兄、無読
「よかったじゃん、あんたらもうマスターの中では大事な友達みたいだよ。」
にははと笑いながら舞は行人たちに言う。
「や、よかったも何も…」
「マスター可愛いけど怒らせるとめっちゃ怖いんだよね。もちろんネタかどうかは見極められるけどさ。」
「アレは怖いなんて簡単な一言でかたずけていいんですか?」
お気楽な舞に佐奈とマリィが話しかける。
「紅といったか。いや、アカの方がいいのか?」
「お好きな方で構いませんよ。」
行人は紅の方を見ずに話しかける。
「ああなった未来さんは神父にしか止められないと言っていたがなんでだ?」
「それは私たちもわからないのですが何故か私たちが何をしても止まらないのに雪さんが頭をなでるとすっと収まるのです。」
「ふむ…」
一方…
「ひぃっ…」
「なんだよ?その顔は。命乞いすれば助かるとでも思ってんのかよ。」
「ひっ…!」
「鬼ごっこか?別に俺は構わないぜ。」
「くっ、来るなっ!!」
ベキィッ!!
「ぐぁぁっ!!」
「ほれほれ逃げて見ろよ。追いかけねぇからよ。ま、脚一本砕けてる状態でどこまで持つかねぇ?ひゃははっ。」
未来はフォスターの脚の骨をへし折ったようだ。フォスターの顔は恐怖で真っ青になっており未来の顔は悪魔のように口元を歪ませた不気味な笑いを浮かべている。
「さ、流石にやり過ぎですよ!!これじゃあ死んじゃいますって!!」
「つっても私たちじゃマスター止められないもん。」
「そんな投げやりな、何か方法はあるんじゃないんですか!?」
「残念ながら雪さんをお呼びしない限りにはどうにも…」
「そ、それだったら私たちで止めてみます!!ね、サナさん?」
「は、はい。私たちなら可能性はあるんですから。」
そう言って店の外に行こうとする佐奈とマリィに舞が口を開く。
「護身術とか格闘技やってた?」
「「へ?」」
「初心者ならやめた方がいいよ。もしだめだった時防御しっかりとれないと最低でも腕一本は持ってかれるから。」
「「…」」
佐奈とマリィはその場で硬直する。
「な、何かの冗談ですよね。」
「だったらいいねぇ…」
「えっ…」
「まぁ、フォスターざまぁないな。にひひっ。」
「舞ちゃん。いい加減笑ってられる状況じゃないよ。」
「分かってる。でも私たちは格闘技とかの経験ないしどっちにしろ止められない。かすかな可能性に欠けてダメだったらこの子たちにも被害は出る。何をするにしろリスクが高すぎて動けない。でしょ?」
「一応雪さんに連絡はしたけど来れないって…」
「だったら余計ヘタには動けないっしょ。」
紅と舞は声をワントーン下げて話し始める。そんな中まるで空気を読まないある男がのんびりと口を開く。
「んじゃ、俺行くわ。」
「「「「はい?」」」」
「いや、だから俺が未来さん止めてくる。」
「「「「はぁ!?」」」」
「ちょ、あんちゃん本気!?」
「ここで冗談だったら誰か笑うか?」
「んにゃ、そうなんだけどさぁ…あんちゃん人の話聞いてた?」
「それなりに。」
「じゃ、じゃあなんでですか!?」
「そうですよ兄さん!!」
佐奈とマリィが止める中行人は再び口を開く。
「いや、なんか行ける気がするから。それに未来さんは俺等のために怒ってくれてるんだろ?だったら俺が止めに行かなきゃダメだろ。」