0通目〜プロローグ
プロローグ
『キミの中にオレは今でもいますか?
オレの中にはいつでもキミがいます』
最後の手紙。
優しいアナタからの最後の手紙。
私が真っ白なドレスを着るまで
肌身から離さなかった手紙。
そして…
そう
きっと…ずっと…これからも…
始まりは夏の暑さも
ようやく和らいできた頃
…ううん…
もしかしたらもっと前
前の年のすべてが真っ白な季節
私は15才で受験生だった
パパは出世して偉いヒトになった
ママは…私たちをおいて空になった
外は真っ白で
私の中も真っ白で
ママの着物も真っ白だった
白い髪が増えたパパが言った
『咲、2人でがんばろうな…』
『…うん』
そんな約束をした
あの日からだったのかもしれない
とにかく…初めての手紙は
雪の代わりに桜が舞い
淡い色の桜の代わりに
眩しい日差しが降り注ぐ季節に
私の元へ届けられた
『お元気ですか?』
たったそれだけ
淡いブルーの封筒に同じ色の便箋
少し右肩上がりの綺麗な字
何故か私はその手紙を
誰宛なのか
誰からなのかすら
わからない手紙を
大事に机の引き出しにしまった
今にして思えばどうして
いたずらの類ではないか
と疑わなかったのか
でもその時
私は確信していた
『私のために誰かがくれた秘密の手紙』
だからパパには一言も言わず
机の引き出しに入れて
パパが仕事で遅くなった
一人っきりの夜にそっと取り出して
繰り返し繰り返し読んだ
『お元気ですか?』
それが始まり…