてあんたの柄じゃないでしょ? この窮地をさっさと脱して、色んな女の子にちょっかい出して、ジャンヌが嫌がることを沢山やろうとか言いなさいよ」


 マリータの余りの物言いに、ミシェルは思わず苦笑する。


「……そう言われると、俺って最低な人間だな」

「フフッ、今更でしょ?」


 二人は見つめ合うと、笑い合った。

 ひとしきり笑った後、ミシェルは真摯な表情でマリータの目を見つめる。


「……なあ、マリータ。色々悪口言ったけど、俺、お前が好きだ」

「うん、知ってる」

「そうか、今更だったかな?」

「そうよ。十になる頃には、もう気付いていたわよ」


 マリータに呆れたように笑われ、ミシェルは顔を赤くして破顔する。


「……それで?」

「ん?」

「その……答えを聞きたいんだ」


 顔を真っ赤にしたミシェルが勇気を振り絞って告げると、マリータは「クスッ」と笑い、


「―――っ!」


 ミシェルの顔を掴んでいきなりキスをした。


「感謝しなさいよ。村で何度口説かれても、誰にもなびかなかったこのあたしの唇よ?」


 顔を赤くし、艶っぽい表情でマリータはそう言うと、もう一度ミシェルにキスをした。


 二人はそのまま何度も唇を重ねた。

 やがて、二人が唇を離した時には、銀色の糸が名残惜しそうに二人の間を流れた。

 ミシェルは少し照れくさそうに笑うと、


「ヘヘッ、これで簡単には死ねなくなったな。絶対に生き延びて、ジャンヌに俺たちのことを見せ付けてやらないとな。あいつ、顔を真っ赤にしてあたふたするに決まってるぜ」

「やめなさいよ。大人気ない」

「ハッハー、何とでも言うがいい。今の俺には幸運の女神がついているんだ。何だって出来る気がする。何者にも負ける気がしない!」

「フフッ、現金ね。でも、ミシェルらしいわ」

「だろ? 待ってな。俺とお前の飛び切り明るい未来を今、切り開いてきてやるからさ」


 ミシェルはマリータにウインクすると、弓を構えて颯爽と飛び出していった。

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