兄、鉱山
「ごめんなさい…」
戻ってくるなり未来はしゅんとした表情で謝った。
「大丈夫ですよ、マスター。壁に関してはまた大工さんにおねがいしましょう。」
あまり気にしていなさそうな感じで紅が答える。
「で、でもっ…」
「お金も問題要らないですって。私が交渉してタダでやってもらえるようにするんで。」
舞も紅に続きお気楽に返した。
「で、でもっ…」
「「マスター?」」
それでもまだ食い下がろうとする未来に二人は口をそろえて呼び掛ける。
「ごめんなさい…」
「で、武器。でしたよね。」
「やっと元の話題に戻ってこれたな。」
「ご、ごめん…」
「や、私たちは気にしてないですよ。ね、兄さん?」
「ああ、見てて気分はよかったぞ。途中まで…」
「あぅ…」
行人の言葉に未来は照れたように少しうつむく。そのしぐさや表情一つ一つが美少女のようであり到底男だとは思わないだろう。
「とりあえず鉱物を探すためのものは渡したよね?」
「はい、先程お借りしました。」
「んー、あれもらっちゃっていいよ。」
「「え?」」
「マスター、正気ですか!?」
「うん、正気だよ。それに本当にそれが必要になるときもいつか来るだろうしね」
「よ、よくわからないですけどとりあえずもらってもいいんですね?」
「うん、全然いいよ。」
未来の軽いノリに行人たちは戸惑いながらもペンダントをマリィがつけた。
「さて、もうこれで渡すものはないかな?」
「そうですねー。」
「マスター、魔術回路は後30分ほどで通ると思います。」
「そっか。でもそこまで強いモンスターもいないだろうしその武器でも十分に戦えると思うよ。」
「そうなんですか?」
「うん、変に道を行き間違えなければ基本的には熊とかぐらいしか出てこないだろうし。」
未来の助言に3人は安堵の表情を漏らす。
「それじゃあ行ってらっしゃい。しっかり帰ってきてね。俺たちはその間に防具の方も作っておくから。」
「何から何まで悪いな。」
「困ってる時はお互いに助け合う。それが友達だよ?」
未来の言葉に一同はたがいに笑いあう。
「さてと、それじゃあ長居していても日が暮れちまうだろうしそろそろ行くか。」
「そうですね。」
「それではまた。」
それぞれが挨拶をして武器屋を後にして鉱山へと向かう。
行人たちが去った後…
「マスター、なんであのペンダント渡したんです?」
「そうだね。何でだろうね。」
「マリィさん、ですね?」
「あ、やっぱりばれてたか。」
未来たちは扉跡で話をしていた。
「まったく、雪君はいきなり押し付けるんだもんなぁ…性質が悪いというかなんというか…」
「でもそうでなきゃ旦那じゃないよ?」
「そうなんだけどさぁ…」
「でも、旅をさせるのは妙案と思います。」
「そうだね。一か所にずっととどまって捕まっちゃうよりはましなのかもね。」
「でも、あの子気がついてないでしょ?」
「だからまだ自由に動いていられるんだよ。」
「マスター…」
「紅ちゃん、舞ちゃん。あの子たちは俺たちの手で絶対に守るよ。」
「Yes sir.」