兄、鎮圧
「な、何!?今の音!!」
「兄さん!!」
「イクトさん!!」
強烈な破壊音に店の前で見守っていた佐奈、マリィ、舞はそれぞれ叫び声を上げる。
「ま、舞さん!!今のって守れているんですか!?」
「も、もしイクトさんに何かあったら…!!」
「そ、そんな事言われたって…私たちだって精一杯やったし…ねぇ、紅?」
「クスッ…」
心配そうに慌てふためく3人をよそに紅は軽く笑いをこらえていた。
「ちょ、ちょっと紅さん!何笑ってるんですか!?」
「そ、そうですよ!!イクトさんの腕がもし折れていたりしたら…」
「ふふふふっ…」
そしてついに笑いをこらえきれなかったのか紅は口元に手を当てながら笑い始めた。
「紅、何で笑っているの?」
「みんなは何を心配しているの?」
必死に笑いをこらえながら紅が3人に問う。
「「「?」」」
「ふふふふふっ…」
「こ、ここまで笑ってる紅初めて見た…」
「で、アカさんは何をそんなに笑っているんですか?」
紅は口元にあてていた手を空高くにつきあげて口を開く。
「だ、だって…行人さんがあんなに子供みたいな無邪気な瞳で嬉しそうにこっちを見てるんだもの。お、おかしくなっちゃって…ふふふっ。」
「「「えっ…」」」
紅の言葉に3人がそれぞれ振り返ると…
「あ、あんちゃん…」
満面の笑みでぶんぶんと手を振る行人の姿があった。
「い、行人くん…?」
「お、戻りましたね。」
「ひ、ひあっ…!!」
「あー、おっさん。もう帰れよ。多分ここにいても地獄みるだけだぜ?」
「ひいぃっ…!!」
行人の言葉にフォスターは足を引きずりながら逃げかえって行った。
「あ、あの…俺、暴走してた?」
「あの壁見てご自分で判断して下さいな。」
行人は先ほど蹴りで未来がぶち抜いた壁を指さし苦笑を浮かべる。
「壁?って、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
未来は先程自分でぶち抜いた壁を見て叫び声を上げる。
「あぁぁっ…またやっちゃった…」
「ま、あのおっさんぶっ殺さなかっただけましなんじゃないですか?」
「そ、それはそうかもだけどぉ…」
「さ、戻りましょう。店でみんな待ってますよ。」
「う、うん。」
こうして先程までのオーラはどこへやら未来はとぼとぼと行人の後について店へと戻って行った。