兄、昼寝
「あ、あの…サナさん…」
「何ですか?マリィさん。さっきのことなら別に気にしてないですよ?」
「気にしてる気にしてない以前に忘れてください!!」
「それはちょっと無理な相談かもしれないですね。」
佐奈の返答にマリィは落ち込んだように肩を落とす。
「別にいいじゃないですか。女同士なんだし。」
「そういう問題じゃありません!!ま、まぁ確かに行人さんがいなかったのがせめてもの救いですが…」
「そういえば兄さんはどこにいるんでしょうか?」
「そういえばって…実のお兄さんですよね?」
「や、あまりにもさっきの光景が衝撃的すぎて…」
「あー!あー!何も聞こえませんよ!!」
どうやらマリィにとってさっきの光景とやらはタブーなようだ。
「なんかこうやってマリィさんで遊んでるのもなかなか楽しいんですがそろそろ本題に戻しましょう。」
「た、楽しいって…ま、まぁいいとしましょう。それで本題というと…」
マリィの問いかけに佐奈は当然と言わんばかりの表情で口を開く。
「もちろん、兄さんのことです。」
「そうですね。どこにいるんでしょうか?」
「迂闊にウロウロするようなタイプではないのでさっきのところ辺りにいるかと思うんですが…」
「突っ走ってきた挙句に私たちがうろちょろして戻り方がまったくと言っていいほどわかりませんね。」
そう、佐奈とマリィはそれぞれ別方向に走りその辺をうろついていたところさっきの光景の段階で出くわしたのだ。当然のごとく自分たちがどちらから来たのか、はたまたどちらに行人がいるのかも完全にわからないのだ。唯一わかるのは…
「そういえばさっきからペンダントが反応しているんです。」
「ああ、鉱山への道を示してくれるっていうあの?」
「はい。さっきから強く反応してるんです。」
「そうなんですか。鉱山が近いのかもしれないですね。」
佐奈はしばらく口元に手を当てて思いついたように口を開く。
「それじゃあ先に鉱山に行っちゃいましょうか。」
「えっ?イクトさんはどうするんですか?
「無論探します。でも適当に探すより一ヵ所に拠点を置いて探したほうが効率がいいと思うんです。運良く私たちは目的地である鉱山に行くことができます。だったら先に鉱山へ行って鉱山を拠点に兄さんを探すのが得策だと思いませんか?」
「そ、それもそうかもです!」
「それじゃあ鉱山に向かって…」
「「レッツゴー!!」」
そうやって意気揚々と二人はペンダントの示す道を歩き始めた。
そのころ行人はというと…
「Zzzz…」
優雅に昼寝を決め込んでいた。すると向こうのほうから少女が行人のほうへと近づいてくる。
「あ、あの…」
「Zzzz…」
「あ、よかったです。眠られていたんですね。」
少女は安堵の表情を浮かべた。おそらく行人が死んだとでも思ったのだろう。
「で、でも…ですね?こんなところで寝ていると…その…風邪をひいてしまいます…それに多少なりともモンスターだって出ます…」
少女はおずおずと行人に語りかける。当然反応はない。
「Zzzz…」
「あ、あの…起きて、ください…」
ゆっさゆっさ
少女は行人の体を揺らして起こそうとする。
「んんっ…」
すると行人がまぶたを開く。
「あ、よかったです。そ、その…こんなところで寝ていると、風邪をひいちゃいます。」
「!?」
目の前に人それも美少女が自分の顔を覗き込んでいたので対人さらには女性恐怖症の行人は大きく後ずさりを始めようとするが…
「あ、あのっ…」
ガンッ!!
「っー!!」
「後ろに木の枝が出っ張って、ます…」
「そういうことはもうちょいはやめに言ってくれ…」